アルミニウム(原子番号13) 元素記号: Al
アルミニウムは、地球の地殻中で酸素O、ケイ素Si に次いで多い元素です。
金属元素としては鉄Feの2倍も存在しているのですが、偏在しておりボーキサイトなどからアルミ地金にします。
これを製造するのには、溶融塩電解ですごい電気を食うために採算に合わないことから、現在、国内ではアルミの精錬(地金の製造)はされていません。
国内では、地金を輸入してアルミ缶などを製造しており、その生産量はスチール缶をしのぐようになりました。
これらの話題の多いアルミニウムについて見ていきましょう。
名前や製造法などの雑学
【名前】
英語・フランス語はaluminium(アルミニウム)、米語ではaluminum(アルミナム)と書きます。
フランスの科学者ラボアジェが1787年にミョウバンに含まれる金属をアルミンalmineというように記しており、その後ミョウバンからアルミニウムを分離したイギリスのデービーはアルミウムalumiumと名付けています。
ミョウバンのイタリア語はアルメンalumenで、その後にフランスの科学者ドービルがアルミニウムと名付けた・・・ということでアルミニウムになったことから、ヨーロッパとアメリカで呼び方が変わってしまっています。
日本での表記名はアルミニウムですが、アルミニュームと読んだり表記されている場合もあります。ここではアルミニウムまたはアルミとしています。
【原料】
中学生の時には、アルミニウムはボーキサイトbauxiteから作られると習いました。
これは酸化アルミニウム(アルミナ)を55%程度含む「水酸化アルミニウム鉱物の混合物」で、上の写真のような赤い色をしているものが多いのですが、「ボーキサイト」という単体の鉱物ではありません。
【製造法】
このボーキサイトから不純物の二酸化ケイ素や酸化鉄を除くために高温加圧状態で濃水酸化ナトリウムに浸してアルミン酸ナトリウムにしてから水酸化アルミニウムを分離してから焼成するとアルミナ(酸化アルミニウム)になります。〔バイヤー法〕
そのアルミナに5%の氷晶石を混ぜて炭素電極を陽極にして溶融塩電解すると、陰極にアルミニウムができます〔ホール・エルー法〕。
かなり前ですが、国内のアルミの製造工場を見学したことがあります。
白い粉が盛り上げられたところで電解作業をしていたのですが、非常に電気を必要とするため1995年以降は日本ではこの地金の製造はされておらず、すべてを海外から輸入しています。
ボーキサイトの産出国は、オーストラリア(35%)中国(14%)ブラジル(11%)などで、ギニア、ジャマイカと続きます。
【リサイクル】
現在は、アルミ缶がスチール缶を上回る生産量になっています。そして、それらのかん類の約90%がリサイクルされています。
しかし、アルミニウム全体のリサイクル率は50%を少し超える程度で、(つまり、アルミ缶以外のアルミ製品の回収率が悪いということで)足らない分はアルミニウム地金を輸入して製造されています。
アルミの精錬に非常にたくさんの電気エネルギーが必要ですので、省エネの見地からこの傾向は今後も変わらないのですが、アルミ缶のリサイクル引き取り価格は1キロ75円程度なので、アルミ缶を集めて売却して1000円儲けようとすると、13.3kg集めなければなりません。
アルミ缶350ml用の重さは徐々に軽いものに変わっていて、現在のところ15g程度までになってきていますので、1個集めると1円少しです。
これは、鉄スクラップよりはかなり高価ですが、それでも約900個集めないと1000円にはなりませんので、これで食べていこうとすると大変ですね。
アルミニウムの特徴と用途
【軽い】
リチウムには及びませんが軽いのが特徴です。
比重は2.7です。鉄は7.8、銅が9.0ですので、それらの1/3程度の重さで柔らかいのが特徴です。
軽いことを見せるために、1円玉が水に浮いている写真を見ることがあります。
水の比重は1なので、表面張力によって浮いている状態ですので、洗剤を垂らして表面をなじませると、比重2.7の1円玉はたちどころに沈んでしまいます。
【電気伝導度が良い】
金属の中で電気を最もよく通すのは銀で、次に、銅、金、アルミニウム、マグネシウムなどの順です。
わかりやすいように銀、銅、アルミ、鉄の電気伝導率から、銀を1の電気の通りやすさとすると、銅は1.05でほとんど変わらないのですが、アルミニウムは1.8で、鉄は6.3です。
アルミニウムは銅や銀よりは少し電気抵抗が高いのですが、銅に比べて安くて軽いことから、大半の高圧線の電線は今や銅製ではなくてアルミ製になっています。
いたるところに張り巡らされている高圧電線は「鋼芯アルミより線」というものが使われています。
これは、中心に亜鉛メッキをした強い鋼線があって、それで強度を保っていて、その周りにアルミ線をより合わせて電線が作られています。
アルミの電気抵抗は銅の1.8倍高くても比重(密度)が3割程度のために1.8倍程度太くできることになります。
そのために、結果として全体的には電気抵抗は銅の半分程度となるので、高圧電圧を送る際の熱損失が少なく送電効率がいいということになります。
【胃腸薬】
水酸化アルミニウムは制酸材として胃薬に、胃潰瘍の薬スクラルファートはアルミニウムイオンがタンパク質とくっついて胃壁を守るなどの効用があって、医薬品としても役立っています。
しかし、薬と毒は表裏一体で、アルミニウムが過剰に体内に取り込まれると、骨や筋肉に異常が出ることや、アルミニウム塩類は酸・アルカリに溶けやすいので酸性雨などでの生態系に影響があるとされるなどの懸念もあります。(胃薬では問題になることはありません)
宝石の話
酸化アルミニウムの結晶からなる鉱物の鋼玉(こうぎょく:コランダム)は非常に硬い無色透明の結晶からなる鉱物です。
このモースの硬度は、ダイヤモンド(硬度10)に次いで固い「9のランク」にあり、耐水の紙ヤスリ(サンドぺーパー、エメリー紙)として、純度の高くない低級のコランダムの粉を紙に張り付けて、研磨用の道具として用いられています。
自然の鋼玉は不純物の金属イオンによって赤色に着色すると「ルビー」になります。そしてそれが青色などに着色されたものが「サファイア」で、いずれも高価な宝石です。
クロム(Crが1%以下)でルビーになり、鉄(Fe)やチタン(Ti)が入るとサファイヤになります。
つまり、クロムが多くても少なくても価値が下がるのですが、色が変わってしまうと工業用の研磨剤にしか使えないようになってしまうほど美しい色の鉱石は希少です。
ミャンマー、スリランカ、タイ、ベトナムカンボジアなどが良質ルビーの原産です。
ミャンマーの「ピジョンブラッド(鳩の血)」やタイの「ビーフブラッド(牛の血)」などが有名ですが、近年は熱処理によって内部的な汚れのないきれいな色のものに変えることができることから、自然のものか手が加えられたものかを見極める方法も重要で、従来の拡大検査で見分ける以外にラマン効果による分析などで波長を調べる方法などで判別されます。
宝石の熱処理について、こちらに簡単なことだけですが、紹介しています。
ルビーはその中に含まれる3価クロムイオンを利用して赤色単色光にした「ルビーレーザー」は様々な工業的な用途に使われています。
高強度アルミ「ジュラルミン」
アルミニウムは柔らかく展延性に富む金属ですが、偶然に銅を混ぜると軽量で破断に強いものになることが1900年代の初めに発見されました。
またこれを放置しておくと、さらに強度が上がる「時効硬化」という現象が現れます。
このことで、異種金属を混ぜる合金化や熱処理による強化などで、いろいろな強度や特性の持つアルミニウム合金が製造され、現在は、超ジュラルミン(2000系)、超超ジュラルミン(7000系)などが開発されて使用されています。
亜鉛・マグネシウム・銅などでアルミニウムを合金化して、それを熱処理すると非常に強度が高いものになりますので、航空機部品など、様々な用途に用いられています。
このように成分系と様々な熱処理方法によっていろいろな仕様のアルミ合金が製造されています。
アルマイト
子どものころに、放置された「やかん」が白くさびているのをよく見かけました。
当時は「アルミは耐食性が弱い」と教えられており、錆びるのを防ぐために「アルマイト加工」をしているということも教えられていました。
しかしさびやすかったのは、当時の製品の品位が低かったためですが、とは言っても、本来、アルミニウムは酸やアルカリには弱いために、今でもアルマイトのような皮膜処理は行われていて、耐腐食性、絶縁性、着色などもおこなわれています。


