近年、WEBで注文して宅配でやり取りする新しい形態のクリーニングが出来てきましたが、日本政策金融公庫や厚生労働省の資料によると、クリーニング店舗あたりの利用状態やユーザーがクリーニングにかける費用は下降しているようで、私の家族の例でも、明らかにクリーニングに出す頻度が減っています。
その状況を、統計数字を合わせて見ていきましょう。
2014年版などの資料と、少し古いですが、本来、統計がでてくるのは遅れますし、その傾向自体は変わらないでしょうから、この資料をもとに、4ページに分けて、クリーニングの実態を見ていきます。字数が多いので、PCで読んでいただくのがいいでしょう。
- クリーニング店は苦戦中(このページ)
- お客さんから見たクリーニングは?
- 新しいサービスの模索と客数の確保
- これからのクリーニングは?
クリーニング店は苦戦中・・・
クリーニング店と取次所を見ると・・・
クリーニング業法では、クリーニング関係の業態は
クリーニング所
取次店
無店舗取次店
リネンサプライ業
ホールセール
に分類されています。
クリーニング所は洗濯設備があるところで、取次店は洗濯設備がないところをいいます。
意外と目につく「コインランドリー」は、クリーニング業法には該当していない ので、ここに含まれません。
また、WEBのクリーニング宅配についても、この統計では、曖昧な表現になっていて、分類にないようですので、この、コインランドリーとWEB宅配クリーニングは、今回は内容には含めていません。
まずここでは、メインの、クリーニング所と取次店を対象に、クリーニング店の実態を見ていきましょう。
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クリーニング店・取次店の店舗数は減っています
私自身は普段は、「フランチャイズに加盟している取次店」を利用しています。
私の場合ですが、近年は、クリーニング店に行く間隔は長くなっていて、平均すると、5年前は2-3ヶ月おきで5~6回の利用だったのが、年に2-3回程度になっていて、利用回数は確実に減っています。
統計でも、店舗数では、平成10年ごろがクリーニング店総数のピークで、その後この約20年間で30%減少しているのですから、誰もが、クリーニングに出さなくなっている・・・という傾向はあるようです。
現在(この統計時から、さらに、若干減少しているでしょうが)、クリーニング所は約3.5万店、取次店は9.5万店程度あり、減少傾向とは言うものの、まだまだクリーニングは生活に必需のサービスに変わりはありません。
新業態の台頭の予感
統計の中でも顔を出してきているように、これから増えるであろうと思われるクリーニングの業務形態として、店舗を持たずに車両で集配する「無店舗取扱所」の増加 が目を引きます。(私は、ネット宅配の状態を調べたかったのですが、この統計では、集計結果に現れていませんでした)
無店舗取り扱い店の届け出義務ができた平成17年時点で、そのときには263施設だったものが、その後の5年間で1.5倍(5割増し)になっています。
もちろん、ネット宅配クリーニングの一部も、この「無店舗取り扱い」にあたる店舗(業者)がありますし、そうでない、通常に分類される店舗(業者)もあります。 次の統計が出る頃には、「無店舗」の中での分類数は、さらに増えていくとおもわれます。
一般的には、クリーニング店やクリーニング会社は、自社・自店のクリーニング工場を持っているところをいいますが、この無店舗の増加傾向を考えると、今後はWEBと既存店(クリーニング店も取次店も)が融合するなどの新しい仕組みが生まれてくる可能性も高いと考えられます。
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WEBの記事を検索して、WEBで注文して、宅配などで受け渡しする業態の内容を詳しく読んでいくと、
①注文業務を行っている会社が必ずしも工場を持っていない
②同じ工場に数社がWEBで注文を取り次いでいる
・・・というような事実が見受けられます。
つまり、仕事を自社で受けて、他社のクリーニング工場に外注するというもので、これらも、新しい業態として、WEBを利用した展開をしており、この傾向は増加する可能性が高いでしょう。
クリーニングを依頼する側(私のような顧客)は、「早く、確かに、安く」クリーニングしてもらえばいいだけなので、工場を持っているかいないかは重要ではありません。
それもあってか、実店舗の内容をみると、取次カウンターの横でコインランドリーやその他の商品の販売スペースを併設する取次店も目立ってきています。これは後で紹介します。
コンビニや他店舗との融合など、このように他の業務を併設する傾向は、これからも増えてくることは確実です。
「クリーニングに出すこと」はまだまだ各家庭では必要なもののようですから・・・。
ほとんどが小規模店です
クリーニング店の実態を見ていきましょう。
【規模】クリーニング店(クリーニング所+取次店)の規模は、個人規模のところが60%で、そのうち従業員4人以下が50%と零細規模が多く、売上高は毎年5%程度減少している状況・・・と、商売としては、しんどい状況が見えます。
もちろん、全体の売上高なので、1店舗がやっていけなくなると、店舗数の減少として、数字的に捉えられますが、いずれにしても、大変な状況です。
【単価の推移】過去20年間のクリーニング料金単価は(品物によりますが)平均して10%以下の上昇しかしていない状況で、これもあって、約4割が赤字状態です。
また、仕事の実態もきついようで、毎月の休みの平均が2.4日で、50%の店が休みなしといいます。
【就業時間】さらにその多くは10~11時間以上の長時間労働時間という数字が出ており、11時間以上が5割を超えています。
この状態をみると、平成10年ごろに多くの取次店ができたころは、経営数字はよかったのかもしれませんが、今は、「しんどい」ところが多い状況・・・と読み取れます。
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扱いや来客数は立地によって開きがあります
クリーニング所(自社で洗濯業務をしている)の受注取扱状態は、持ち込み22%、取次経由13%、外交65%となっており、1日の平均来客数は18.5人、1日あたりの依頼数は商業住宅地で290点と言う数字が読み取れます。
もちろん、工場隣接店などで、大量の洗濯物を扱うところでは、1日約5000点・・・などの扱い量は普通ですので、地域性や店舗間格差が出ている と見ると、売り上げや利益についても、店舗差が大きいことは想像できます。
そのために今後は、設備を持ったクリーニング店の技術力を活かして、外交で洗濯物を集めたり、集荷業者が流通に加わって、品物(洗濯物)を集める・・・というスタイルに動くのは充分に考えられるところから、無店舗取扱所が増えているというのは、こういう隙間を利用して、新しく、WEBなどで営業拡販していること・・・などもあるのかもしれません。
取次店の状況を見てみると、89%が専業で、取次店の4割が10年未満の経営歴です。
会社組織でない場合は、従業員平均2名以下で、平均労働時間は10.3時間となっています。
私の通うお店も、これに合致するお店で、大手のフランチャイズ店ですが、女性従業員が1人で応対していますし、その従業員はパートタイマーで、時間によって人は変わり、常時、店舗業務は1人で対応されています。
フランチャイズに入っている店の割合は、会社個人ともに44%程度で、1日平均来客数は28.4人、取り扱い品の98%は持ち込み品で、客1人あたりで5点程度を依頼しているという数字が出ています。
今後はどうなっていくのでしょう
つまり、今の状態が続くと家族経営などの小規模のクリーニング店・取次店のさらなる減少が予想されます。
設備のあるクリーニング店は、無店舗取次などと提携して、仕事を特化するなどの道が残っているものの、その場合でも、世代交代の難しさで、取次店の減少は必至です。
こうなっていくと、みんな(私達のような顧客)にとっても不便になるのですが、店舗としても生き残るために何かを考えないといけないことなので、クーポン、外交(御用聞き)、特殊仕上げ加工・・・などの新サービスや付加サービス、保管サービス(これは、今までの店舗では、嫌がられていたもの)などといった、今までとは違ったサービスを展開する動きは、当然あります。
しかし、フランチャイズの加盟店であると、会社方針や契約内容にも関係するので、既存の小規模店の改革は、簡単には進まない可能性もありますから、問題は少なくないようです。
しかし、本部の指示や方針や、WEBでの展開なども加わって、複雑化してくるのは予想できることです。
特殊品は、家庭で洗うのは無理
クリーニング技術は特殊な技術ですから、身近な店舗がなくなると困ります。頑張ってほしいものです。
ネットを利用して品物を受け渡しするクリーニングサービスについては、WEBに強い若年層と出不精になりがちな高齢者層などターゲットにしてサービスを展開するという方向ですが、WEBに疎い高齢者層にはとっつきにくいことは否めませんし、価格のわかりにくさや、価格面でも「安くない点」や、さらには、トラブルを起こさないように、受け渡し時の検品などの問題もあって、多様化と差別化が進むことは間違いないでしょうから、近くにあるクリーニング店や取次店には、お世話にならざるを得ません。
次のページからは、具体的数字を見ていきます。
(来歴)R5年9月に見直し R6.7月に確認