身の回りにあって、そして知っているようであまりよく知らない元素のリチウムですが、携帯電話やいろいろな電子機器を動かすもとになっているリチウム電池で有名ですね。
リチウムの純金属は、水に浮くほど比重が小さくて、しかし、反応性の高いので、合金にして使用されます。 反応性が高いので、直接、むき出しの金属類に触れると、危険です。
反応性の高い、原子番号3番のアルカリ金属です
このHPにはこの周期表を随時示しています。
枠中の赤字が原子番号、黒字が元素記号です。元素番号は陽子の数と同じです。色付けしている金属・半金属のうち話題性の高い元素を取り上げて紹介しています。
水兵リーベ・・・と覚えたと思いますが、この3番めにでてくるのがLi(リチウム)です。
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リチウム Li
英語名がLithiumで、ここではリチウムと表記することにします。
原子番号3のリチウムは、スマホなどのリチウム電池などで誰もがお世話になっています。
もっともよく用いられているのは 二酸化マンガンリチウム電池(CR・FR)や リチウムイオン電池(Li-ion)で、タフで使いやすいのがいいところなのです。
劣化して爆発したという例もありますので、使用しなくなった電池は、電気店などに置かれた回収箱に入れるなどで、きちんと廃棄するとともに、劣化や取り扱い時の破損には注意しなければなりません。
ビックバンの際に、様々な元素が生まれたとされますが、その時には、軽くて生成しやすい H(水素)→He(ヘリウム)の原子番号の順で生まれてきたので、宇宙に存在する量も、おおむね、その順になっているのですが、Heの次に、原子番号3のリチウムがたくさんできるはずなのですが、そうではなくて、存在する量は H(水素)→He(ヘリウム)→O(酸素)→C(炭素)→Ne(ネオン)→N(窒素)と続いているようです。
これは核融合反応の進みやすさのために、その順番になっている・・・と説明されていますが、希ガスのネオンNeが、大気に80%含まれる、窒素Nの量よりも多いというのも面白いですね。
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リチウム = 金属 軽い 酸化しやすい
金属とは、上の周期表での金属元素とその合金で、光沢(金属光沢)があり、展性・延性を有し、電気・熱をよく伝える性質があるものを指しています。
このリチウムも金属に分類されており、大きな特徴は、金属中で最も軽い金属です。
比重は0.53(水は1)ですので、(純金属を見ることはありませんが)リチウムは水に浮きます。
そして、リチウム単体は、非常に酸化しやすいので、空気に触れさせないようにしなければなりませんが、リチウムは軽いので、水やガソリンに入れて保存すると浮いてしまって保存できないために、その表面にワセリンなどの油脂を塗って酸化しないようにして保存されています。
酸化すると発熱しますので単体で使う場合は注意しないといけませんし、もちろん、手で触れても危険です。
このためにそれを防ぐ方法として「合金にして」使用して、酸化や発熱をさけているのが通常の使い方です。
主な用途は 電池 耐水性グリス 触媒 花火の赤色 など
【電池】
最も一般的な1次電池(コイン型などの充電できない使い捨てのもの)に、電圧が3Vの「二酸化マンガンリチウム電池」があります。CR系と呼ばれるものです。
この「C」が二酸化マンガンリチウム電池を表し、「R」は円形という意味で、CR2032の2032は直径20mmで、厚さが3.2mm・・・を表しています。CR1216であれば、直径12mmで厚さが1.6mmの丸い二酸化マンガンリチウム電池になります。
余談ですが、LR44などの「L」はアルカリ電池(1.5V)、SR41などの「S」は酸化銀電池(1.55V)です。
充電して使うリチウムイオン電池(2次電池)にはいろいろな種類があり、電圧も異なるので、互換性はない・・・と考えておくのが無難で安全です。
(参考)違う種類や電圧の違う、使用した電池などを繋いで同時に使うと、内部抵抗の違いで、一方が発熱するので危険です。特に、リチウムが溶け出すと危険です。異種の電池を2個以上使用する場合は、新品で、さらに、用心して、電圧をチェックするぐらい慎重であってもいいくらいです。
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リチウム電池は、通常のマンガン乾電池の10倍の電気容量を持つのですが、リチウムまたは酸化時の危険を防ぐために、アルミとの合金にして陰極に用い、リチウム塩を有機溶剤で溶かしたものなどが電解液に用いられている・・・など、マンガン電池とは全く別物として取り扱う必要があります。
この電解液が漏れたり、リチウムの酸化が原因で、事故につながりやすいので、過電圧充電や外装を傷つけることなどは非常に危険です。
専用の充電機を使うようにしましょう。 充電中の機器温度には注意し、充電中は熱くなりますが、それでも、手で触れにくくなる約50℃を超えるようなら危険ですので、対策を考えないといけません。
現在でも、長時間使用したり、充電が不適切で、外装が膨張するなどの変形によるトラブルが多く発生しています。もしも外観に異常があれば、直ちに使用を中止しなければなりません。もちろん、決められた廃棄方法を取る必要があります。
【グリス・触媒など】
自動車用グリスの3割に、耐水性が高く、融点が200℃を超える用途には、ステアリン酸リチウムグリスが使用されています。
また、強化ガラスの原料や、陶磁器の釉薬、合成ゴムイソプレンの触媒などに、リチウムと炭素との有機化合物の炭酸リチウムが使われています。
これは、リチウムイオン電池の+極のコバルト酸リチウムの原料です。
リチウムは、単体では危険性が高いのですが、このような化合物とすることで、危険性が軽減されることで、様々な用途に用いられています。
特殊な例としては、炭酸リチウムなどのリチウム塩は、躁うつ病の治療薬として使用されます。
もちろん、リチウムは金属ですから、過剰に摂取すると、肝臓障害をおこす可能性がある毒物です。サプリメントとして販売されているものもありますが、お医者さんの処方によらなければなりません。
【炎色反応】
ncsm.city.nagoya.jpの炎色反応の色
ガスバーナーで燃やすと、このように、金属固有の色が出ます。
これを炎色反応といいますが、リチウムの塩類はストロンチウムとともに花火の赤色の発色剤として利用されます。
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リチウムのその他の雑学
リチウムの産地で有名なのはチリのアタカマ塩湖、ボリビアのウユニ塩湖やリンコン塩原などで世界の8割が産出されています。
アタカマ塩湖(上)とウユニ塩湖(下)(いずれもインターネットの記事から)
アタカマ塩湖の塩の中には0.15%のリチウムが含まれていて、このアタカマ湖は(ウユニ塩湖もそうですが)、かつては海であり、アンデス山脈が隆起してできた時に、水が干上がって塩湖になったと考えられています。
つまり、リチウムは海水に含まれているのですが、現在の海水の構成成分を見ると、ナトリウムNaが約32%なのに対してリチウムは0.0004%程度ですので、普通の海水から直接採取するにはコストがかかりすぎるので、現在のリチウムの採取は、塩湖またはペタル石、リチア(リシア)雲母(紅雲母)、リチア(リシア)輝石などの鉱石から採取されています。
ペタル石やリチア輝石はブラジルなどの赤道近くの産出が多いようで、リチア輝石はパワーストーンで名高い「クンツァイト」として非常にきれいな宝石になる鉱石です。
リチウムの語源はギリシャ語のlithos(石)からきているとされています。
1817年にペタル石から発見されており、鉱石や鉱泉に多く含まれることから、何か薬効がありそうな感じもしますが、調べてみますと人間の身体にはあまりよいという内容の記事は見つからず、むしろ有害であるという内容のほうが多いようです。
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次は軽くて丈夫な金属「アルミニウム:Al」についてまとめています。
次の記事へ → アルミニウム Al


