万物は元素で出来ている

この記事は、物理や化学の内容のようですが、元素について、いくつかの記事を書いていますので、知っておくと関連記事が読みやすいので、少しわかりにくい事柄を、まとめてみました。

『万物は元素でできている』・・・という言い方はしばしば耳にするのですが、近年は、元素の中身までわかるようになって来ていますし、宇宙の物質の95%が「ダークマター」「ダークエネルギー」と呼ばれる「何か」わからないものがあるらしい・・・ともいわれています。

もう一方では、人工的に新しい元素が作られていて、113番目の元素の「ニホニウム」が話題になったのですが、Wikipediaを見ると、認定されていなくても、118までの元素が「ありそうだ」ということで掲載されていますし、それらの新しい元素でなくても、放射性元素は、生まれてすぐに、他の元素になってしまうなどもあって、「万物は元素で出来ている」というのも、おかしいかもしれません。

しかしそれらの、これから発見されて確定する新元素は、放射性物質なので、それらが地球や人体の構成要素になることはないし、ダークマターやダークエネルギーが何なのかがわかっても、その時点で、考え方を変えればいいだけで、「万物は元素で出来ている」といっても、間違いでないように思います。

ここでは、元素や物質についてみていきましょう。

元素と原子と物質

「万物の根源になっている要素は元素である」といわれますし、「万物は原子で構成されている」とも言われます。

この元素と原子については、しばしば、元素は「性質」を区別するものを総称した言い方で、原子は「構造」を区別する言い方・・・などと説明されることも多いのですが、これでもわかりにくいですね。

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元素と原子と物質について、よく引き合いに出されるのが元素が 炭素(たんそ)です。

「炭素」という元素は、炭素原子がいくつも寄り集まって、その寄り集まり方の違いで、グラファイトになったり、ダイヤモンドになったりします・・・というと、元素と原子と物質の関係が少しイメージできるでしょうか?

さらに、炭素の説明文を見ると、いろいろな言葉が出てきます。

英語では「カーボン」。原子番号6で原子量は約12の非金属元素で、常圧下では融点がなく、昇華温度は元素中で最も高い3915K(3642℃)で、3種類の同位体があり、また現在では、ダイヤモンド、グラファイトなどの多くの同素体が発見されており、その一つのカーボンナノチューブは、同重量の鉄鋼の80倍の強度があるし、ダイヤモンドは非常に硬い(現在は、ダイヤモンドより硬い物質は見つかっている)。そして何よりも、化合物の種類が多いことも特徴で、無機化合物の二酸化炭素は光合成呼吸などに、また有機化合物も生物の生命と関係が深く、工業的な生産物も非常に多い・・・・

・・・というように、説明文であっても、太字にした言葉を説明するだけでも大変ですから、全てを取り上げることは出来ませんが、ここでは、「炭素という元素は、炭素原子がたくさん寄り集まって、グラファイトなどの物質を構成している」・・・というイメージで、まず、元素と原子と物質の関係 を考えてみましょう。

「銅製の鍋」は、銅(Cu)という元素を使った鍋で、銅はCuの原子が寄り集まったもの・・・というイメージです。

元素は物質素材を総称しており、原子はその素材の要素を指しているような感じですが、どうも、このような言い方をするのは、数千年の歴史的な背景からきている感じです。

つまり、昔々から、物質の根源を探っていく過程で、多くの「元素」が次々に発見され、そして、19世紀頃から、元素は多くの「原子」で構成されていることが分かってきた・・・という順序ですので、だから、例えば、炭素C を説明するのに、「炭素の原子番号6の元素元素記号はC、原子量は12の非金属元素で・・・」という言い方をする・・・ということで考えておく程度にして、先に進みましょう。

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現在の原子物理学では・・・

現在の原子物理学では、原子の詳細や内部構造まで分かってきており、原子は原子核と電子で構成され、また、原子核の中身はいくつかの素粒子で構成されている・・・ということが定説になっています。

さらに、いろいろな物質に、たくさんの同素体(黒鉛とダイヤモンドのように、構成元素が同じで、化学的性質が違うもの)や 同位体(原子番号が同じで、質量数が違うもの)が見つかってきているので、昔から言われている「元素も原子」であっても、その都度に、説明の仕方を変えなければいけなくなってきています。

私は専門家ではありませんが、専門家の書いている文章もわかりにくい内容が多いので、ここでは、「物質」というものを、私なりに理解できる範囲で説明していきます。

周期表

これは「元素周期表」と呼ばれているものの1例です。

高校時代に「水兵リーベ、僕の船・・・」と覚えた記憶のある人も多いと思いますが、この表は原子番号順の元素記号をならべたもので、原子番号が増えていくと、周期的に何かの性質の似ている関係があることから、元素をテーブルにしたものが「元素の周期表」です。

縦を「族」、横を「周期」といい、縦横で何かの性質が似ています。

さらにここでは、金属、半金属、非金属という分類もされています。

この周期表が出来たことで、地上にない元素が見つかったり、新しい元素を見つけるために役立ったようで、つまり、自然界にないものも、この規則を頼りにして、それが発見されて、この表が埋められたのですが、全部が独立していなくて、例えば、レアアースと呼ばれるものなどは「ランタノイド」の中に、新しい重い元素は「アクチノイド」の最終の枠に入れられてまとめられています。

これらにまとめられている元素は、元素自体の詳細がよくわからないことも多くあって、ともかく並べてあるという状態ですが、科学が進歩すれば、この周期表の標示の仕方も、変わってくるかもしれません。

最新の周期表は「拡張型元素周期表」と呼ばれたものが作成されていて、ランタノイド・アクチノイドの元素が別表になっており、また、原子番号118以上の、正式には未確認の元素が掲載されているものもあります。

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同位体と同素体

繰り返しの説明になりますが、「同位体」は 原子番号が同じで質量数(原子量)がちがうものをいいます。

たとえば、原子番号6の炭素(「 6C」  のように、6を下付きで書いてある場合が多くあります)で言えば、10数種類の炭素の同位体が見つかっており、自然界には 12C (質量12の炭素で、全量の約99%のもの) 13C(質量13の炭素:約1%) 14C(質量14の炭素:微量)があることで、さらに、その3つの割合は、地球上のどこでも変わらないので、炭素の原子量(質量)は12.0107という半端な数字になっています。

この「14C」は放射性元素で、自然に、β線とニュートリノを放出(ベータ崩壊)して、原子番号7の窒素になるのですが、その半減期(わかりやすく言えば、放射能の量が半分になる時間)が約5760年と分かっているので、古い化石などに含まれる量を調べて、化石などの年代を調べる「放射性炭素年代測定法」などに利用されます。

14C」は、自然に含まれる量が少ないので、人体的な悪影響は特に考えなくて良いと言われますが、放射性元素は全てのもので、取り扱いに注意が必要です。

「同素体」とは、同一元素で結晶配列などが違うために、性質が違うものになっているものを言います。

炭素で言えば、「炭(黒鉛・グラファイト)」と「ダイヤモンド」のようなものです。

ちなみに、Wikipediaの図をお借りすると、次のようなものがあるようで、下の丸印の1つずつが炭素原子です。

炭素の同素体の例 Wikipediaから引用

ここからは、上に出てきた用語について簡単に補足します。

原子番号

元素は原子番号1の「水素」に始まって、2022年の時点では118の元素に名前が付けられています。

水素の陽子数が1で、その陽子の数が原子番号になっています。

つまり、水素Hの陽子数は1個で、原子番号113のニホニウムは陽子数が113個、原子番号26の鉄Feは、陽子数が26ということになります。

 

原子核

陽子の周りに電子があり、その陽子がある中心部分を原子核といいます。

陽子が2つになると、原子番号が2の「ヘリウム」になるのですが、この陽子は、原子の中心部分でひっついていて、さらにこのヘリウムには陽子だけではなく、2つの中性子という粒子がひっついて「原子核」を構成しています。

電子は原子核の周りにある・・・という状態になっていて、学校では、地球を回る人工衛星のイメージで習ったのですが、最近では、電子自体を簡単に観測できないこともわかっていて、図に描きにくいので、かえって、教えにくくなってきています。

現在は原子物理学が進んでおり、陽子と中性子(これを核子といいます)の構造や、それらをひっつけている微粒子(素粒子)などが、現在では17種類あって、それが物質を構成している・・・ということがわかってきましたが、それらは、原子物理学の範疇で、このHPでは、いろいろな現象をある程度主観的に捉えやすいように、 化学の世界では「原子を構成するものは陽子・中性子・電子」である・・・としておいて話を進めます。

物質を考える場合は、元素、原子以外に、その集合や結合などを考える必要があります。それらもあわせて、関係用語を見ていきます。

原子量

陽子と中性子の質量がよく似ていて、「陽子と中性子の質量の和を原子量」といいます。

この値は12C(=原子量12)に対する重量比なので単位はなく、表示値は中性子と陽子の微妙な質量差やその結合エネルギーのために整数になっていないのですが、ほぼ整数値と考えて、化学の世界では、水素1,ヘリウム4のようになっています。

さらに、原子番号=陽子数 で、中性子数=原子量-陽子数 としていいので、電子の質量があっても、無視してもいい数字ですので、整数で示されています。

電子は非常に小さくて、質量はほとんどないので、原子番号2のヘリウムの原子量は4で、ヘリウムは2個の陽子と中性子で原子核を形成しているということになります。

2016年に命名されたニホニウムの原子量をみると[278]となっています。原子量278-陽子数113=165個の中性子 があるということですが、命名されて間もないために、詳しく検討するだけのデータ数字が少ないので、原子量は下のように[ ]で囲まれた数字になっています。

重たい原子の周期表からの抜粋

電子の質量は、陽子や中性子のおよそ 1/1800 と非常に小さいものなので、原子量に影響しませんが、電気的に陽子が+(プラス)、電子が-(マイナス)の電荷をもっており、これが様々なエネルギー変化や化合物を生み出すもとになっています。

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分子

物質は、1種類の原子のみで構成されているもの以外に、複数の原子が結合して、電気的に中性で安定した「分子」という状態のものがあります。

「水」の最小の単位は、2つの水素と1つの酸素が結合した H2O で、H2O だけでも「水」ですし、その、最小の「水分子」がより集まると、普段目にする「水」になります。

H2O の1分子でも、大量の水でも、どちらも、水の性質を持っています。

つまり、分子はその物性の性質を持つ最小単位(水の場合は、H-O-H:水素原子が二つと酸素原子1つが結合したもの)をいいます。

原子や分子を結びつける、3つの「結合」のしかたについて

分子や原子を結びつける力を化学結合といい、その結合の仕方で性質が変わります。

金属結合 金属に見られるような化学的結合で、変形したり電気を通したり・・・という金属的な性質が生まれます。 「金属」とあるので、銅や鉄のようなものと考えてしまいそうですが、上の周期表の例のように、ナトリウムやカリウムのような、金属だとイメージしにくい元素があることも、周期表で確認しておいてください。

共有結合 強くて安定した状態になりやすい結合で、同じ2個の元素の結合(H2やO2など)や、ほとんどの分子は、この、電子を共有する「共有結合」になっていると考えていいでしょう。

イオン結合 塩化ナトリウムの結晶などのように、静電引力(クローン力)によるだけの、比較的結合力が弱い結合で、金属と非金属に見られる結合 ・・・ などがあります。

それらが規則的に並んだものを「結晶」といいますが、塩(食塩など)の結晶は、ナトリウムイオンと塩化物イオンが規則正しく並んでいます。

④その他のもの もちろん、分子や原子が結合していない、単に混ざりあっている「混合、混和」などの状態もあります。

そんな単純なものばかりではないのが難しいところで、それらを複合して、何らかの物質ができています。

 

物質の由来

この世の物質(元素の集合体)はどのようにできたのか・・・といえば、大変壮大なロマンチックな話になりますが、それは、宇宙ができたとされる、138億年前の「ビッグバン」に遡る説が有力です。

ビッグバンが起こるときには、高温高圧の、何もかもが閉じ込められた状態から、ビッグバンで急膨張して、冷える過程で、核融合によって、水素などの軽い元素が生まれたと考えられています。

リチウムより重い元素は、その時の核融合で出来たのではなく、長い年月を経て、撒き散らされた物質(元素)が、引力などで凝縮されて、それによって火の玉の「恒星」ができて、その内部の高圧高温で原子番号26の鉄までの原子核が作られた・・・といいます。

そして、鉄以外の重い元素は?というと・・・

現在の太陽の活動状態は、核融合反応によって、水素からヘリウムが作られる過程の、かなり元気な状態にあると言われており、太陽の中心部分では、さらにその他の核融合反応が進んで、新しい元素が生成されているのかもしれないと考えられており、さらに何億年かの年月が経つと、中心部分へ収縮しながら、さらなる新しい核融合反応が促進して、最終的には鉄が生成されて冷えていくという運命になると考えられています。

でも、たぶんその頃には、地球上に、人類がいるかどうかわからないという、すごい未来のことですが、燃え盛る「太陽」の末期は、核融合反応によって、重い鉄までの元素が生成され、次第に冷えて固まって、太陽の生命を終えるようです。

しかし、もっと大きな恒星の最後は、超新星爆発というのを起こして、すべてを宇宙に吹き飛ばして最後を終えるというシナリオのようです。

超新星爆発 NASAのHPより

この写真はNASAのHPから引用したものですが、宇宙ですごい爆発が起きているという写真です。

この超新星爆発時の爆発力は、数え切れないほどの原子爆弾が一瞬で爆発するような凄まじさなので、そのときの力で鉄以上の重い元素ができた・・・といいます。

その超新星爆発時には、やはり、元素の出来やすさ(反応の進みやすさ)で、まき散らかされる全物質の量が決まるということで、このために、宇宙に存在する元素の総量の割合が、原子番号順になっていません。

地球上には、金Auや白金Pt のような、原子番号の大きい、総量の少ない「貴金属」がありますが、貴金属元素以外にも、存在量の少ない、珍しい元素(例えば、レアアースのようなもの)があります。

それらの貴金属でない希少元素は、貴金属のようなきらびやかさもないし、人間には有毒有害のものも多いのですが、人間はそれらの元素(物質)も、時間をかけて手なづけて、利用できるものに変えてきました。

現在は、放射性物質であるウランやプルトニウムなどは、完全に使いこなせていないのですが、時間とともに、安全で有用なものできるように、早く研究が進むことを期待したいものです。

また、宇宙にはダークマターなどの、全く素性のわからないものが、質量的に、たくさんあるようです。

しかし、宇宙全体の元素の構成と、地球や人体の構成は、既知の元素で説明できることから、未知で突拍子なものを考える必要もなさそうです。

 

以上ですが、中途半端感はありますが、原子物理学などを考えないで、学校で習った化学中心で考えると、いろんな周りの事象がわかりやすくなった感じがしませんか。

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(来歴)R5.2月に誤字脱字を含めて見直し。 最終R5年9月に見直し