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鉄 世界を支えるこの世で最も有用な金属の雑学

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鉄の比重は7.8 10cm角で約8kg

鉄 Feは原子番号26、すなわち陽子の数が26で、比重が7.8程度の金属元素です。

比重は水との重量比で、密度で表すのが一般的ですが、単位がない便利さで比重を使っています。

もっとも身近にある元素なので、普通の人なら、鉄(鉄鋼)製品の重さの感覚をわかっているはずでしょうが、鉄のかたまりは意外に重く、10cm角の鉄鋼の重量は約8kgにもなります。

例えば、アルミニウムの比重は2.7程度と、鉄の1/3程度ですから、フライパンを持つときに、アルミ製のフライパンより鉄製の中華鍋は重たいことを体が覚えていますね。

鉄と鋼と鉄鋼の用語について

鉄(Iron)は「元素Fe」のことで、鋼(Steel)は「炭素Cとの合金」をいいます。 それに対して、鉄鋼(Steel)は、「鉄と鋼と鋳鉄(Cast iron)」の総称を示す言葉です。 鋼鉄は「鋼」と同じ意味合いです。鋳物は、約2%以上の炭素量のものをいいます。

純粋なFeを作るのは難しいので、99.98%程度以上の純度のFeを「純鉄(Pure iron)」と呼んでいます。

0.01%程度以上の炭素CとFeの合金「鋼」は、炭素量や合金量を変えることで、様々な用途の鉄鋼製品が作られており、熱処理をすることで、さらに広い用途に使われています。

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10㎜角の金属のキューブが販売されています。高価なものもあるのですが大人の趣味にどうでしょう

重金属・軽金属は鉄を基準にして分けている?

この鉄の比重7.8を基準に、それより密度の高い金属を「重金属」、軽いものを「軽金属」という分け方があります。

一般的に重金属・軽金属の分類基準は、比重(または密度)で4~5 を基準にしていますが、実在の主要金属の「鉄」を基準にするとわかりやすいので、このように表現しても間違いではありません。

核融合でたどり着く先は「鉄」

太陽系を構成する元素のほとんどが水素で、それが長い年月をかけて凝集して星ができて、星の内部で核融合反応がおこり、原子番号1の水素が2のヘリウムになり、3のリチウムができて… というように、核融合によって新しい元素が生まれてきました。

(もちろんこんな簡単ではないのですが、イメージです ……)

そして、その核融合の「なれのはて」が鉄Feで、核融合では、それ以上の反応が進まないといいます。

鉄以上の原子量の大きい元素は、核融合ではなく超新星爆発の強烈な圧力で生まれたと考えられています。

また、核分裂する元素も同様で、核分裂を繰り返しながら、次第に原子番号の小さな元素に変わっていって、最終的には「鉄Feになる」と説明されています。

これは、何十億年という宇宙の時間単位のはなしですが、核融合と核分裂による結合エネルギーが一番低くて安定しているのがニッケル・鉄あたりの元素なので、最終的に鉄Feに落ち着くことになると考えられています。

 

鉄は最も多目的に使われる金属

地球に目を向けると、地殻(地球の表面を覆う硬い層)を構成する元素の中で、「鉄」は、酸素、ケイ素、アルミニウムに次いで多い元素で、鉄は他の元素と化合しやすく、金属単体で存在するのはほとんどありません。

それを鋼(はがね:鉄と炭素などの合金)にすることで無限の使い道があります。

鋼は「焼入れして硬くなる」「焼きなましをして機械加工ができる」というように、熱処理によって機械的な性質を大きく変えることができることもあって、様々な使い方ができます。

耐食性容器や低温容器に使われるステンレス鋼(オーステナイト系ステンレス鋼)は、ニッケルNiやクロムCrを加えることで、耐食や低温特性を高めています。

それもあって、統計によれば、世界で様々な金属が使用されていますが、その使用されている金属の90%以上が鉄合金ですから、「鉄」は地球上では最も重要で有用な金属だといえます。

鉄鋼では、炭素量の影響が大きい

鉄鋼は鉄Feと炭素Cの合金で、炭素量が増すにつれて「強さ(硬さ)」を高くすることができますす。

鉄鋼中に炭素は約2%程度溶け込み、その限度を超えると、「鋳鉄」の分類になります。

炭素量の増加につれて、「焼入れ」で硬化し、厚い鋼板などを切断できる「刃物」などの工具用材料になります。

逆に、鉄鋼中の炭素量が低いほど、鋼の低温特性や耐食・耐酸化性が高まります。

そして、

純鉄は炭素量が0.01%以下のものをいいますが、これは「フェライト磁石」などで用いられるように、非常に高い強磁性を示します。

しかし、同じ低炭素であっても、ニッケルNiやクロムCrなどが入った「オーステナイト系のステンレス鋼」は常磁性で、磁石にはつきません。

磁石につく鉄粉 砂鉄

これは砂鉄 が磁石に引き寄せられている写真です。

近年はほとんどが舗装されていて、「土」というものを見る機会が減りましたが、永久磁石を舗装していない道路上でひっかきまわすと、この写真のような砂鉄がとれたものです。

鉄は、このように、形を変えて、地球上に、広く広がっている状態になっていますが、この写真の砂鉄も純鉄ではなく、鉄鋼の粉であったり、酸化したりして、合金または化合物の状態なので、Fe単体では存在しない … という特殊なものです。

鉄を使う「使い捨てカイロ」

使い捨てカイロの主成分は鉄と活性炭 … ということを知っている人は多いでしょう。

上の写真のような鉄粉(ただし、酸化していない鉄粉でないとダメ)に、保湿剤として、食塩水に浸した活性炭やバーミキュライトを混ぜると使い捨てカイロができます。

使い捨てカイロは、鉄が水酸化鉄になるときの発熱反応を利用しています。

製鉄と製鋼

「鉄」は鉄鉱石とコークスを溶鉱炉に入れてつくられていることは、ほとんどの人が知っていますが、「鉄」とは元素Feのことですから、製鉄所は、鉄を作っているのではなく、「鋼(はがね)」を作っているというのが適切です。

「製鉄業」は、鉄鋼を作るための素材(銑鉄や鉄合金など)に関係する業種で、それに対して、「製鋼業」はその素材から鉄鋼や鉄鋼製品素材を作る業種です。

だから、例えば最大手の製鉄所(日本製鉄やJFEなど)では、製鉄、製鋼だけではなく金属加工製品までも製造販売をしています。

「鉄鋼」の統計資料は「粗鋼」が基準になっている

鉄鋼は、鉄鉱石とコークスなどを加熱して、様々な元素が化合して溶けた状態で溶鉱炉から出てきた「粗鋼」を精錬して鋼塊を作り、それを加工して様々な製品になっていきます。

かつて日本は世界一の粗鋼生産国でしたが、2023年では、中国、インド、日本、米国 の順になっています。

日本の製造量は1.1億トン~0.8億トン程度に微減している程度で推移していますが、中国やインドの製造量が急増しています。

「鉄は産業のバロメータ」と言われるほど重要なもので、鉄鋼に関する統計が、粗鋼生産量以外のランキングをあまり見ない理由は、製品用途などの分類が複雑で、調査がしにくいことが理由のようです。

鉄鉱石

鉄鉱石の採石場 鉄鉱石の露天掘り

製鉄に使われる鉄鉱石は、鉄分の含有量が多い鉱石でないと生産効率が悪くなります。

鉄鋼の原料になるのは赤鉄鉱、磁鉄鉱と呼ばれる種類の石で、それを採掘して、採算を取ろうとすると、写真のような露天掘りができる場所が費用的に有利です。

現状では、オーストラリア(20%)、ブラジル(22%)、中国(17%)、インド(11%)、ロシア(7%)で、世界の8割近くの鉄鉱石を算出しています。

この、オーストラリアとブラジルの鉱石は、50%以上の鉄分を含む良質のものですが、鉄鋼生産量が急増した中国の鉄鉱石は、純度が30%程度しか鉄分を含んでいない低品質ですから、中国はよく頑張っているといえます。

JFE倉敷の高炉 JFE倉敷高炉(JFEのHPから)

かつて日本は世界一の粗鋼生産量でしたが、現在は、溶鉱炉(高炉)を保有しているのは、日本製鐵、JFE-HD、神戸製鋼所、日新製鋼の4社で、粗鋼生産量は微減傾向ですが、高品質化や高級鋼にシフトさせて健闘しています。

鉄鋼製品は大根より安い?

少し荒っぽい計算になりますが、高炉で作られる銑鉄1kgを製造するためには、鉄鉱石が1.5kgと石炭が500g必要で、そこから得られる鉄鋼鋼材は900g程度になります。

鋼材の販売価格は相場で変動しますし、近年は上昇傾向ですが、1kg100円台(普通鋼材)と非常に安価です。

それには原材料費などが半分程度かかっているのですが、安価な価格から、しばしば「鉄鋼は大根より安い」と比喩されます。

鉄鋼はいろんな技術が凝縮されていることを知れば安すぎる感がありますが、世界競争ですので、鉄鋼関連業従事者の皆さんの努力には感謝感謝です。

もちろん、中国の減産や地域紛争などで鉄鋼価格が急上昇するのも困りものですが、鉄鋼製品は世界の繁栄を支えていますので、感謝しつつ動向にも気にかけておきたいものです。

鋼の性質を左右する製鋼技術と熱処理

工具や機械部品の性能を活かすための「熱処理」は非常に重要で、硬く強くする「焼入れ」や軟らかくする「焼なまし」の他に、耐食性、耐熱、耐薬品性を高める「溶体化処理」などの鉄鋼の熱処理法があります。

焼入れ 第一鋼業のHPから 焼入れ作業:第一鋼業(株)のHPから

優れた特性を持つ鋼を製造する「製鋼技術」も進歩しています。

強くてねばい鋼になるのを阻害する元素(リン、硫黄、銅などの不純物や介在物や酸素など)を排除するために、真空脱ガス技術などを含めた製鋼技術もあって、近年では、通常に販売されている鋼も、非常に不純物の少ない(清浄度の高い)高品質な鋼になっています。

そのためには鉄スクラップのリサイクルが欠かせません

昭和年代の古い話ですが、鉄鋼にあまり詳しくない人の中には、「日本の鉄はスクラップを混ぜて作っているので品質が良くない」という人がいました。(今でもおられるかもしれません)

これはとんでもない間違いです。

リサイクルされた良質な「鉄スクラップ」があって初めて、最高品質の「鋼」を作り出されているのです。

日本国内には「製鉄4社」のほかに「電炉メーカー」と呼ばれる製鋼メーカーがあり、ここでは鋼を製造するために、フェロアロイという合金鉄などの原料と鉄スクラップから非常に良質の鋼材が製造されています。

ですから、高品質の鋼を作るためには良質の「鉄スクラップ」はなくてはならないもので、鉄スクラップ業者さんの役割も大変重要です。

鉄のリサイクル率は70%程度

ちなみに、鉄のリサイクル率を見ますと、スチール缶では90%近くなっていますが、その他を含めると鉄のリサイクル率は70%強程度という数字です。

放おっておくと、鉄は錆びて散逸するので、この数字を高めるのは至難ですが、年々、向上する傾向にあります。

もちろん、鉄スクラップも需要と供給によって相場が形成されており、ちょっとした国際景気動向にも左右されるのですが、資源の少ない日本は特に、リサイクル率を高める努力は忘れてはいけないでしょう。

人体の組成におけるFe

もちろん、人間の身体にはFeは大切な元素で、Wikipediaによると、70kgの人に含まれる鉄は「6g」… とあります。

血液中のヘモグロビンには、その2/3が含まれていて、鉄分は生命維持には不可欠なものです。


他の記事  → 銅 Cu     → アルミニウム Al


(来歴)R5.2月に誤字脱字を含めて見直し。   R8.4月に確認