宝石の製造法や改質について簡単に見ていきますが、「宝石のおおくは岩石」ですから、岩石のでき方をみると、それを応用して、つくることができます。
例えば、火山から流れ出す溶岩が固まってできるのが「火成岩」です。

そのほかにも、砂や泥、小石、火山灰、生物の死骸などが、水底などに長い年月をかけて積み重なり、重みで押し固められた「堆積岩」や、既存の岩石(堆積岩や火成岩など)が、地下深い場所などで熱や圧力による「変成作用」を受け、性質や組織が変化してできた「変成岩」などがあります。
その成り立ちの中で、美しくて希少なところを掘り出して、削り出し、磨くことで「宝石」になります。
自然が作った宝石は、希少ゆえに価値がある
本来は、宝石は「自然が作り出したもの」で、希少で美しいものは価値が高まります。
現在では、その宝石の生成過程が解明されてきて、一部の宝石では、熱や圧力などの物理的な操作や、薬品などを用いて科学的な操作が加えられて、人工的に加工したり製造できるようになってきています。
さらに、原石や既成の宝石を張り合わせるなどの加工で、大きくて価値のあるものに作り上げる技術も向上しています。
それらの加工によって作られた宝石は、「模造品」「ニセモノ」などと呼べないレベルで、そのような手が加えられた宝石類は、たくさん流通販売されていますが、それが加工されているかどうかは、一般の人には判別できないレベルの高度な加工状態です。
宝石に手を加えて価値が上がる場合は、それはそれで問題ない
このように、原石に何らかの加工を加えて価値を高めることは、決して悪いこととは言えない … ということを前のページで紹介しましたが、宝石を加工する側は、価値を高める加工方法があれば、それを行って、通常価値以上のものを作り出したいと考えますし、購入する側は、価値が確認された価格であれば購入するので、加工させた宝石であっても、販売側と購入側の双方が、納得した価値になっていれば全く問題はありません。
その品質認定や真偽判定についても、宝石の真偽や品位は、最先端の分析機器が使われる場合もあって、非常に高いレベルの判定作業が行われる場合もありますから、それらの仕組みで、宝石の価格や価値は担保されています。
加工によって価値を偽って、価格を釣り上げることは問題ですが、ここではそれに触れません。
そこで、ここでは、価値を高めるための、宝石の製造法や加工法を見ていくことにしましょう。
宝石の多くは岩石の一部
理科年表によると、コランダム・ルビー・サファイアなどの主成分は「酸化アルミニウム」で、その融点は2054℃ … とあります。
コランダムのうちで、赤色のものがルビーで、その他のものがサファイヤと呼ばれますが、コランダムの不純物によって色が変わります。
ルビーの赤色は、クロム(Cr)によるもので、1%程度のCrの状態で、きれいな赤色のルビーになるのですから、自然の状態では非常に希少なものです。
このクロムの融点は1907℃で、宝石の水晶の融点が1610℃、ルビーの融点は2050℃ぐらいとされています。
鉄鋼が溶ける温度は、(成分で異なりますが)1,500℃前後ですので、それから考えると、この鉱物の溶融温度は非常に高温です。
このために、人工的に宝石を加工したりして、人工宝石を作るためには、何かの工夫して、低い温度で溶融できるようにすることが課題になります。
1つの方法は「化合」させることです。 元素が化合すると融点が下がります。
そして、金属の溶接やロウ付けでも言えることですが、塩類のフラックスを用いると融点が下がります。これらの性質を利用して宝石を作ります。
要するに、適当な成分を混合したものを一度溶融させて、それをうまく凝固させれば宝石(鉱石)を作ることができる … という原理で、(そんなに簡単ではありませんが)それによって人工的に宝石ができるということです。
宝石の合成法は、いろいろ考えられており、①溶融させて結晶を育成する方法と、②溶液相から単結晶を作り出す方法 に分類されます。
ベルヌイ法
ルビー、サファイア、ルチル、スピネルなどは、酸水素炎(酸素と水素の高圧混合炎:2400-2700℃程度)を用います。
酸水素炎の中に原料粉末を落として、種子結晶上に同じ方位で成長させる方法で作られます。 この方法は火炎溶融法(かえんようゆうほう)とも言われます。
ウィキペディアの図をお借りして、それに説明を加えたものです
CZ(引き上げ)法
ダイヤモンド類似のGGGやYAGなどを作る方法で、混合溶融させた溶液中に種子結晶を入れて引き上げながら成長させて作ります。下は、シリコンSiの単結晶を作る方法です。

この方法によると、格子欠陥が少なく、長い単結晶ができますが、この方法によってコランダム(鋼玉:サファイアやルビーの主成分)が作られたのは1990年後半といいます。
FZ(帯溶融)法
アレキサンドライト、ルビーなどを製造する方法で、材料棒の途中を溶融させて、その溶融部分を移動させながら単結晶を育成させる方法でこれらが製造されます。

semi-journal.jpさんの図をお借りしました
スカール法・ブリッジマン法
キュービックジルコニア、サファイヤなどの製造は、電気炉中に材料を置き、容器(坩堝:るつぼ)の一部を溶融させて、化合させながら、溶融部分を移動して結晶化を行わせます。
ここで、坩堝を材料自体で作るのがスカール法と言われます。
フラックス法
エメラルド、ルビー、サファイヤなどは、溶媒に無機塩類のフラックスを用いて、フラックスと材料を混合することで融点を下げる・・・という方法の溶融法です。
1960年ごろから行われています。
ルツボ中で原料を溶解して、アルミナを過飽和状態から冷却すると、900℃でアランダムができます。
この方法を2011年に信州大学のグループが開発したとされています。
高温高圧法
ダイヤモンドなどの製造法で、地中と同様の高温高圧状態を人工的に作って、フラックスを併用するなどで合成させる方法です。

GSTVさんのHPの図をお借りしました
熱水合成法
エメラルド、水晶類、オパール、ルビー、サファイアなどの製造は、内部を高圧にできるオートクレーブ装置などを用いて、熱水溶液中で結晶を成長させる方法です。
(注)オートクレーブ : 内部を高圧力にできる耐圧性の装置や容器、あるいはその装置を用いて行う処理をいいます。
水晶の合成に使用されていることで有名です。
オートクレーブ内に、天然水晶の小片を入れて、アルカリ水溶液を満たして、上部に吊るした種水晶を吊るして密封します。
それを高温高圧(約350℃、90~145MPa)に保つと、水晶が再結晶化して増大成長します。
成長速度は、1日当たり0.4~0.5mmの速度のため、数十日から数百日をかけて水晶の結晶が作られていて、宝石やクオーツ時計用の水晶振動子などに用いられます。
焼結法
トルコ石、サンゴ、象牙、ラピスラズリなどの製造には、粉末を高温高圧状態で固める方法が用いられます。
これらの方法によって合成された宝石は、「天然物とは区別できる」とされていますが、それらの適切な識別を、すべての宝石で行われているかといえば、それは疑問で、作る側の技術も向上しているので、出来上がったものは立派な宝石と言えます。
宝石を加工する
天然宝石は、大きく分けても70種類以上もあるとされます。

きれいな石を磨けば宝石になりそうですが、高価な石はそんなにうまく見つかりません。
そのために、単体ではなく、張り合わせて嵩上げしたり、きれいな色になるようにしたり、それらを「良いとこ取り」して張り合わせる … などの加工がなされます。
例えば、ダイヤモンド底部に合成したホワイトスピネルを張り合わせる、天然サファイヤと合成サファイアを張り合わせる、水晶の間に着色ガラスを挟む、何層にも貼り合わせて色を調節する … などの方法があります。
もちろん、高度な技術がないとうまくいきません。
その継ぎ目は、ルーペなどでは判別できないほどの精巧なレベルにあリます。(逆に、それを見破るための、すごい技術があり、競い合いが行われています)
ダイヤモンド、ルビー、サファイヤなどは単結晶なので、切子面で囲むダイヤモンドのブリリアンカットや、四角にコーナーカットされたエメラルドなどのファセットカットによって、色の美しさや透明感を出します。
結晶質でない琥珀やオパール、(結晶質であるが)キャッツアイなどは、色や模様を目立出せる球面のカボションカットが一般的です。
それらに合わせた貼り合わせ技術ができている … ということです。
宝石の加工技術(一例)
熱処理についてはこちらのページにまとめて紹介しています。ここでは、その他の加工技術の一例を紹介しますが、詳しい詳細が公開されることはないので、平面的な知識としてお読みください。
染色・着色、充填・油脂処理、放射線、コーティングなど、加工法には様々な方法があります。もちろん、加工のノウハウがお金に直結しますので、詳しい技術が公開されることはほとんどないでしょう。
単結晶の原石(ダイヤモンド、ルビー、エメラルドなど)は、結晶間の隙間が少ないので、着色剤が染み込みにくいので、ラジウム、コバルト60,加速器などの、様々な発生源を用いての放射線処理をしたり、気相成長ダイヤモンド技術やPVDなどの、真空蒸着技術を用いて、着色や無色化が行われます。
メノウやヒスイなどの多結晶体には、自然に、いろいろなものが染み込んでおいます。
それが、良くも悪くも、色などで変化をしていますので、人工的に色や物質を染み込ませる「選択吸収」などの技法を用いて、色を変化させたり、無色化することが行われます。
エメラルドは「キズのないものはない」と言われるので、逆に、油脂中に着色剤を入れて、それに浸透させることで見栄えを良くする処理が行われます。
もちろんこれらの処理の多くは、顕微鏡を用いて判定できる場合も多いといいます。
しかし、そのような加工履歴は、一流の鑑定士さえも見逃してしまいそうな高レベルなので、チェックがスルーすれば、高価なものに化けます。
だから、加工者と検査者のせめぎ合いが果てしなく続くことになりますが、もちろん、それが表面に出ることもないでしょう。
宝石の加工(改質)は、どこで誰が何をやっているのかは全くわかりませんし、それらの情報はほとんど表に出てきませんから。

天然宝石以外の加工宝石の呼びかたについて
前のページでは、人工宝石、模造宝石 … などに区分しましたが、正式な分類ではありませんし、「人工宝石 キュービックジルコニア」などのような表示をされることはないでしょうし、法での表示も定められていないので、加工を加えていることなどが表示されることはないのですが、どんな物があるのかを紹介します。
人工宝石:
酸化チタン、チタン酸マグネシウム、キュービックジルコンなど、天然にはほとんど単体で存在しない材料を使って人工合成したもので、多くは装飾用に用いられます。
模造宝石:
合成石を天然宝石に似たようにガラス、プラスチック、フリントなどを加工したものをいいます。
当然、純度の高いものや高価格のものもあります。
合成宝石:
天然宝石と同じ成分のものを人工合成したものです。
現在は、ルビー、サファイア、アメシスト、アレキサンドライトなどの、主要な宝石のほとんどが合成できるといいます。
処理宝石:
熱、着色、コーティング、放射線処理などを行って、見かけの良さを向上させたものです。
程度の差はあっても、処理することで品位が向上し、見栄えが良くなるのですから、何らかの処理が行われていると考えていいでしょう。
下のような石を磨いてもきれいですし、面白そうですね。美しい形にカットして磨けば「宝石」に変身します。
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次ページは、宝石の熱処理について紹介します。
(来歴)R5.2月に誤字脱字を含めて見直し。 R8年8月に確認


