太陽と月の視直径はほぼ同じ そしたらスーパームーンは

目では、太陽と月は同じぐらいの大きさに見えています・・・ 当たり前のような気もするし、不思議な気もしませんか?

目視での太陽と月はどちらが大きいでしょうか?

自宅で見た太陽

頭の中では、太陽の大きさはすごく大きくて、遠くにあるので小さく見えている・・・ということは誰もがイメージを持っているのですが、それを、「満月の月」とどちらが大きいのか・・・となると、太陽のほうがかなり大きいというイメージで見ているのではないでしょうか。

太陽の大きさのイメージですが、眼を細めて見る太陽ではなくて、日食グラスで太陽を見たり、プラネタリウムで解説者さんが「今夜の星空を見てみましょう・・・」と全天を早送りして、西に沈む太陽が動いていく様子から、太陽の大きさは、イメージにあるほどに、大きくないのでは・・・と思っている人もいるかも知れません。

そして、お月さんも、満月の月の出には、大きく見えたりすることがあるのですが、沈む夕日と登ってくる満月のお月さんの大きさがよく似ていると感じたる・・・というように、太陽と月の大きさを見比べるのは、どちらも、よく似た大きさだからかもしれません。

スーパームーンはお月さんが大きく見える満月

「スーパームーン」という言葉を聞いたことがあると思いますが、これは、普段よりも、大きく見える「満月の月」をさす呼び方です。

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月は楕円軌道を回っているため、地球から月までの距離は最遠で406,000km、最近で357,000kmと、5万kmほど、月までの距離が変わるために、見え方が変わるのですが、地球からの距離によって、見える大きさが絶えず変わり、一番地球に接近して、大きく見える満月をスーパームーンと言っています。

スーパームーン

このスーパームーンというのは、占星術師が名付けたもので、天文用語ではないようで、マスコミは何でもネタにするので、その言葉が急に広がったのでしょう。

スーパームーンスーパームーンをバカチョンのズームで撮った

この写真は、2017年12月のスーパームーンをインスタントカメラのズームで撮ったのです。

これだけでは、大きさの違いわかりにくいのですが、下の写真のように、周囲の景色を入れて撮ったスーパームーンと普通の月の写真と合成して比較してみると、かなり大きさの違いを感じます。

スーパームーンの時には、視直径で15%程度おおきく、明るさで30%の差がある・・・と国立天文台のHPなどで説明されているように、この写真のように、空の真ん中に浮かんでいる月ではなく、建物のすぐ近くに月は、大きく見えるうえに、スーパームーンの場合は、さらに「大きい」ことがわかります。(家のベランダから、別の日に撮った月の写真を合成してみました)

普通の月と写真合成

空に浮かぶ月は小さく見える

頭上の空に浮かぶ月は、背景に建物がある場合よりも、小さく見える感じがしますが、これも、下のように、地上の風景を切り取ると、同じ写真なのに、月が小さくなった感じになります。

月の出の大きく見える月も、頭上に浮かぶ月も、視直径は同じですが、見る人の頭が、勝手に判断しているようですね。

自宅から見たスーパームーン 地上の建物を切り取って、月の多きさを比べる

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満月は大きい?

半月などと比べて、『満月は大きい』・・・というイメージを持っている方も多いかもしれません。しかし、これも、月と地球の距離できまるので、満月だから大きいと言うことではありません。

月が欠けていると、目に入る光が少なくなるからでしょうか、勝手に「満月は大きいというイメージ」が、頭の中に刷り込まれているのかもしれません。

上の写真のように、地上の背景を切り取るだけで、小さく見えるようになるのは、一種の錯覚や思い込みが関係しているようが、そう言われても、小さく見えてしまうのは、困ったものですし、いつ頃からそのように考えるようになったのかもわかりませんが、不思議なものです。

 

平均視直径

この視直径について、理科年表には、「平均最近距離による視半径」として掲載されています。

これによると、およそ、月は15分32秒、太陽は15分59秒で、少しだけ太陽が大きいという数字になっていますから、目を細めて太陽をみるのではなく、日食ガラスなどで眩しくない状態で比べると、「ほぼ同じ」と言っていいかもしれません。

もう少し詳しい数字を比べてみましょう。

 

地球から月までの距離は最遠406,000km、最近357,000kmで、赤道半径が1,734.4kmですので、最近接(スーパームーンの時)には視直径は15分59秒になります。つまり、このスーパームーンの時で、視直径は、太陽と同じくらいの大きさになります。

それで30%の明るさの差がでてくるようですね。

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ただ、このスーパームーンというのは天文用語ではないために、理科年表には、最近と最遠の距離程度の情報しかありません。

国立天文台のHPに、満月時の視直径の変化が掲載されていますが、それが実際どのタイミングで見られるのか・・・などの情報は載っていないようですが、楕円軌道を回る月と地球の最短距離はわかっていますし、太陽と月と地球が並ぶ時(直列する時)、つまり、満月か新月のときにスーパームーンになります。

もちろん、新月のときは見えませんので、この条件が合致して、非常に大きなスーパームーン(エクストラとかエクストリームをつけて呼ばれることもあるようですが)になるときが、TVなどで大きく取り上げられて話題になります。

理科年表には、もちろん、スーパームーンのことは書かれていないのですが、これは、「日々の大きさの変化がわかるというものではなく、大小を比べるとその差がわかる・・・という程度のものであり、それを正確に予測をするには、「3体問題」「多体問題」があって、時間などがきっちりと計算で確認できないため・・・」ということのようです。

つまり、正確な予測計算が難しい問題なので掲載していない・・・というのですが、理科年表には「月ごとの最遠・最近とその距離」が掲載されているので、スーパームーンかどうかという程度の判断はできそうです。

「3体問題」が関係する、微妙な軌道のズレは、古くからの問題で、「太陽、月、地球の万有引力が伴う運動の軌道は求積法で解けない」・・・ということから、長期にわたって厳密な予測はできない・・・というのです。

しかし、これは実測されていますので、それがわかっていても、理科年表などに載せるほどのものではない・・・ということかもしれません。

 

概算ではスーパームーンは18-19年周期ぐらいで起こるとされています

月は地球に同じ面を向けているので、地球の自転と月の公転は同じで、月の地球に対する公転周期は約27.3日で、そして、地球が太陽に対して公転していますので、満月から満月まで(これを朔望といいます)の周期は約29.5日で、その間に1回、月は地球に、近づいたり離れたりしています。

それが、きっちりと、満月と合致したり、大きさが極大になるかどうかは別にして、同じ「満月」でも、大きさが違う・・・と言うことになります。

国立天文台のHPの例を見ても、視直径の最大最小が、半年程度ごとになっているグラフが掲載されています。

大きさにこだわらなければ、スーパームーンの定義もきっちりしていないので、毎年1回程度は、かなり地球に近づく場合があって、お月さんが大きく見えるということから、それをマスコミなどが話題にすれば、盛り上がる・・・ので、近年、このスーパームーンという言葉を聞く機会が増えているのでしょう。

 

明るさ(極大等級)を比べると…

金環食

これは、2012年5月の金環食の時に雲間に見える太陽を、日食グラスを通してコンパクトカメラで撮影したものです。(雲があって、あまり良い写真ではありませんが・・・)

この時も感じたのですが、太陽が思ったよりも小さいことにびっくりしました。

この、中央の丸部分は月が太陽の光を遮っているのですが、地球-月-太陽の位置関係と、地球上の見る位置で、皆既日食になったり、金環食になったり、部分日食になったりします。

明るさの雑学

太陽の極大等級(明るさ)は-26.8等級とされています。それに対して、月は-12.9等級。全天で最も明るく輝く「おおいぬ座のシリウス」は-1.5等級です。

明るさが1等級変わると2.5倍明るくなると決められているので、5等級変わると約100倍(すなわち2.5の5乗 2.55 ≒98)の明るさの違いと定義されていますので、全天で最も明るい恒星で、冬の季節にオリオン座の近くに明るく見える「シリウス」よりも何万倍もの明るさになるのですが、関数電卓で計算してみると、月はシリウスの34000倍、太陽は月の約340000倍になります。太陽はシリウスの約117億倍明るいということになるのです。

【参考】天体の話にでてくる数字は、大きいものが多いのですが、関数電卓は、難なくそれを表示してくれます。

そして、自分で計算してみると、親密さが増します。関数電卓の使い方はムズがしいものではないので、これを機会に、少し使う練習をしてみましょう!

関数電卓

今はスマホのアプリで「関数電卓」が入っているので便利なのです。 関数キーは慣れないと使いにくいので、上のアイフォンアプリの例を簡単に紹介します。私の使っているi-phoneの電卓アプリは、縦画面が普通電卓で横画面にすると関数電卓になります。

上の例で言えば、シリウスは-1.5等級、太陽は-26.8等級なので、その差は25.3等級(-1.5-(-26.8)=25.3)なので、関数電卓の「累乗キー」を使って、2.5[累乗キー]25.3[累乗キー]を順に押すと、11691・・・という答えがでます。ここでは、すごい大きな数字だというところだけを見ておいてください。

2等星の北極星と太陽の等級差は 2-(-26.8)=28.8 ですし、上に5等級差が約100倍と書きました。 これは 2.5[累乗キー]5[累乗キー]で 97.65・・・となるのを、関数電卓で確認できますね。

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ともかくこのように、星に対しては、月も太陽も明るすぎる異端児なのですが、視直径で同じぐらいの月と太陽が地球の周りに付き添って回ってくれていることで、今の私たちが地球に住んでいられるのですから、太陽も月も、信仰の対象になって、神様として崇められるのは当然だと思います。

 

月と地球の大きさと重力

月の大きさは、赤道半径が1737kmで、それに対して地球の赤道半径は6378kmで、月は地球の1/4程度の大きさで、重力は1/6程度です。地球上でジャンプするよりも6倍も高く飛べる・・・とよく言われています。

ロケットを飛ばして地球から脱出する場合、地球での脱出速度(第2宇宙速度)は、地球では11.2km/sですが、月から飛び出す場合は、1/6の2.4km/sでいいのです。

例えば、リニアモーターカーが500km/hといっても、秒速では約0.14km/sですので、2.4km/sはとてつもなく速いのですが・・・。

そして太陽は?となると、(行くこともないのですが)地球の320倍の質量があり、太陽からの脱出速度は618km/sにもなりますね。

 

人間が作った最も早い物体は、太陽系を離れて飛んでいっているボイジャー1号ですが、その速度は17km/s前後と推定されますので、太陽の重力につかまってしまうと、この速さでは、逃げられないことになりますから、だから、ボイジャーは太陽と反対方向に飛んでいっている・・・ということなのでしょう。

余談ですが、関数電卓で、1年間の飛行距離を計算すると、17(km)x60(秒)x60(分)x24(時間)x365(日)=536112000kmも遠くに飛んでいっているのです。

 

近くて遠い月

ニュースで「火星まで行く」ということをしばしば耳にします。

人間が火星に行くには、想像を絶する困難さに違いありませんが、でも、「アポロが月へ行った」のは1969年で、ケネディー大統領が公言したから出来たことです。恐ろしいことですが大統領のロマンがスゴかった・・・ということですね。(民間人でISSまで行った前澤さんが「今度は月に行きたい」というのも、すごいロマンのある方だということですね)

そのアポロ11号は、地球発射から月面到達までの時間は 102時間 45分、月面離陸から地球帰還までは 70時間55分かかっています。

月までの距離は約38万kmです。

光は毎秒30万km進むので、2秒かからずに月まで行ってしまうのですが、人間が行くとなると、その18万倍以上の時間がかかっていることになります。

 

トランプ前大統領が、「また、月へ行く」と言うような発言をしていましたが、ケネディー大統領は、無謀にもそれを公言して、そして、実現してしまいました。

月に行くのは、今の技術をもってしても夢のような話ですが、ぜひ、日本も参加して、夢を実現してほしいと思う反面、危険を犯してまでも人間が行かなくてもいいように思いますが、いずれはロマンのために行くことになるでしょうが・・・どうでしょう。

 

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星の話は、日々のごちゃごちゃを忘れさせてくれる壮大さがあります。ぜひ、おやすみ前に、星空を眺めてください。壮大な宇宙が、深い眠りにいざなってくれるでしょう。

 

さいごに:ここにある数字等は、主に国立天文台編集の理科年表をもとにして拙い計算したものですし、写真はすべて家の近くでインスタントカメラで撮ったものです。検証もしていませんので、雑学としてお読みください。


(来歴)R5.2月に誤字脱字を合わせて見直し