ここでは宝石の特殊性(このページ)、宝石の加工法(→こちらのページ)、宝石の熱処理改質(→こちら)を取り上げています。
自然に産出する鉱物や有機物で、珍しく・美しく・耐久性があるものが「宝石」です。
さらに、大きなものが好まれるのは言うまでもありませんが、それが簡単に出てこないので、当然、希少性の高いものはより高価になります。

この写真は、「川原の石」ですが、下の販売例のように、きっちりと分類できれば価値がでます。
岩石標本(Amazonのページ) として、例えば、変成岩15種¥1,472 堆積岩等30種¥4,193 100種¥18,810 などが販売されていますが、標本1つを10gとして試算すると、1カラット単価は0.6円前後と計算できるのですが、高いか安いかは別にして、これを丁寧に磨くと「きれいな石」になっても、宝石にはなりませんから、宝石はすごい価値があるということです。
非常に希少だから「宝石」
宝石は、多くの石などが混ざった鉱石の中から、希少な部分を選別して高価な部分を取り出します。
例えば、ダイヤモンド鉱山で採れる1カラット(=0.2g)のダイヤモンドは、平均で、3トンもの母岩を処理して見つかる … と言われているほどに希少です。
さらに、そのうちの2割程度しか宝石用にはならず、さらにその等級分けをしていくと、ダイアモンドではあっても、ほとんどは研磨剤や工業用途向けになってしまって、宝石ではない低価値のものが大半です。
つまり、有名なダイヤモンド鉱山であっても、1カラット0.2gの装飾用ダイヤモンドは、15,000,000g(15トン)もの石の中から掘り出されている … という単純計算になるのですが、1カラットのネックレスが100万円であっても、その価値はそれ以上にありそうですね。
そして、ダイヤだけでなく、その他の宝石類でも、少し色が違うと、希少性が増して価格が上がるので、そうなると、自然と運に任せないで、人工的に加工して価値を高めようと考える人は当然出てくることは自明です。
加工されていない宝石は皆無とも言われている
安価な装飾品は別ですが、色の安定化や着色のための熱処理(→こちらの記事)は、ほとんどのもので行われているようですし、研磨なども加工そのものですから、その他の加工についても、まず、何も施されていない宝石はない … と言ってもいいでしょう。(憶測の域はでませんが、価値を高めるのは悪いことではないので、熱処理加工されないことはないでしょう)
もちろん、これが公になることはありませんが … 。
もちろん、それらの加工は、品質を高めるためのものなので、販売する側も、購入する側も、その価値と価格に満足ならば、何の問題もありません。
しかし、例えば、単石だということで購入したダイヤが、2つの石を張り合わせて大きな宝石にしていることがわかると問題です。
でも、それが、貼り合わせたものかどうかもわからないほど、加工の技術も向上していて、鑑定士が調べても、研究所の最新の機器分析でも判別できない程度に精巧なものであるとどうでしょう?
… このような、宝石の加工については、表面化しないものの、模造品の発見を仕事にする人の記事もあるので、行われているのは確かですが、ほとんどは闇の中です。
しかし、加工する側でも、最新機器で検査検証をやって作り出しているのですから、小資本の個人や企業が手を出せる範疇ではなさそうです。
自然に産出する宝石で極上品が出るのは非常にまれなことですから、既成品の追加工で、その品位が上がれば利益が出ますし、最新機器でも見つからない超精密加工をするのも「技術」ですから、目に見えないところで大資本がうごめいていても不思議ではありません。
手を加えられた宝石の呼び方
人工宝石
天然の宝石と同じ組成や結晶構造を人工的に作り出したものが「人工宝石」です。
フラックス法(無機塩類で融点を下げる溶融法)で作られたエメラルドや、ベルヌイ法(火炎溶融法)で作られたルビーなどが作られています。
人工宝石と合成宝石は同じ意味合いです。
酸化物ガーネット類やキュービックジルコニアなどは、エレクトロニクス材料の開発過程で、天然宝石と同じものが人工的に作られています。
さらにそれが、ダイヤモンドに似た装飾用に進化し、天然宝石と同等品質のものになっています。
処理宝石
価値を高めるために、天然及び人工の宝石に、熱処理や放射線、コーティング処理などを施してものをいいます。
模造宝石
新しい価値や美の創造ではなく、高級な天然宝石に見せるための加工をしたものです。
加工されたものでも、売り手と買い手がそれを納得しておれば問題ない
ただ、これらが加工されたかどうかは、価格に付随する情報として表に出ることはまずありません。
だから、宝石を加工して価値を高めることに対して「悪い!」とする人も多いですし、その上に、「騙す」「偽る」などの行為が入ってきますから、ことは単純ではありません。
もちろん、加工する側も、河原の石ころを加工するのではなくて、原価の高い希少品を扱うのですから、加工手間やリスクもあるために、上手くいけば利益になりますが、下手をすると損をする場合もあるでしょう。
しかし、このような宝石の加工がどこでどのようになされているのか … などは、決して表に出ることがないものですし、加工のための設備費用などを考えると、零細企業規模では無理なので、高度な加工技術を持った企業などがやっている、特殊な世界のものと言えます。
名前は出しませんが、加工(改質)を、企業ぐるみで行って、オリジナル商品として販売しているジュエリー企業もあって、これももちろん違法でも悪いというものでもありません。
この世界では、作る人がいて、それを買う人がいて、双方が納得して取引されておれば、宝石を加工して価値を高めるのは悪いことではないといってもいいでしょう。
「錬金術」は成功しなかったが、宝石の加工は成功?
宝石にも、品質改良の歴史があるはずですが、どうもそれが未来永劫、詳しく明らかにされることはない感じがします。
何らかで手を加えた宝石は、人工宝石、模造宝石、合成宝石、処理宝石などに分類したものの、もちろん、そのような呼び名がついた状態で販売されることはありません。
食品の産地偽装などの問題が出ると、新たな「表示義務」などが加わてきて、より厳格になっていくのですが、宝石の世界は(ごく希少なものは別にして)素性や過程が示されたり、政府が関与して管理したりすることはなさそうです。
せいぜい、売り手側では、鑑定結果による表示と、それに応じた価格を提示して、買い手側はその価値と価格を受け入れるかどうかで売買が行われ続けるのでしょう。
それが仮に、5万円の実質価値(これも何なのかわかりませんが)のものを、50万円で鑑定書付きで購入すれば、50万円の価値に変わるという特殊な世界で、つまり、購入者と販売者がWIN-WINであれば、それで全く問題ない … という世界です。
宝石買取店での買取価格の低さに驚いたという記事を見ることもありますが、それもそのような世界の話ですし、その50万円の宝石の鑑定書を見せずに、他で再鑑定すれば、その都度、価値が変わる … という世界です。
そして、お互いの幸せ(食い扶持)を共有している仕組みによって、「価値の保護」が行われているという世界ですから、いい意味で、良い状態で「幸せを売る」市場が形成されているということがいえます。
そういう背景もあるので、ちょっとムラっ気のある、錬金術の素質のある人や企業なら、高度な改質加工はやってみたくなるかもしれません。
本当に高額で希少な宝石は、見えない組織(シンジゲート)が掌握していて、その価値も、所在も管理されていて、その情報が維持されている … といわれていますが、これは、正真正銘の高級品に限られていますし、それでうまく回っていますから、それでいいのでしょう。
そうなると、いいものを安く買おうとする人がいて、売り手に、加工によってカラット数を増したり、高価な色に着色したりということで、高く売りたい人がいて、それに満足して購入する人が居れば、当然、何らかの加工されて価値が高められた宝石品が出回ることになるのも自然の理でしょう。
高く買えば価値が上がり、やすく買うと価値が下がる宝石の不思議
要らなくなった貴金属宝石類を買い取る会社の査定価格や買取価格のあまりの安さに、驚く人も多いようですが、それも相場ですし、逆に、高額で購入することが損することではなく、満足して購入するのですから、Win-winです。
しかし反対に、安価で買えば「宝石の価値」が下がっていると言えるのです。
保証書でその価値が保証されていることで購入リスクを回避している仕組みも、売り手と買い手をWin-winにしてくれる、いい仕組みになっているようです。
宝石の溶融合成の基礎知識
宝石は地中の深いところで温度と圧力が加わって合成されて、それが採掘されたものです。
鎌田・西原著地球科学より引用
ダイアモンドは、炭素の同素体(同じ元素で分子配列などの違いで違った性質のもの)で、太古の樹木などの炭化した「グラファイト」が地中深くの高温高圧によってダイヤモンドになったとされています。
近年は、工業用ダイアモンドなどは、この仕組みを真似て高温高圧にすることで人工的に製造されています。
もちろん、その品位は宝石レベルではありませんが、硬いという特徴を利用して、砥粒や工具などの工業用途向けに人工ダイヤモンドが製造されていることはご承知でしょう。
宝石の多くは鉱石なので、それが生成された地中では、いろいろな元素が鉱石中に混合しており、その成分も異なります。
また、地中の状態によって融点などの状態が変わり、冷却の過程などによっても変わることから、宝石ができる原理はわかっていても、それを人工的に作るのは簡単ではないということはイメージできるでしょう。

同上にあった図を一部修正して書き直し
これは、鉱物の成分、珪酸アルミニウムの状態図で、地中の状態によって温度と圧力が変われば、珪酸アルミニュームが、ABCのようないろいろな鉱物になるということを示した図です。
更にこれにクロムや鉄などの別元素が加わって融合すると、更に複雑な鉱物になって、このような図では表せない複雑なものに変化します。
つまり、この図は、ケイ素とアルミニウムの2元素の温度と圧力状態を示した図ですが、もう1元素が加わると3次元の図になってXYZ軸で表現しないといけなくなり、4元素になれば4次元の図は描けないので、他元素の状態を表現することはできなくなるのですが、自然界では、もっと多くの元素と濃度差などの条件や、地中の複雑な温度と圧力の条件の中から、たまたまに、ある一部分が「宝石」として価値のあるものになっているのですから、さらに美しくて希少な宝石となれば、すごい価値があるのは当然でしょう。
たとえば、宝石の「ルビー」は、コランダム(酸化アルミニウム)の変種で、クロム(Cr)が1%程度混ざった結果で、高級な真っ赤な「ルビー」になっています。
また、クロムが0.1%程度では「ピンクサファイア」になり、また、鉄やチタンが混ざると、青色の「サファイヤ」になるといいます。
それらの、成分、温度、圧力、冷却の過程等によって、出来上がる宝石の種類や品位が変わるのですが、これらが生成される確率は極小で、「神のみぞ知る世界」なのです。
しかし、元素の配合と圧力と温度条件で、それらが作られている … という原理がわかれば、作ってみようとするのが人間で、イチから宝石を作らなくても、現在の熱処理などの加工技術を使えば、改変してしまうのは簡単なレベルですので、ほとんどの宝石は何らかの加工をしているということにつながっていきます。
それは次のページで紹介します。次のページは、鉱石の融点の話からです。
(来歴)R5.2月に誤字脱字を含めて見直し。 R8年4月に確認

