宝石の科学(1/3)宝石の価値 

宝石類は、原石を採掘して、それをカット・研磨して高価な宝石に仕上げられるだけではなく、今日では、ほとんどの宝石は何らかの細工や加工が加えられているといっていいようです。

宝石は『タカラノイシ』と書くように、自然に産出する石(鉱物)で、珍しく・美しく・大きなものが好まれるのは言うまでもありません。しかし、その三拍子が揃ったものは簡単に見つからないので、当然、高価になります。

はじめにお断りしておきますが、ここに書いた内容は「耳学問」のレベルのものです。私自身、いろいろな金属熱処理が本業で、石や鉱物については、耐熱材や炉構造に関する勉強以外はやっていませんので、実際ここに書いたことをやってみて、どうなるのかということは、私にはわかりません。

WEBにもいろいろな宝石加工の記事があります。ただ、WEBなどの書いてある内容には、「おかしいなぁ」という記述もあります。 しかしこれも、自分で実験して確認したことがないので、それに言及することも出来ません。このため、この記事の内容も、同等のレベルの「単なる雑学」と受け取ってください。

石から宝石が

これは河原の石ですが、これを丁寧に磨くと「きれいな石」になりますが、宝石にはなりません。

非常に希少だから「宝石」

宝石は、多くの石などが混ざった鉱石の中から希少な部分を選別していくのですが、ダイヤモンド鉱山においてでも、1カラット(=0.2g)のダイヤモンドは、平均で3トンもの母岩を処理して見つかる・・・というほど希少です。

そして、さらに、その2割程度しか宝石用にはならず、さらにその等級分けをしていくと、ダイアモンドではあっても、ほとんどは研磨剤や工業用途向けになってしまって、宝石とは比べようもない低価値のものになってしまいます。

つまり、1カラット0.2gのダイヤモンドは15,000,000g(15トン)の石の中から掘り出されている単純計算になるのですから、有名なダイヤモンド鉱山であっても、宝石にするためには、すごい費用なので、高価なのは当然です。

加工するのは悪いことではない

品質の高い宝石ではなくて、安い宝石に何らかの加工をして品位や品質が上がって「高く売れる」ようになれば、グレーなところはあるものの、それは商売の通常行為です。

さらに、そのように手を加えたものを、企業や組織などが、その価値が下がらないような「良い仕組み」を保たれていれば、販売側も買い手側もWIN-WINなので、そうなれば、金銀などの地金相場とは違う仕組みで価値が支えられていることになります。

良いものをさらに手を加えて付加価値を高めて、高い価格となるようにすることは、宝石に限らず、多くの場面で世界的、常套的に行われているのですが、売り手と買い手がWIN-WINの関係が保たれていれば加工して価値を高めることは問題になるものではありません。

宝石の加工の種類には、「人工宝石」「模造宝石」「処理宝石」などがありますが、宝石を加工して価値を高めることに対して悪いと感じる人も多いのですが、売り手側の価格と買い手側の価値感が相応であれば何の問題もないのであって、悪いのは「騙す」「偽る」などの行為が入ってきてWIN-WINの関係を崩してしまうことですが、当然、加工すれば価値が上がる・・・というものでもありません。

また、河原の石ころを加工するのではなくて、原価の高い希少品を扱うのですから、加工手間やリスクもあるために、上手くいけば利益になりますが、下手をすると価値が下がる場合もあります。

このようなこともあって、このような宝石の加工がどこでどのようになされているのか・・・などは表に出ることがないものですが、加工のための設備費用などを考えると、零細企業規模では無理なので、高度な加工技術を持った企業などがやっている、特殊な世界のものと言えます。

加工(改質)を企業ぐるみで行って、オリジナル商品として販売しているジュエリー企業もありますが、もちろん、それが1つの商売として成り立っていますので、これも悪いというものでもありません。

この世界では、作る人がいて、それを買う人がいて、納得して取引されておれば、宝石を加工して価値を高めるのは悪いことではない・・・ということにしておいて話を進めます。

実情は、WIN-WINでないケース(すなわち、買い手側ががまされているケース)も多いのでしょう。

知り合いの鑑定士の方の話ですが、宝石には、非常にまがい物が多いし、価格と価値の基準も「あるようで何もない」ものなので、まがい物を鑑定した時の対応が難しい」と言われていたのですが、鑑定士は、価格を決めませんし、すでに出ている鑑定書やその内容にケチを付けるのは業者間のタブーになっているようです。

それは、「お互いを尊重するため」も言っておられましたが、このような業界の仕組みも、持ちつ持たれつという事のようです。

加工されていない宝石は皆無とも言われる

色の安定化や着色のための熱処理などは、極安装飾品を除いては、ほとんど行われていつと考えていいのですが、それらの加工は品質を高めるためのものなので悪い加工ではありませんが、貼り合わせ等の加工技術も向上し、巧妙?になってきているために、それを見極める技術も向上せざるを得ません。

もちろん、それらが明示されて、それに応じた価格で取引されれば問題ではありませんが、どうも、そうならないことが問題のようです。

現状では、その加工の真偽を見極めるには、高額な理化学分析機器が必要になるほどに、年々加工の仕方も高度になっていっていると言われています。

自然に産出する宝石で極上品が出るのは非常にまれなことです。だから、既成品に追加工をして、その品位が上がれば高価になって高く売れますので、見つかリにくい超精密加工をするのも「技術」だという世界(業界)だと言えます。

 

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金属は「錬金術」、宝石は?

金属には「錬金術」という言葉もあるように、いろいろな天才たちも「改良改質」に古くから取り組んできた歴史があります。

宝石にもそれと同様の品質改良の歴史があるに違いありませんが、多分、それが詳しく明らかにされることはないでしょうが、物理・化学の天才たちを虜にした錬金術は結実しなかったようですが、宝石の改質加工は成功していると言ってもいいのでしょう。

 

純粋の単石を削り出したもの以外の、何らかで手を加えた宝石は、「人工宝石」「模造宝石」「合成宝石」「処理宝石」などに分類できますが、もちろん、通常はそのような呼び名がついた状態で販売されることはありません。

食品の産地偽装などは、なんらかの問題が出たことで新たな表示義務などが加わてきていますが、宝石の世界は(ごく希少なものは別にして)素性や過程が示されることはありません。

せいぜい売り手側では鑑定結果による表示と、それに応じた価格を提示して、買い手側はその価値と価格を受け入れるかどうかで売買が行われるだけです。

それが仮に5万円の価値のものでも、50万円で鑑定書付きで購入すれば、50万円の価値に変わるという世界はチョット不思議に感じるのですが、購入者と販売者がWIN-WINであれば、それで全く問題ない・・・という世界なのです。

もしも、その50万円の宝石の鑑定書を見せずに他で再鑑定すれば、その価値が変わることは十分考えられます。

しかし、それをしない・させないことでお互いの幸せ(食い扶持)を共有している仕組みで「価値の保護」が行われているという、良い状態で「幸せを売る」市場が形成されている・・・ということがいえます。

そういう背景もあるので、ちょっとムラっ気のある、錬金術の素質のある人や企業なら、高度な改質加工はやってみたくなるかもしれません。

 

本当に高額の宝石は掌握しており、その価値も維持されているといいますが、正真正銘の高級品は限られていますので、だから、そこで、いいものを安く買おうとする人がいて、加工によってカラット数を増したり、高価な色に着色したり・・・という加工品が出回ることになるのも自然の理でしょう。

宝石買取のPRも目につくようになりました

要らなくなった貴金属宝石類を買い取る会社のCMを見ることも増えましたが、査定価格や買取価格のあまりの安さに驚く人も多いようです。

宝石に限らず、買取査定価格は買ったとき以上になるのは稀ですから、それが買取相場と思わないといけないのですが、宝石類は少し特殊な面があります。

宝石類は、高額で購入することに満足すら覚えるもので、やすく買っては「宝石の価値」が下がるし、保証書などでその価値が保証されているとなると、購入によるリスクもないというのは、宝石流通の特殊さと言えます。

ただ問題なのは、高級な原石が非常に少ないために、玄人が鑑別しても、精密分析機器を使って分析判定しても、それが加工されたものかどうかがわからない品物が流通することは何となくもやもやします。

もちろん、宝石を特殊加工をする側とそれを鑑別する(見破る)側のお互いが、技術の高め合いを繰り返して現在に至っているのですが、それでどうなるというものでもないところが不思議な世界です。

ここで、宝石に関係する一般知識を見ておきます。

宝石の溶融合成

ダイアモンドの状態図鎌田・西原著地球科学より引用

ダイアモンドは、炭素の同素体(同じ元素で分子配列などの違いで違った性質のもの)で、太古の樹木などの炭化した「グラファイト」が地中深くの高温高圧によってダイヤモンドになった・・・とされています。

近年は、工業用ダイアモンドなどは、この仕組みを真似て高温高圧にすることで人工的に製造されています。

もちろん、その品位は宝石レベルではありませんが、硬いという特徴を利用して、砥粒や工具などの工業用途向けに人工ダイヤモンドが製造されていることはご承知でしょう。

 

宝石の多くは鉱石で、それが生成された地中では、いろいろな元素が鉱石中に混合しており、その成分も異なります。

また、地中の状態によって融点などの状態が変わり、冷却の過程などによっても変わることから、宝石ができる原理はわかっていても、それを人工的に作るのは簡単ではないということはイメージできるでしょう。

珪酸アルミニュームの状態図同上にあった図を一部改造

これは、鉱物の成分、珪酸アルミニウムの状態図で、地中の状態によって温度と圧力が変われば、計算アルミニュームがABCのようないろいろな鉱物になるということを示した図です。

更にこれにクロムや鉄などの別元素が加わって融合すると、更に複雑な鉱物になって、このような図では表せない複雑なものに変化します。

つまり、この図は、ケイ素とアルミニウムの2元素の温度と圧力状態を示した図ですが、もう1元素が加わると3次元の図になってXYZ軸で表現しないといけなくなり、4元素になれば4次元の図は描けないのでそれを表現するのもできなくなるのですが、自然界では、もっと多くの元素と濃度差などの条件や地中の複雑な温度と圧力の条件の中から、たまたまに、ある一部分が「宝石」として価値のあるものになっているのですから、さらに美しくて希少な宝石となれば、すごい価値があるのは当然でしょう。

たとえば、宝石の「ルビー」は、コランダム(酸化アルミニウム)の変種で、クロム(Cr)が1%程度混ざって高級な真っ赤な「ルビー」になっていますし、クロムが0.1%程度では「ピンクサファイア」になり、また、鉄やチタンが混ざると、青色の「サファイヤ」になるといいます。

それらの、成分、温度、圧力、冷却の過程等によって、出来上がる宝石の種類や品位が変わるのですが、これらが生成される確率は極小で、「神のみぞ知る世界」なのです。

しかし、元素の配合と圧力と温度条件でそれらが作られているという原理がわかれば、作ってみようとするのが人間で、イチから宝石を作らなくても、現在の熱処理などの加工技術を使えば、改変してしまうのは簡単なレベルですので、ほとんどの宝石は何らかの加工をしているということのようです。

長くなるので、次のページで紹介します。次のページは、鉱石の融点の話からです。