宇宙・天体の距離や速さを自分で計算してみると面白い

星や宇宙の話題には難しそうな計算が関係しそうですが、宇宙や星について、中学時代に習った程度の計算をつかって、自分で手計算してみると、宇宙や星がとっても身近なイメージになります。

人工衛星もお月さまも、宇宙第一速度で釣り合っている

月や人工衛星がずっと回っているのは、外に飛び出そうとする遠心力をつける「速度」と、地球に引き戻そうとする「重力」が釣り合っている状態です。 地上でものを投げると、放物線運動をして地面に落ちますが、スピードを上げていくと段々遠くに飛んで行って、より遠くの地面に落ちます。

インスタントカメラで撮った月

さらにスピードを上げると引力と回転力が釣り合った状態になって、例えばそれがロケットなら、地球の周りを回り続けます。

それよりスピードが速くなると、どこかへ飛んで行ってしまうことになります。

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その釣り合った状態の物体の速度は、約7.8km/秒という、非常に速い速度で、それを「第一宇宙速度」といいます。

例えば、ISS(国際宇宙ステーション)第一宇宙速度の7.8km/s近くの速さで飛んでいるので、地球に落ちてこないし、遠くへ飛んでいってしまうことはない・・・という釣り合った状態になっています。

この7.8km/sを電卓を使って時速になおすと 7.8×60(秒)x60(分)で、約28,000km/h の非常に速いスピードです。

地球も速い速度で太陽を回っています

太陽の引力は大きいので、地球が引力に捉えられて、一定の軌道から外れられませんので、ロケットで第一宇宙速度以上の速さになれば、地球の引力から脱して、宇宙に飛んでいくことができます。

太陽までの距離は15,000万km(一億5千万キロ)です。

1周が1年で、太陽がほぼ円軌道をまわるとすると、円周率をπとすると、 2πr÷一年間≒2xπx15000000/(24x365)≒107500km/h となり、秒速にすると、約29.9km/s という、すごいスピードで動いています。(公転スピードといいます)

実際に天体は円軌道でないので、この計算では若干の誤差がありますが、おおよその数字がイメージできれば、そのスピードや大きさをイメージしやすいでしょう。

惑星の動くスピードについては理科年表に載っていて、それは次のような数値です。このようなアバウトの計算でも、当たらずとも遠からずですね。

惑星の軌道速度

さらに地球は自転しています。

地上の回転速度は、赤道付近のスピードが最も速く、北極・南極では、1日かかって回れ右して同じところに向くだけという超スロースピードです。

赤道での速度は、赤道半径6378kmとして、1日1回転すると、「円周x円周率π」なので、2xπx6378÷24≒1670km/h で、赤道にいる人は、秒速で 460m/s という、地上の音速よりも速いスピードで動いているのです。(地上での音速はおよそ330m/sです)

日本は北緯35度あたりにあるので、赤道の速さよりも遅く、関数電卓を使って、半径を 6378xcos35≒5224km として同様に計算すると、380m/sぐらいの速さで回っていることがわかりますね。

それに気づかないのは、周りの景色も、おとも、なにもかも、同じスピードで動いているためですね。

その他の身近な数値を加えて、いろいろな速度の比較表をつくってみました。

速度の比較

ここで見るように、光が桁違いに速いのです。

ここにある第三宇宙速度とは、太陽の引力圏を抜けるために必要な速さですが、それよりも、太陽を回る地球の公転速度が早いのにびっくりしませんか?

これらの数字は、結構アバウトですが、書き出してみると、自然の凄さが感じられますね。

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人間が作った最も早い工作物は「ボイジャー」

宇宙に飛び出すための速度には、地球の引力に打ち勝つための 第一宇宙速度(7.8km/s)のほかに、地球の重力を振り切ってお月さんまで行く速度(第2宇宙速度:約11.2km/s)や、太陽の重力を振り切る速度(第3宇宙速度:約16.7km/s)などがあります。

1977年にアメリカが打ち上げたボイジャー(1・2号)は、第3宇宙速度を得て、40年以上かかって、ようやく太陽の重力圏を脱して飛んでいっています。

・・・ということは、もちろん、これは人類が作った飛行体で、最も早い速度のものだということで、これを時速に換算すると、16.7(km/s)x60(秒)x60(分)=60200(km/h)となり、時速にすると6万km/h以上の速度で宇宙空間を飛んでいるのですが、この速さでも、上の表にある地球の軌道速度にも達していないのですから、やはり自然はすごいということです。

このように、時速と秒速のように、単位を変えると感じ方が変わりますね。

光の速さは30万km/sですので、この世で最も早いボイジャーでも、光速の 1/17600 という速さです。

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お月さんまでの距離は約38万km・・・ロケットで飛ぶと

インスタントカメラで撮った月

地球の赤道を一周すると、先ほど出てきた式で、その距離は約4万kmですが、月の半径は1760kmですから、月の赤道を1周すると約11000kmになります。

一番近い天体の「月」ですが、地球から38万キロも離れたところにあります。そして、月の裏側を見せないように、一日にほぼ1回自転しながら地球に対する公転をして、さらに太陽の周りを、1年かけて公転しています。

この「月」も、地球の引力に釣り合うスピードで地球の周りを回っていますが、ほぼ同じ面を地球に向けていますので、地球の赤道にいる人よりも早い速度で動いているのでしょう。

つまり、月は38万km離れて地球を1周しているので、1日の移動距離は 2x円周率x38万km≒239万km で、軌道のスピードは、239万km÷60秒÷60分÷24時間≒27.6km/s となり、これもすごいスピードです。

そこで、地球から38万km向こうのお月さんまで、第二宇宙速度11.2km/sで飛んでいくと、380000(km)÷11.2(km/s)÷60(秒)÷60(ふん)≒9.5(時間)かかる・・・という計算ですが、実際にアポロ11号が月に行ったときの記事によると、地球脱出の加速と着陸のための減速が必要なので、行く時だけでも、実際には102時間(4日以上)かかっていたようです。

月の反射器(NASAの写真:WEBより)

アポロ宇宙船が月に設置したこのような装置で、月までの距離が正確に測定されています。

お月様は、地球の潮汐などの影響で、少しずつですが、回転が鈍くなっているようで、そのために求心力(相互の引力)が少なくなって、月までの距離が、平均毎年5㎝ほど遠くなっていっているというのです。

このイメージから、大昔の月の見え方を計算でイメージしてみましょう。(ネタバレですが、これは間違った考え方ですので注意ください)

恐竜時代が1億5000万年前とすると、月は、5cmx150000000年≒7500km 今の軌道よりも近くにあったということになります。 そこで、月の赤道半径が1760kmですから、昔の月の大きさ

となって、比例計算すると、見かけの大きさは2%(片側で35km)程度おおきいという数字だと計算されます。

しかしこれでは、現在の「スーパームーン」と呼ばれる月のほうが大きく見えている・・・ということになってしまいますので、どうも、これはおかしいですね?

スーパームーンとは、月の軌道が真円でないために、地球の軌道との相互関係で両方が接近して大きく見える満月の月のことですが、国立天文台の記事に、「スーパームーンは、平常時に比べて、直径で約14%、面積で30%大きく見える」とあります。

つまり、上の計算や考え方は間違っているのですが、どこがおかしいか、わかりますか?

最も考え方でおかしい点は、現時点の離脱速度は5cm/年ですが、月は45億年前に、地球の一部が弾き飛ばされてできた・・・という説があります。

そしてその後に、地球に落ちてこなかったので、上で見た「宇宙第一速度」のような、すごいスピードだったはずなので、現在の数字は使えませんから、「毎年5cm」で計算してはいけないことになります。

そこで考え方を変えて、月の大きさが現在と同じで、38万kmではなくて、10万km先の軌道で回っていたときのことを考えると、上の図と同様に、比例計算で見かけの大きさを計算できます。

3800000:100000=x:1760 でxを求めると、見かけの半径xが 6688km になります。つまりこれは、今の月の半径が1760kmなので、現在の4倍近い「おおきな月」が空に浮かんでいることになります。

大きな月が、1日に何回も地球の周りを回っているのは驚きですが、ちょっと計算することで、いろんなイメージが膨らむのも楽しいことです。

さらに、そんなに近くにあって、高速で回っていた月が、現在のように、長い年月をかけて、同じ面を地球に向けるようになって、地球と同じような自転周期になって、さらに満ち欠けを楽しませてくれるのかも不思議ですが、さらに年月が経過したらどうなるのかを空想するのも面白いことですね。

・・・こんな、数字あそびのような計算ですが、紙を取り出して自分で計算すると、数字を見るだけとは違うイメージになるでしょう。

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隣の恒星「プロキシマ・ケンタウリ」に行くには

太陽までロケットで行くことは無理ですし、行けたとしても、重力に引っ張られて帰れないか、焼け焦げてしまうでしょうから、帰ってくることができませんので、あまりイメージは沸かないのですが、隣の恒星までの旅なら、頭の中でイメージできます。(現在、アメリカが太陽に向かって探査機を飛ばしていますが、もちろん、太陽の直近まで行くのと同じで、恒星への旅行は無理なのですが・・・)

ここでは、隣の恒星について、イメージで考えてみましょう。

太陽系に最も近い恒星は「プロキシマ・ケンタウリ」で、南十字星の近くのケンタウルス座にあり、日本から見ることは出来ませんが、4.25光年のところにある恒星です。

光が毎秒30万km進んで4年以上もかかるのですから、人類最速のボイジャーが20km/秒で進んでも、300000÷20=15000で、光の15000倍もかかるので、6万年以上もかかります。

SFなどで出てくる「ワープ」などの特殊なものがなければ、有人飛行は考えられませんし、もちろん、太陽と同じように「燃えている」のですから、近くには行けないのですが、計算をやって現実と対比させると、親密さとともにいろんなイメージが膨らんできませんか?

4.25光年の測定はどのようにする?

現在の天文学では、「プロキシマのように近い星は比較的簡単に距離がわかる」といいます。

上の図のように、3角形を考えて、近い星を半年間観測して、地球の公転半径と年周視差で三角形から、ピタゴラスの定理を用いて計算すればいいのですが、現在では「±0.01光年の誤差でプロキシマまでの距離4.25光年は正しい」という表現になっています。

しかし、「誤差0.01光年」というのは 光速30万km/秒 から計算して、kmに換算すると300000(km/h)x60(秒)x60(分)x24(時間)x365(日)x0.01=94,608,000,000kmにもなって、地球の直径をおよそ13000kmとすると、地球約700万個以上を並べた距離の誤差があるのですが、これはいわゆる数字の持つ魔術です。

「±0.01光年の誤差で・・・」といわれるのと、地球700万個の誤差といわれるのでは、まったく感じ方が違ってきます。 これは「数」の持つ不思議さですが、私は、むしろ、この距離が角度の測定から求められていることに驚いています。

星までの距離を測る

これは、中学校のときに習った「高い木の高さ」を測る方法と同じ方法を用いて、星までの距離が測定されているのですが、(概数計算ですが)上図で地球の公転距離が3億km、星までの距離が4.25光年≒40兆km とすると、それを割ると 0.0000075 になります。この値は tan(タンジェント)と習いましたが、例えば角度が1度のタンジェントの値は0.175程度の値ですので、0.0000075は、1度の1/4000の値を測定していることになり、その測定値の0.0000075が0.0000074になっただけでも、5400万kmの違いが出るので、それで地球の4000個分以上の誤差になるというのですから、この数字が、測定されている事自体が「すごい」としか言いようがありません。

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このように、桁数の多い、ものすごい大きな数字を「天文学的」と表現されるのですが、このあたりまで来ると、数字が示されても、実感がわかないのですが、それでも、数字を見るか見ないのでは感じ方が違うと思いませんか。

冬の星座オリオン座周辺 オリオン座と冬の大三角

近年、このオリオン座の左上の「ペテルギウス」が減光しているので、「消滅寸前ではないか・・・」というニュースがありましたが、このペテルギウスまでの距離は、約640光年といいますので、640年前の光がいま地球に届いているということです。

だから、ひょっとすると、すでに消えてしまっているかもしれないのですが、そんな遠くの光が届くのがすごいと思うとともに、宇宙には光を遮るものがほとんどない・・・ということにも驚きます。

 

宇宙の大きさ138億光年は何Kmだと計算しているうちに

さらにさらに宇宙は遥かに大きくて、138億光年もの距離があるといいます。数年前には137億光年という数字と聞いていました。

数年で1億光年も宇宙が大きくなったのではなく、測定結果で大きくなったのですが、50年前には宇宙の大きさは100億光年以下と学んだように記憶しています。

138億光年をkmにすると、光速30万km/sx60(=分)x60(=時間)x24(=日)x365(=年)x138億ですので、数字で書くと、1,305,590,400,000,000億kmというようになりますが、このような大きな数字も、関数電卓を使うと計算出来ます。

1.3…e23 というような表示になるかもしれませんが、これは、1のあとに0が23個も付く数字ですが、この数字を電卓に入力しているのに1分間かかったとすると、その間に、光は30万x60(秒)=180000000kmも進んでいることになります。

このように、宇宙(自然)を数字でみてみると、その凄さを感じるのですが、先ほどの角度測定などの観測数字もすごいものです。

今、宇宙物理学の研究者は、ビッグバンのときに生じたとされる「重力波」を見つけることに躍起となっていて、その計測には、0.000000000001m、つまり「ピコメートル単位」の測定精度が必要と見積もられています。(ちなみに、水の分子の大きさが300ピコメートル程度なので、もっともっと小さな測定が必要ということのようです)

そして、現状では、それに近い精度で測定が可能だというのですから、これもすごいですね。

このように、宇宙に関係する数字はいろいろあるのですが、それらはスマホに入っている関数電卓アプリで計算できますので、ざひ、時間があるときに遊んでみてください。きっと、自分の宇宙が頭の中に広がっていくでしょう。


(来歴)R2.10記事作成 R3.9題名変更 R3.12kyori1と合わせて全面書き直し 最終R5.9月に誤字脱字を含めて見直し。