鉄(鉄鋼)は、世界でもっとも多く使われていて、もっとも私たちが恩恵を受けているすごい金属ですが、その凄さを軽視していませんか?
ここでは、知っておきたい「鉄の知識」を再確認しましょう。
鉄Feは、密度が7.8g/cm3程度です。10cm角(10x10x10cm)で約8kgもあります。
よく「軽さ」で引き合いに出されるフライパンですが、ほとんどの家庭では、アルミ製のフライパンを使うようになりました。
アルミの密度は2.7g/cm3程度と、鉄の1/3程度なので、軽さとテフロンコーティングの使いやすさで選ばれていますが、「1年程度でだめになる」と愚痴ってはいませんか?
都市ガスの直火の温度は900℃以上で、アルミの融点は、(成分によりますが)700℃程度、テフロンの耐熱温度は、300~350℃です。
また、(単位は置いておいて)鉄の熱膨張率は11~12に対し、アルミは24程度、テフロンは100程度です。 だから、加熱温度や急熱急冷に気をつけないと、当然、「そんな程度の寿命」になるのは見えています。
このように、鉄を含めて、材料の本質を見ていくと、いろいろなことが見えてくるのですが、ここでは、鉄に関する基礎的な知識を、もう一度のぞいてみましょう。
鉄と鉄鋼の違いは何なのか、知っていますか?
鉄(Iron)は「元素Fe」のことです。
それに対して、鋼(はがね)は「炭素Cとの合金」をいいます。
鋼は、鉄鋼(Steel)という言い方をされることも多いのですが、「鉄鋼」は、「鉄と鋼と鋳鉄(Cast iron)」の総称を示す言葉です。
この、鉄・鋼・鋳物は、鉄合金中の炭素Cの量で分類されています。(鋼鉄という言葉もありますが、これは「鋼」と同じ意味合いです)
ここまではいいでしょうか。
鉄は炭素Cを含まない「Feそのもの」で「純鉄」という言い方もあります。
鋳物は、「炭素Cとの合金」のなかで、約2%以上の炭素量のものをいい、鋼(はがね)は、その間のものをいいます。 つまり、純鉄と鋳物でない、「鉄と炭素の合金」を鋼(はがね)といいます。
また、超高純度のFe を作るのは難しいので、Feが99.98%程度以上の純度のものは、「純鉄(Pure iron)」と呼んでいます。磁石などに使われていますね。
先ほどでてきた「鉄製のフライパン」も、厳密には「鉄」では膜、鋼(はがね)に分類されるものです。
この鋼に、さらに、その他のクロムやニッケルなどの元素を加えて「合金」にした、いろいろな「鉄鋼種(鋼種)」が製造されており、その炭素量やその他の合金量を変えることで、大きく特性が変化するので、特性を活かした様々な用途の鉄鋼製品が作られています。
さらに、熱処理をすることで、加工しやすいように軟らかくしたり、工具に使うために、硬くて強くするなど、非常に大きな機械的な性質が変化できるので、鋼は、非常に広い用途で使われています。
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重金属・軽金属は鉄を基準にして分けるのがわかりやすい
一般的に重金属・軽金属の分類基準は、比重(または密度)で4~5 を基準にしています。
しかし、実在の主要金属の「鉄」を基準にするとわかりやすいので、この鉄の比重7.8の鉄以上の比重の金属を「重金属」、軽いものを「軽金属」という分け方をすることが多くなっています。
( )内は比重で、重金属では、金(19.3)、タングステン(19.3)、銀(10.5)、水銀(13.5)、鉛(11.3)、モリブデン(9.0)、銅(8.9)、コバルト(8.9)、ニッケル(8.8)、鉄(7.9)が、また、軽金属では、マグネシウム(1.7)、アルミニューム(2.7)があります。
そして、境界域にある チタン(4.5)は、鉄を基準にした軽金属にすれば、「重いか軽い」がイメージしやすくなります。

10㎜角の金属のキューブが販売されています。高価なものもあるのですが大人の趣味にどうでしょう
最も多目的に使われる金属は鋼(はがね)です
地球に目を向けると、地殻(地球の表面を覆う硬い層)を構成する元素の中で、「鉄」は、酸素、ケイ素、アルミニウムに次いで多い元素です。
ただ、鉄は他の元素と化合しやすく、金属単体で存在するものはほとんどありません。
それを鋼(はがね=鉄と炭素などの合金=Steel)にすることで無限の使い道が生まれます。
さらに鋼は、炭素の量だけでなく、その他の金属の合金化によって、いろいろな性質を持つようになります。
例えば、鋼は「焼入れして硬くなる」「焼きなましをして機械加工ができる」というように、熱処理によって機械的な性質を大きく変えることができることも大きな特徴です。
また、耐食性容器や低温容器に使われるステンレス鋼(オーステナイト系ステンレス鋼)は、ニッケルNiやクロムCrを加えることで、耐食性や低温特性を高めています。
このように、世界中で様々な金属が使用されていますが、その使用されている金属の90%以上が鉄合金ですから、「鉄」は地球上では最も重要で有用な金属だといえます。
知っておいて無駄にならない程度の鉄の雑学
鉄鋼は鉄Feと炭素Cの合金で、炭素量が増すにつれて「強さ(硬さ)」を高くすることができますす。
つまり、鋼の中に溶け込んだ炭素量によって、「焼入れ」で硬化し、厚い鋼板や各種の金属を切断できる「刃物」などの工具用材料になります。
ただ、「炭素C」量は、常温での強さを出すためには最重要ですが、超低温や500℃以上の高温では、逆に、炭素量が少ないほうがいいという、面白い性質があります。
つまり、鉄鋼中の炭素量が低いほど、鋼の低温特性や耐食・耐酸化性、耐熱性が高まりますから、低温で使われるステンレス鋼は、低炭素のほうが低温特性が良くなりますし、耐熱鋼も低炭素鋼です。
また、炭素量が0.01%以下になると、「フェライト磁石」などに用いられるように、非常に高い強磁性を示します。
しかし、同じ極低炭素でも、ニッケルNiやクロムCrなどが入った「オーステナイト系のステンレス鋼」は常磁性で、磁石にはつきません。

砂鉄
これは砂鉄 が磁石に引き寄せられている写真です。
近年はほとんどが舗装されていて、「地表の土」を見る機会が減りましたが、永久磁石を、舗装していない道路上でひきまわすと、この写真のような砂鉄がとれたものです。
この写真の砂鉄も純鉄ではなく、鉄鋼の粉であったり、酸化したり、合金または化合物の状態なので、Fe単体では存在しない … という特殊なものですが、鉄は、このように、形を変えて、地球上に、広く広がっている状態になっています。
砂鉄といえば「使い捨てカイロ」という人が増えました
使い捨てカイロの主成分は鉄と活性炭 … ということを知っている人は多いでしょう。
上の写真のような鉄粉(ただし、酸化していない鉄粉でないとダメ)に、保湿剤として、食塩水に浸した活性炭やバーミキュライトを混ぜると使い捨てカイロができます。
使い捨てカイロは、鉄が水酸化鉄になるときの発熱反応を利用しています。
粉末にすると、全表面積が非常に大きくなるので、酸化する際の熱も強大になりますから、それを一定温度にコントロールするように、混ぜ物をして、使い捨てカイロが作られています。
製鉄と製鋼
「鉄」は鉄鉱石とコークスを溶鉱炉に入れてつくられていることは、ほとんどの人が知っていますが、「鉄」とは元素Feのことですから、製鉄所は、鉄を作っているのではなく、「鋼(はがね)」を作っているというのが適切です。
また、「製鉄業」とは、鉄鋼を作るための素材(銑鉄や鉄合金など)に関係する業種をいい、それに対して、「製鋼業」はその素材から鉄鋼や鉄鋼製品素材を作る業種です。
しかし、例えば、最大手の製鉄所(日本製鉄やJFEなど)では、製鉄、製鋼だけではなく金属加工製品までも製造販売をしていますから、総合的な鉄鋼製品の製造販売業といえますね。
鉄鉱石

鉄鉱石の露天掘り
製鉄に使われる鉄鉱石は、鉄分の含有量が多い鉱石でないと生産効率が悪くなります。
鉄鋼の原料になるのは赤鉄鉱、磁鉄鉱と呼ばれる種類の石で、それを採掘して、採算を取ろうとすると、写真のような露天掘りができる場所が費用的に有利です。
現状では、オーストラリア(20%)、ブラジル(22%)、中国(17%)、インド(11%)、ロシア(7%)などで、世界の8割近くの鉄鉱石を産出しています。
オーストラリアやブラジルの鉱石は、50%以上の鉄分を含む良質のものですが、鉄鋼生産量が急増した中国の鉄鉱石は、純度が30%程度しか鉄分を含んでいない低品質ですが、それでも、中国はよく頑張って鉄鋼製品を製造しているといえますね。

JFE倉敷高炉(JFEのHPから)
かつて日本は世界一の粗鋼生産量でしたが、現在は、溶鉱炉(高炉)を保有しているのは、日本製鐵、JFE-HD、神戸製鋼所、日新製鋼の4社で、粗鋼生産量は微減傾向ですが、鉄鋼世界一の頃とそんなに変わらないのですが、利益を上げるために、高品質化や高級鋼にシフトさせて健闘しています。
鉄鋼製品は大根より安い?
少し荒っぽい計算になりますが、高炉で作られる銑鉄1kgを製造するためには、鉄鉱石が1.5kgと石炭が500g必要で、そこから得られる鉄鋼鋼材は900g程度になります。
鋼材の販売価格は相場で変動しますし、近年は上昇傾向ですが、1kg100円台(普通鋼材)と非常に安価です。
それには原材料費などが半分程度かかっているのですが、安価な価格から、しばしば「鉄鋼は大根より安い」と比喩されます。
鉄鋼はいろんな技術が凝縮されていることを知れば安すぎる感がありますが、世界競争ですので、鉄鋼関連業従事者の皆さんの努力には感謝感謝です。
もちろん、中国の急な減産や地域紛争のために、鉄鋼価格が急上昇するのも困りものですが、鉄鋼製品は世界の繁栄を支えていますので、感謝しつつ動向にも気にかけておきたいものです。
鋼の性質を左右する製鋼技術と熱処理
工具や機械部品の性能を活かすための「熱処理」は非常に重要で、硬く強くする「焼入れ」や軟らかくする「焼なまし」の他に、耐食性、耐熱、耐薬品性を高める「溶体化処理」などの鉄鋼の熱処理法があります。

焼入れ作業:第一鋼業(株)さんのHPから
優れた特性を持つ鋼を製造する「製鋼技術」も進歩しています。
強くてねばい鋼になるのを阻害する元素(リン、硫黄、銅などの不純物や介在物や酸素など)を排除するために、真空脱ガス技術などを含めた製鋼技術もあって、近年では、通常に販売されている鋼も、非常に不純物の少ない(清浄度の高い)高品質な鋼になっています。
そのためには鉄スクラップのリサイクルが欠かせません
昭和年代の古い話ですが、鉄鋼にあまり詳しくない人の中には、「日本の鉄はスクラップを混ぜて作っているので品質が良くない」という人がいました。(今でもおられるかもしれません)
これはとんでもない間違いです。
リサイクルされた「鉄スクラップ」があって初めて、最高品質の「鋼」が作り出されているのです。
日本国内には「製鉄4社」のほかに「電炉メーカー」と呼ばれる製鋼メーカーで鉄鋼製品(素材)が製造されていますが、いずれも、鉄スクラップがないと、良質な鉄鋼製品は生まれませんから、鉄スクラップ業者さんの役割も大変重要なのです。
鉄のリサイクル率は70%程度
ちなみに、鉄のリサイクル率を見ますと、スチール缶では90%近くなっています。そかし、その他を含めると鉄のリサイクル率は70%強程度という数字です。
放おっておくと、鉄は錆びて散逸するので、この数字を高めるのは至難ですが、年々、向上する傾向にあります。
もちろん、鉄スクラップも需要と供給によって相場が形成されており、ちょっとした国際景気動向にも左右されるのですが、資源の少ない日本は特に、リサイクル率を高める努力は忘れてはいけないでしょう。
人体の組成におけるFe
もちろん、人間の身体にはFeは大切な元素で、Wikipediaによると、70kgの人に含まれる鉄は「6g」… とあります。
血液中のヘモグロビンには、その2/3が含まれていて、鉄分は生命維持には不可欠なものです。 →「鉄」のサプリメント
このような雑学と言える鉄の知識ですが、最近は、貴金属の高騰の話題がクローズアップされることが多いのですが、この「鉄」が世界を支えていることをアタマにおいておくことを忘れないようにしましょう。
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(来歴)R5.2月に誤字脱字を含めて見直し。 R8.9月に確認

