日本の理化学研究所のチームが新しい原子「ニホニウム」を合成して作ったという嬉しい話題がありました。この新元素の原子番号は113で、それまでは仮の名前として「ウンウントリウム」と呼ばれていたものですが、その存在が確認されてニホニウムと命名されました。
これを作る過程では、「原子番号83のビスマスに原子番号30の亜鉛イオンをイオン加速器でぶち当てると、原子番号113の物質になる」という理屈からのようですが、ものすごいエネルギー(力とやる気)が必要になります。
こう言ってしまうと簡単に聞こえますが、ニホニウムの原子量は286ですので、まず原子量278の物質を合成して原子量278の同位体のニホニウムを作り、それが核分裂(アルファ崩壊)して原子番号105(ドブニウム)になる現象を3回観測したので2016年11月その存在が認められた・・・ということのようです。
ニホニウムには中性子数が違う同位体が6種あって278ニホニウムの確認から286ニホニウムが確定した・・・というように、「ハイできました」という簡単なものではないようです。
これは化学分野の最先端の話ですが、新聞などの話題には「リチウム水素電池」「レアアース」「マンガン団塊」「カドミウム汚染」・・・など、元素にまつわるものが多いので、ちょっと元素に関する話題を集めてみようと思いました。
もちろん専門的なものではなく、私が疑問に感じたことやいろいろな用途に使われるあまり耳にしたことのない元素の話題を中心に紹介しようと思います。
元素を知るための用語
水は(誰もが習ったのですが)水素と酸素という元素からできており、「水の分子」という状態で存在しているのですが、これらの最低限必要な科学用語について簡単におさらいしましょう。
周期表
これは周期表の例で、この周期表には発見されているすべての元素は示していません。
最新の周期表は「拡張型元素周期表」と呼ばれたものが作成されていて、ランタノイド・アクチノイドのところにはたくさんの元素が折りたたまれており、118以上の元素が掲載されているものもあります。
これらの周期表は目的に合わせていろいろなものが用いられますが、この周期表では、「元素記号」と化学的性質が似たものが分類されているというところだけを見ておく程度でいいでしょう。
そしてこのHPで取り上げるのは色を付けた金属・半金属です。
水兵リーベ、僕の船
高校時代に「水兵リーベ、僕の船・・・」と覚えたのは、原子番号順の元素記号です。
天然に存在する放射性元素のウラン(原子番号92)やプルトニウム(同94)は赤枠Ac(アクチニウム系)の中にあってこの表には見えていません。
また、ニホニウムは最下最後尾のRgの後に位置しますが載っていません。そして、118の元素が確認されていますが、そのあとにも元素が続いていることになります。
つまり、元素を融合させて新しい元素を作るのが核融合で、これによって今後も新元素がでてくるのは間違いありません。
しかし、地球上の自然界に存在するのは原子番号94のプルトニウムまでです。
それ以降の元素のすべては人為的に合成した放射性元素で、合成されて瞬く間に崩壊してそれ以外の元素に変わってしまうのです。これを核分裂といい、より軽い元素になるのを「核分裂反応」といいます。
原子番号
元素は原子番号1の水素に始まって、2019年の時点では118の元素の名前が付けられていますが、水素の陽子数が1で、その陽子の数が原子番号になっています。
つまり、原子番号113のニホニウムは陽子数が113個あることになります。
原子核
陽子の周りに電子があり、その陽子がある中心部分を原子核といいます。
陽子が2つになると原子番号が2のヘリウムになるのですが、この陽子は電子の中心部分でひっついていて、さらにこのヘリウムには陽子だけではなく2つの中性子という粒子がひっついて原子核を構成しています。
原子核の周りに電子があるという状態ですが、目に見えるものでないのですが、学校などで習ってイメージできているでしょう。
現在は原子物理学が進んでおり、陽子と中性子を核子といいますが、それらの構造やそれらをひっつけている微粒子(素粒子)などが現在では17種類で物資を構成している・・・ということがわかってきましたが、それらは置いておいて、このHPの内容の化学の世界では「原子を構成するものは陽子・中性子・電子」である・・・としておきます。
原子量
陽子と中性子の質量がよく似ているので、陽子と中性子の和を原子量といいます。
電子は非常に小さくて質量はほとんどないので、原子番号2のヘリウムの原子量は4で、2個の陽子と中性子で原子核を形成しているということになります。
そこでニホニウムの原子量をみると286ですので、286-113=173で173個の中性子があることがわかります。
電子は陽子や中性子のおよそ1/1800と非常に小さいものなので原子量に影響しませんが、電気的に陽子が+(プラス)、電子が-(マイナス)の電荷をもっており、これが様々なエネルギー変化や化合物を生み出すもとになっています。
分子
物質は原子のみで構成されているのではなく、複数の原子が結合して電気的に中性な安定した「分子」という状態があります。
「水」の最小の単位は2つの水素と1つの酸素が結合したもので、それも「水」であり、普段目にする「水」は水の分子が寄り集まったものですが、それらがみんな水の性質を持っています。
つまり、分子はその物性の性質を持つ最小単位(H-O-H:水素原子が二つと酸素原子1つが結合したもの)をいいます。
原子や分子を結びつける「結合」
分子や原子を結びつける力を化学結合といい、その結合の仕方で性質が変わります。
①金属結合 では変形したり電気を通したりという金属的な性質が生まれ、非金属元素に多い ②共有結合 は強くて安定した状態になりやすく、塩化ナトリウムの結晶などのように比較的結合力が弱い、金属と非金属に見られる ③イオン結合 ・・・などがあります。
それらが規則的に並んだものを「結晶」といいますが、この塩(食塩など)の結晶は、ナトリウムイオンと塩化物イオンが規則正しく並んでいます。
もちろん、分子や原子が結合していない、単に混ざりあっている「混合、混和」などの状態もあります。
元素と原子 ・・・って、何がちがう?
ここまでに「元素」「原子」という言葉が混じって出てきています。
「**元素の原子番号は・・・」という言い方をしていますが、ここでは、元素は「性質」を区別するもので、原子は「構造」を区別するといういい方の違いだけで、原子・元素は「同じもののこと」とイメージしておいていいでしょう。
つまり、原子番号1の水素は1つの陽子を持つ原子で、原子番号2のヘリウムとは別の性質をもつ元素(または原子、または物質)で、ヘリウムは2つの陽子を持つ元素(原子)ですので水素とは原子構造が異なっている・・・という感じの混交した言い方になってしまいますが、要するに、元素も原子も同じものをさしていると考えてください。
原子の話には、そのほかに「核種」(同位体の原子核を区別する呼び方)や「同位体」(原子番号が同じで質量数(原子量)がちがうもの)なども元素を説明する場合には必要ですが、ここでは、教科書でないのであまり触れません。
「同素体」は物質の性質に関係がありますので覚えておいてください。同素体とは「炭(黒鉛)」と「ダイヤモンド」のように、同一元素で結晶配列などが違うために性質が違うものになっているものを言います。
物質の由来
この世の物質(元素の集合体)はどのようにできたのかを聞いたことがあるでしょうか?
宇宙はビッグバンから始まり、現在はそれが起こってから138億年後(徐々に研究が進むにつれてこの数字が大きくなっていますが)の状態らしいのですが、高温であった状態から水素が生まれ、星が引力などで凝縮して核融合反応が始まり、宇宙で最も多い原子番号1の水素が原子番号2のヘリウムに、そしてヘリウムと水素から原子番号3のリチウムが・・・というように、元素同士がひっついていって原子数の大きい元素が生まれていったといいます。
不思議なことに、地球や宇宙を構成する物質の割合は当然原子番号順に並ぶと考えるのが普通ですが、そのように並んでいないのは、核融合反応のしやすさによると説明されています。
そして核融合反応によって順次に原子番号の大きな物質が作られていくのですが、最も安定な原子配列状態の鉄(Fe:原子番号26)で核融合反応は止まってしまい、それより重い元素はできません。重い元素は、核融合反応で出来たものではないのです。
太陽は核融合反応で水素からヘリウムが作られる過程の元気な状態にありますが、中心部分ではその他の核融合反応が進んで新しい元素が生成されているのかもしれませんが、さらに何億年のもっと年月が経つと中心部分へ収縮しながら新しい核融合反応が促進して、最終的には鉄が生成されて冷えていくという運命になるようです。
でも、たぶんその頃には人類がいるかどうかわからないすごい未来のことですが・・・。
鉄以外の重い元素は?というと・・・
この写真はNASAのHPから引用したものですが、宇宙ですごい爆発が起きている感じの写真です。
燃え盛る「太陽」の末期は核融合反応によって重い鉄が生成され、次第に冷えて固まって生命を終えるようですが、もっと大きな恒星は、最後に超新星爆発というのを起こします。
この時の爆発力はすごいために、その力で鉄以上の重い元素ができたといいます。
その時の出来やすさ(反応の進みやすさ)で全物質の量が決まるようなのですが、地球上には金や白金のような「貴金属」以外にも珍しい存在量の少ない元素があります。
貴金属のようなきらびやかさもないし、有毒であっても、それらも、いろいろなところで使われているようですので、まずは身近な金属から始めて、これらのあまり聞いたことのない元素についての話題を紹介していきたいと思っています。
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