ケイ素・珪素・硅素・シリコン
日本語の表記も様々です。ここでは、ケイ素・シリコンとしています。
シリコーンという言葉もしばしば聞かれますが、これはケイ素を含む高分子材料で、ここでの「シリコン」とは全く別物です。これについては、後に説明しています。
下に示します周期表で見ると、SiはCの真下にあります。これらはよく似た性質があるということです。
主な用途として、赤外線域の波長で高い透過率があるためレンズなどに用いられたり、半導体やダイオード、太陽電池としての用途や鉄鋼の合金元素として用いられます。
シリコンは半金属または非金属に分類されます
原子番号14のシリコンSi(=ケイ素)は電子の世界では半導体としてなくてはならないものです。
シリコンは非金属と書いてある場合や、半金属になっている場合があります。これを簡単に説明しましょう。
物質は、おおきく「金属か非金属(それと希ガス)」に分かれます。
非金属は金属以外のものですので、この「金属」とは、機械加工ができて電気や熱の良導体で金属光沢があるもので、原子が陽イオンが規則正しく並んだ金属結合をしているものとされています。
周期表を示します。これは元素の説明のために、しばしば表示しています。
ここに見られるように、ホウ素B、ゲルマニウムGe、ヒ素Asなどは非金属との境界にあって、金属的な一部の性質があるので、半金属と呼ばれることが多いようです。
しかし、炭素CやリンPなども半金属性がある形態がありますし、非金属と金属が化合して金属性がある場合も金属に分類されるなど、この辺りの呼び方や分類は厳密なものではありません。
自然界のシリコン
地球上(地殻)に含めれる元素は、多い順から、酸素46.6% シリコン27.7% アルミニウム8.1% 鉄5.0% (Wikipediaより)で、地殻成分では6割がSiを含む鉱物といいます。
写真は石英・長石・黒雲母からなる御影石ですが、このように、岩石や砂などは、Siで構成されたものからできています。
岩石を構成する「2酸化ケイ素」などから出来ている物質の総称は「シリカ」と呼ばれます。
鉱石の石英などはそのうちの結晶性シリカで、乾燥剤に用いるシリカゲルは非結晶性シリカです。
非結晶性シリカは人間に無毒で、水溶性で非結晶性のシリカは人間の体内にも微量が含まれており、免疫力に影響を与えたり、肌の保湿、骨や髪、爪、コラーゲンの再生・構築・補強・維持を手助けしているとされます。(体内には1g程度のケイ素が含まれています)
それに対して、結晶性シリカには有害なものがありますが、直接長期間体に密着したり、摂取する可能性がなければ、気にすることもないでしょう。
食物からの摂取については問題ないとされています。(よくわかっていないのが実情)
しかし、当然のことですが、ケイ素を含むサプリメントや湧水の摂りすぎは腎臓の障害を起こすこともありますし、ケイ素を含む粉を吸い込むと、呼吸器障害が起こすという記事もあります。これも、「あえて摂る」ということでなければ、特に気にすることではありません。
シリコーンとシリコンの間違った知識から来る不安・・・について、あとで説明しています。
石綿(アスベスト)は有害です
有害な石綿(アスベスト)も天然の鉱石で、ケイ素と関係あるかもしれません。
蛇紋石や角閃石と呼ばれる鉱物が繊維状に変形したものから作られます。
非常に有用な鉱物製品でしたが、この微細なものが肺に入ると有害で、古い建築廃材などではそれが含まれるものが残っているので、ダストを吸い込まないように注意しましょう。
現在アスベストは製造が禁止されており、これに変わってセラミックスなどが使われています。
石英の結晶「水晶」や宝石類
鉱石の石英の英語名がクオーツ(quartz)で、特に無色透明なものを水晶(すいしょう、 rock crystal)と呼びます。
不純物が混じった「色付き水晶」に、紫水晶(アメシスト)、黄水晶(シトリン)、紅水晶(ローズクオーツ)などがあり、パワーストーンとして人気がありますし、その他の物質(インクルージョン:内包物)を含んだ「変わり水晶」などもコレクターなどには話題の多いものです。
エレクトロニクスには欠かせない 水晶振動子
水晶の結晶に電圧(電界)を加えると、変形が生じます。
同様に、水晶に力を加えて変形させるとその表面に電荷(電気といってもよい)が生じます。
これを圧電効果といい、結晶軸に対する切り出し角度で周波数特性や温度係数が変わるために、ATカットと呼ばれる方法で切り出した後で、厚みよって発振周波数が決まるので周波数を変えた発振子が作られています。
時計などでは、体温付近で温度係数が最小になるような角度で切り出し、音叉のように発振させ共振振動させることで正確な時間周期を得るように加工されます。
シリコンウエファー
現在はシリコン単結晶は「フィフティーンナイン99.9999999999999%」の純度で製造できるといいます。
半導体に使用するには高純度なシリコンにヒ素やホウ素などを混ぜて電子の流れを制御するという使い方になります。
写真の右端は直径が400mmもあり、ICチップや太陽電池のベースとして、また、大電力用の整流器などに利用されます。
シリコーン(silicone)
これはケイ素=シリコン(silicon)とは別物ですので、最後にこれを説明します。
シリコーン (silicone) とは、Siを含む高分子化合物で、シリコン樹脂・シリコンゴムなどと呼ばれていたものを略してシリコンと呼んだことで、多くの人が間違った認識をしているようです。
この高分子「シリコーン」は化学的に安定で、酸化分解されにくく、人体への毒性がほとんどないものです。
シリコン樹脂の食器が電子レンジに使用されることからわかるように、電気絶縁性が高く、誘電率が低く、紫外線や放射線にもある程度耐えられるという夢のような材料です。
シャンプーでシリコン入りとノンシリコンの話題が聞かれますが、このシリコンも「シリコーン」のことです。
シリコーンオイルを配合したシャンプーは髪をコーティングして軋み感がなくなることで、髪のつやが増し、キューティクルが再生したようなさらさら感が得られることから、大手シャンプーメーカーがこぞって配合して、その効果をPRしたことで売上量がブレークしました。
しかしその後「シリコンとシリコーン」をごっちゃにした噂などが流布したことで論争になり、「ノンシリコン」が好まれるようになっているようです。
このシリコーンは、髪や身体に悪いものではありません。シリコンSiとは違います。
シリコーン素材のトップメーカー信越化学工業によると、5千以上の品種にシリコーンが使用されているようですので、これが有害なら大変なことになってしまうでしょう。
非常に使用感の良い「シリコーン入りシャンプー」が、間違った噂によって悪者にされて、販売される銘柄が激減してしまいました。
無害で最高の使用感があるのに嫌われてしまったのは残念です。
ちなみにシリコンゴムですが、これも、耐熱・耐水・耐薬品性に優れる無害のゴムですが、たくさん炊事キッチン用品として使われるようになっていますね。
これももちろん、シリコンSiではなく、無害のシリコーンで、シリコーン樹脂を重合して硬化した後に整形して作ります。
医療用のカテーテルや心肺の人工弁などにも用いられる、安全性の高いものです。


