ニッケルNi(→こちら)の紹介の続きで、形状記憶合金について簡単に紹介します。
形状記憶合金では、ニッケルNiとチタンTiの合金が有名で、この合金は、変形させた品物を加熱するともとに戻る性質を持った合金です。
そして、同様の合金は、熱処理と加工条件を変えると、大きく変形させても、外力を除くともとに戻る「超弾性」の性質が利用できます。
形状記憶合金と超弾性合金
ここでは、形状記憶や超弾性の技術資料について、古川マテリアル、大同特殊鋼、アクトメントさんのHP記事などを引用して、それらを簡単に紹介します。
形状記憶合金には、Ni55%-Ti45%(ニッケル・チタン)の「ニチノール」と呼ばれる合金が有名です。
形状回復温度範囲を変えるために、ニチノールにコバルトや銅を加えた製品があります。
形状記憶合金は SMA(Shape Memory Alloy)と表現される場合もあります。

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釣り具や手芸用に形状記憶合金が使われているのは「超弾性合金」としての利用が多いようで、①変形しても元の形に戻る ②曲げても折れて変形しにくい ③釣り具では釣れた時の感度がいい ④ルアーなどで自然の動きを演出してよく釣れる … などで使用されているようです。
この使用での評価は人それぞれですが、安価なものですから、ぜひ使って試してみてください。
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形状記憶と超弾性
ここでいう「形状記憶」とは、変形を加えた状態のものに熱を加えると元に戻るような性質のことです。
例えばバネのような部品に力を加えて変形させた状態から、体温やドライヤーでその部品を温めると、元の形に復元出来ます。
また、温度を高くしたり低くしたりして、アクチュエーターのような部品や温度バルブのように、温度で流量調節できるような部品など、温度を変化させると変形度合いを変えることができるなどで、様々な部品に応用されています。
同様の成分の合金で、変形させてももとに戻る「超弾性」の性質を持った合金にすることもできます。
超弾性状態では、引張力や変形に強く、錆びにくく清潔なことで、歯列矯正ワイヤーに使われているのをイメージするといいでしょう。
形状記憶部品は人体に使われる用途も多い
Ni-Ti合金の成分では、20℃から100℃程度の温度で回復温度をコントロールできるので、人間の体温を利用して、スイッチのオンオフをしたり、周囲温度で品物の形状を操作したり、人間の血管を拡張させる「ステント」のように、血管内に挿入して、体温を利用して拡張させる … など、様々な用途へ応用されています。

この様子は、古川マテリアルさんのHPの図がよくわかります。これは引張試験の様子を示しています。
通常の金属では(a)のグラフで、品物を引っ張ると、弾性領域では加えた力と伸びが比例し、力を除去するともとに戻りますが、その弾性領域を超えて力を加えると、「降伏」といって、引っ張る力に対抗出来なくなって「永久変形」が生じます。(もとに戻りません)
それが、形状記憶合金では、この伸びた状態のものを、100℃程度までの温度を加えると、伸びたものが縮んでいって、元の状態に戻ります。(b)の図です。
もちろん、通常の金属でも、熱を加えると残留応力などで少しはもとに戻る場合もありますが、形状記憶合金では、きっちりとした熱管理をすると上の変化が繰り返されます。
(c)は 形状記憶合金ではなくて「超弾性合金」の状態を示しており、引っ張って変形してしまった状態でも、引っ張ることをやめると元の状態に戻ってしまうのが「超弾性合金」です。
歯列矯正に使われるワイヤーがイメージしやすいと思いますが、形状記憶合金を形状回復温度において変形させると超弾性体になるということです。
この超弾性合金もNiが関係しており、Ni-TiにCrやCu、Feなどを加えたものが製品化されています。
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形状記憶合金にするための熱処理
ちょっと専門的な内容ですので、興味のある方だけお読みください。
形状記憶合金の一般的な使い方は、①ある製品の形状にする →②熱処理をする →③品物に変形(外力)を加えて変形させる →④元の形状に戻すために温度を加える その後は、→③④を繰り返す。 … というような使い方になります。
変形させたものに熱を加えると、熱処理前の状態に戻ることを「形状記憶」と表現されています。
形状記憶を付加するには、「熱処理」が重要で、この、②の熱処理方法は、400~600℃に加熱して冷却するだけです。
ニチノールの場合は、通常は500℃程度で最大の回復状態が得られますが、加熱温度を変えることで、元の形状に戻す「回復温度」(通常は20℃から100℃程度)や回復率が変わります。
例えば、温度によってストロークを変化させるアクチュエーターなどを考える場合に、温度調節することで、この性能を使用できるのですが、この動作条件は、予備試験をして最良の条件を決めておく必要があります。
自宅で実験もできます やってみると面白いです
形状記憶合金の伸線は安価で入手できますから、趣味で遊んでみるのも面白いでしょう。
WEBで探すと、魚釣の道具、自在ワイヤー、手芸用品、メガネ部品 … など、いろいろ販売されていますのでアイデア次第で楽しめるでしょう。
販売されているものは、伸線した細い針金状のものが多く、直線形状を維持するような「超弾性」の用途向けなので、改めて熱処理する必要はありません。
変化の小さい形状復帰は常温より少し高い温度から進行するので、アイデア次第でいろんなことに使えそうですし、そんなに高価なものではないので、変化を試してみるのであれば簡単にできます。
ただし、科学館などで見るような、変形を加えたものに熱を加えて元に戻すような大きな変化を見ようとすれば、成分に見合った、きっちりとした温度で熱処理をして、回復温度についてもきっちりとした管理が必要です。
私自身は、仕事で形状記憶部品の熱処理をしていた経験がありますが、正確な温度での熱処理はちゃんとした加熱設備も必要で、熱処理操作もきっちりしないといけないのですが、趣味を楽しむには、(アバウトなので変化も安定しませんが)市販の針金状の形状記憶合金または超弾性合金を購入して、以下のような方法でも、形状記憶の状態を見ることができます。
参考:家庭で楽しめる形状記憶合金の実験のために熱処理
水の入った容器を用意しておいて、形状記憶合金を鉄製のフライパン(テフロン加工のないもの)の上において、ガスコンロで、色がつかない程度の500℃を目標に10分以上加熱して、すぐに水冷します。
これが「熱処理」です。
500℃にするのが結構難しいのですが、暗いところで加熱し、色がつくと700℃程度になってしまっているので、目視で赤く熱しないように注意して加熱します。
0.5mm程度の伸線なら、ガスコンロに小さな鉄板を置いて、赤く加熱してガスの炎を小さくし、鉄板の火色が消えたところに品物を置いて、10分ほど維持して、水で冷やします。 それで熱処理完了です。
市販されている合金材料は、どんな成分なのかは不明で、常温で変形させてもうまくいく合金もあるのですが、通常は、「冷凍庫」に入れた状態で変形させることが1つのポイントです。
そうは言っても、温度やテクニックが影響するので、加熱や保持時間、冷却方法を変えて、うまくいく条件をいろいろと試験してみてください。
熱処理したものを(できるだけ低温の環境、例えば、冷凍庫に冷やした状態で変形させるなどで)変形させて、ヘアードライヤーで少し温めると形状が元の形状に戻ろうとするのがわかります。
何回かいろいろやってみると要領がわかってきます。
もちろん、このような簡易的なやり方ではベストな状態にできませんが、実験とおもって、いろいろ試しながらやってみると結構面白いですよ。
もちろん安全で事故のないように、と、自己責任でお願いします。

