古代から利用されている「銅」 (p6)

スポンサーリンク

【日本での銅の採掘】

銅は「自然銅」として産出されます。

「足尾銅山(栃木県日光市)」「別子銅山(愛媛県新居浜市)」などの名前をご存知と思いますが、日本の銅山(銅鉱山)には公害・鉱毒の問題もたくさんあることも記憶しておかないとなりません。

これらの鉱山は、海外のように露天掘りではなく、坑道奥深くから採掘するために採算性が悪く、現在はすべて操業していません。

足尾銅山跡 鎌倉大仏

【世界の採掘量】

2015年の統計では、チリ576万トン、中国171万トン、以下、ペルー、米国と続き、毎年約1600万トンが採掘されており、需要が多いこともあって、採掘量は増加傾向にあります。

古代には「自然銅」として銅色をした金属状態で採れるものを溶融して銅塊にしていましたが、現在は、銅を含む鉱石から精錬して作ります。

鉱石に含まれる銅は1%以下程度ですが、種類に応じて選鉱、分離、溶解抽出、溶融、還元などの方法で純度を高めたものを作り、さらに電解精錬によって「電気銅」が精錬されます。

【電気銅・タフピッチ銅・リン脱酸銅・無酸素銅】

電解精錬してできた電気銅は電解液などが残っているので、一般には、それを溶解して銅塊にしたものを「電気銅」といいます。

電気銅には若干の不純物(0.05%以下)を含むので、酸化雰囲気で加熱して除去しますが、その時に酸素や水素を取り込んでしまうので、松の木を用いて脱酸します。

この時、銅鋳型に鋳造する用途で完全に脱酸しないものを「タフピッチ銅」といい、電線などの高級品以外の展伸材として普通の用途に使用されます。

電線には「無酸素銅(OFC)」が使用されます。

無酸素銅は高真空中で加熱して酸素を除去しますが、JISでは2種類が規定されており、99.96%以上の純度のC1020(1種)と99.99%以上の純度のC1011(2種)があり、1種のうちのクラス1と呼ばれるものは高級品です。

高純度のほうが低水素脆性、深絞り性などに優れています。

電気銅の価格は810円/kg程度(2017年11月)で、鉄鋼の熱延鋼板が80円/kg程度ですので、「銅は鋼の約10倍程度の価格」というイメージです。

銅製品としては、電気銅、無酸素銅のほかに曲げ性、溶接性などに優れたリン脱酸銅があります。

貴金属と銅

電気銅を作る際に電解精錬すると陰極に純度の高い電気銅が析出しますが、陽極の粗銅の下部に「陽極泥(ようきょくでい)」としてイオン化傾向の低い金属が沈殿します。

そこから金、銀などが回収されています。

銅塊1トンから金が30g、銀が1kg程度回収できるというのですから、すごいですね。

電気銅1トン(800円x1000kg=80万円)を作るときに、13.5万円の金(4500円/g(金の価格)x30g=13.5万円)が入っているということです。

さらに、6万円(60円(銀の価格)x1000g=6万円)のシルバーが入っているのですから、実に同価格の1/4が貴金属ということはすごいものです。

【銅合金】

北イラクで紀元前8800年ごろの自然銅で作られたとみられる小さな玉が発見されています。

また、紀元前より青銅や真鍮などの合金が用いられています。

日本でも青銅器が古くから用いられていたようですし、奈良の大仏の母体も銅500トンと錫(すず)8トンの合金で作られています。

奈良の大仏(752年開眼)は分割して鋳造したために成分は各部で違うようで、約90%が銅で残りが錫と鉛の合金のようですが、写真の鎌倉の大仏(1260年ごろ?)は、約70%の銅と約10%の錫、20%の鉛とされており、奈良の大仏のヒ素の量が高いという特徴があります。

時代の違いで精銅の技術差が出ているということでしょうか。

周期表

またまた周期表を示します。

原子番号29の銅の周りに様々な金属があります。

周りの金属はよく似た性格があるので、これらの金属と合金にすれば、何か違った性質(加工性、強さ、色の違いなど)が出るということは想像できますね。

【鋳造のための合金化】

その中でも、合金にすれば融点が下がることは昔から知られていたのでしょう。

銅の融点は約1085℃ですが、例えばニッケルとの合金(白銅など)では、ニッケルの融点が1455℃程度に対して白銅の融点は1220℃程度となって、ニッケル単体に比べて融点が大きく下がっています。

真鍮(黄銅)は亜鉛(融点420℃程度)との合金で、合金にするとその融点は800℃程度になります。

また、古くから使われていた青銅はスズ(融点は約232℃)などの合金でその融点は900℃以下です。

つまり、この「融点が下がる」ことによって、青銅にすれば炭などで空気を送って加熱すれば融解温度が得られることがわかっていたので、大きな大仏が鋳造できた・・・ということが理解できます。

梵鐘 日本の硬貨

比叡山延暦寺で

30年ぶりに比叡山延暦寺に行って鐘をつきました。ひとつき50円也でした。

(1)青銅(せいどう)

銅(Cu)+スズ(Sn) ブロンズ像など彫刻の材料に使われます。

錆びると、上の大仏や鐘のような緑色が出ますが、もとは黄色い感じで、下の砲金に近い色です。

このさびは「緑青(ろくしょう)」といい、かつては教科書にも、これは「毒」だと書かれていましたし、そう覚えているのですが、現在では厚労省も「緑青は無害」としています

むしろこの緑青は不働態のように働き、腐食の進行を防いだり、殺菌性があるとされています。

(2)砲金(ほうきん)

銅(Cu 90%程度)+スズ(Sn10%程度)の合金で、英語名は「ガンメタル」。

古くは砲身の材料などに使われていましたが、現在は耐食性や耐摩耗性に優れるので、メタル軸受けなど、回転する鋼製品などに接触する部分に使用することで、摩擦に耐える部品として使われています。

(3)リン青銅

銅に錫が3~9%、リン(P)が0.3%程度を加えることで「ばね性」がでます。

そのため、りん青銅は、伝導性の接点(リレーの接点)などの電気機器材料に使われます。

(4)アルミニウム青銅

銅にアルミニウム、鉄、ニッケル、マンガンなどを入れた合金で、耐食、耐摩耗に優れるうえに強度があるので、車両や船舶の部品に使われます。

黄金色で延性があるので、金箔の代わりに使われるという用途もあります。

(5)真鍮(しんちゅう)

黄銅(おうどう)・Brass(ブラス)とも呼ばれる、銅と亜鉛(Zn)の合金です。

一般的にはZn35%程度のものが多く、6・4黄銅(ろくよんおうどう:Zn40%)や7・3黄銅(しちさんおうどう:Zn30%)などと呼ばれるものも多く使用されています。

真鍮には、伸銅品と鋳物があり、亜鉛の割合が増えると赤みが消えていきます。

亜鉛量を多くしていくと、融点が下がり、硬さが上昇するという性質があります。

真鍮は、金管楽器や仏具などでおなじみの合金でしょう。

(6)白銅

キュプロニッケルやニッケル白銅とも呼ばれます。

銅、ニッケル、鉄、マンガン、亜鉛などの合金で、銅75%+ニッケル(Ni)25%程度のものは、100円・50円硬貨に使われています。

耐海水性や高温強度があるので、熱交換機用のパイプなどに加工されて使われます。

(7)洋白(ようはく)

銅、ニッケル、亜鉛の合金で、白銅に比べて柔らかく、白っぽい楽器のフルートの多くはこの材料で作られます。

ばね性があるので、導電性の板バネやリレーなどにも多くが使用されます。

(8)赤銅(しゃくどう)

銅に3-5%の金(Au)を加えた合金で、象嵌細工(ぞうがんざいく)などに使われます。

象嵌は木や陶器、その他の金属にはめ込む工芸技法ですが、シルクロードを伝って飛鳥時代に日本に伝わったものと言われています。

銅の真髄

銅の融点は約1085℃、比重は約9で、持った感じでは、鉄(鉄鋼)約8より、少し重く感じるのは、比重と赤い色のせいでしょうか?

銅製のビヤカップは手や口元に触れた冷たさが心地よいのですが、銅は銀(Ag)に次ぐ「熱と電気の良導体」が特筆できる点です。

熱については単位断面積当たりどのくらいの熱量が移動するのかを示す「熱伝導率」という数字で示されます。

また、電気の通しやすさに電気抵抗率があります。

これも、単位断面積当たりの抵抗値です。下は食器などに使われるステンレス鋼(SUS304)と比較した値を指標で表してみました。数字はアバウトですが、感じをつかみやすく知るためのものです。1を基準とした倍数を表示しています。

金属比較

銅線

銀、アルミニウム、銅は、熱や電気を通しやすい金属ですが、銀は貴金属であることから価格的に銅の優位さが際立っています。

ただ、電気導線には「銅」が基本でしたが、最近は高圧電線のほとんどが鋼芯アルミ線が使われています。

アルミ線の導電性は銅に比べると6割程度ですが、強さは2倍で価格が1/3で、1/3の軽さであれば、電線が銅からアルミ製に代わっていたのにはうなづけます。

ただ、この比較は純金属のものですので、実際には合金化などでいろいろな特徴が加わりますので、これは1つの見かたであると考えてください。

物質としての銅の話題として、高温超電導体は銅の酸化物を基本として研究されているようで、とくに、「銅酸化物高温超電導体の研究」と呼ばれます。

超電導のポイントは、比較的安価な「液体窒素」温度(-196℃:77K)で超電導現象(電気抵抗がなくなる現象)を起こす物質を見つけることですが、1986年にこの現象が発見されて以来、様々な合金の検討が行われていて、2005年に166Kの物質が発見されています。

しかし、銅合金の高温超電導体の中には、電気抵抗が0にならないなどと、不確かなところもあるようで、現状では90K~133Kを超えたあたりで、銅酸化物系高温超電導体の研究過程では大きな壁にぶつかっている状態だといいます。

人間と銅のかかわり

人間には銅イオンは必須元素で、体重70kgの人では80mgの銅が脳、腎臓、肝臓、血液、胆汁に多く含まれています。このために、1日1mg程度を摂取する必要があるようです。

銅は、干しエビ、ココア、レバー、カシューナッツ、ホタルイカなどに多く含まれ、動脈硬化や心筋梗塞の予防に効果があるとされます。

それが欠乏すると、貧血、血管や骨の異常、脳障害を起こし、逆に過剰になれば、肝硬変や運動障害、知覚神経障害を引き起こすことがあるとされています。

タンパク質の構成元素ということもあるので、魚介類を多くとるようにすればよい・・・という感じでしょうか。

上記に「緑青(ろくしょう)は無害」と書きましたが、銅には殺菌性があります。

銀にも殺菌作用があり制汗剤などに使われています。
これは体温近くの効果が大きいためで、常温では銅のほうがいいようです。

O-157やウイルスなどや菌を不活性化や殺菌するのですが、「接触面」で効果があるようです。

これは「イオン化」が関係しており、乾いていても身体の微量の汗でイオン化するために殺菌効果が確認されています。

余談ですが、生け花の花瓶に10円玉を入れると花が長持ちするといいます。

しかし、私が行った実験では、その効果は微々たるもので、毎日水道水の水を変えるほうが確実に長持ちします。

水道水の塩素のほうが効果的だという結果ですが、実は、水道水の殺菌効果は非常に優れていて、それで、私達の健康が守られているのですが、花屋さんでも高価な「銅の花桶」を使っているところは、イメージから来る新鮮さをアピールしているのでしょう。

10円玉をたくさん入れて花をいけるといい・・・というのも、やったことのない人の「とんでも科学」で、銅の殺菌力が花の腐敗を押さえるほどではありませんので、毎日水を変えるに越したことはありません。

(私は、10年間花屋を営んでいて、これは、実験に基づく事実です)

→ 次のページ「シリコン」へ

スポンサーリンク