宝石のとんでも科学(2/3)溶融法・接合

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宝石の製造について見てみましょう。

ハワイ島のキラウェア火山が溶岩を吹き出す様子を見られたと思うのですが、その溶岩の温度は1000-1200℃程度と言われています。

溶岩の温度は成分によって異なりますが、温度は色で予測できます。

いろいろな火山の写真を見ると、噴出している溶岩温度は800-1200℃ぐらいで岩石が溶けている状態だと言えるのですが、この温度では、成分によっては、溶けていない岩石もあるでしょう。

このように、本来は、宝石は「自然が作り出したもの」で、希少で美しいものは価値があります。

現在では、一部の宝石は人工的に製造できるようになっていますし、それを加工して価値のあるものに作り上げる技術も向上しており、それを「模造品」「ニセモノ」と呼べないレベルになっているのは周知のことでしょう。

原石に何らかの加工を加えることは決して悪いこととは言えないのですが、加工する側は正常な価値以上のものを作り出したいですし、購入する側はそれを含めた価値評価で取引したいと思っていますので、その判定や調査には最先端の分析機器が使われるなどの例もあるのですが、その駆け引きは一般には論じられない高レベルだといいます。

ここでは、宝石の製造法や加工法の一例を見ていくことにしましょう。

宝石の多くも岩石が溶けて固まったもの・・・

ちなみに、理科年表によると、コランダム・ルビー・サファイアなどの主成分の酸化アルミニウムの融点は2054℃、クロムの融点は1907℃です。宝石の水晶が1610℃、ルビーは2050℃ぐらいで溶けるとされています。

この温度はまだまだ高温ですので、人工的には扱いにくいので、宝石を加工したり人工宝石を作るためには、何かの工夫して、低い温度で溶融できるようにすることが課題になります。

本来、元素が化合していると融点が下がります。そして、金属の溶接やロウ付けでも言えることですが、塩類のフラックスを用いると融点が下がります。

要するに、適当な成分を混合したものを一度溶融させて、それをうまく凝固させれば宝石ができるということはイメージできますね。

シリコンの単結晶 シリコンの単結晶製造

宝石の合成は、昔からある方法はもちろん、最先端技術が使われています。

その方法を大きく分類すると、溶融させて結晶を育成する方法と、溶液相から単結晶を作り出す方法に分類されます。

ここでは、簡単にそれらの合成法を紹介します。ただ、簡単な紹介ですので、詳しく知りたい方は他の書籍によってください。

ベルヌイ法

ルビー、サファイア、ルチル、スピネルなど 酸水素炎(酸素と水素の高圧混合炎)を用いて、そこに原料粉末を落として、種子結晶上に同じ方位で成長させる方法で、火炎溶融法とも言われます。

CZ(引き上げ)法

ダイヤモンド類似のGGGやYAGなどを作る方法で、混合溶融させた溶液中に種子結晶を入れて引き上げながら成長させる方法です。

上の写真のシリコン単結晶を作る製造方法がこれです。

格子欠陥が少なく、長い単結晶ができますが、この方法によってコランダムが作られたのは1990年後半といいます。

FZ(帯溶融)法

アレキサンドライト、ルビーなどを製造する方法で、材料棒の途中を溶融させてその溶融部分を移動させながら単結晶を育成させる方法で製造されます。

スカール法・ブリッジマン法

キュービックジルコニア、サファイヤなどの製造は、電気炉中に材料を置き、容器(坩堝)の一部を溶融させて溶融部分を移動して結晶化を行わせる。ここで、坩堝を材料自体で作るのがスカール法と言われます。

フラックス法

エメラルド、ルビー、サファイヤなどは、溶媒として無機塩類のフラックスを用いて、それと材料を混合して融点を下げる方法の溶融法で、1960年ごろから行われています。

ルツボ中で原料を溶解して、アルミナを過飽和状態から冷却すると900℃でアランダムができる方法を2011年に信州大学のグループが開発したとされています。

高温高圧法

ダイヤモンドなどの製造法で、地中と同様の高温高圧状態を人工的に作って、フラックスを併用するなどで合成させる方法です。

熱水合成法

エメラルド、水晶類、オパール、ルビー、サファイアなどの製造は、内部を高圧にできるオートクレーブなどを用いて、熱水溶液中で結晶を成長させる方法です。

(注)オートクレーブ : 内部を高圧力にできる耐圧性の装置や容器、あるいはその装置を用いて行う処理をいい、水晶の合成に使用されていることで有名です。

オートクレーブ内に、天然水晶の小片を入れて、アルカリ水溶液を満たして、上部に吊るした種水晶にを吊るして密封し、それを高温高圧(約350℃、90~145MPa)に保つと、水晶が再結晶化して増大成長します。

成長速度は、1日当たり0.4~0.5mmの速度のため、数十日から数百日をかけて作られ、宝石やクオーツ時計用の水晶振動子として用いられます。

焼結法

トルコ石、サンゴ、象牙、ラピスラズリなどの製造には、粉末を高温高圧状態で固める方法が用いられます。

これらの方法によって合成された宝石は、「天然物とは区別できる」とされています。

しかし、それらの適切な識別を、すべての宝石で行われているかといえば、それは疑問で、作る方の技術も向上しているので、これらも立派な宝石と言えるのでしょう。

宝石を加工する

天然宝石は70種類以上があるとされます。

磨けば宝石

きれいな石を磨けば宝石になりそうですが、高価な石はそんなにうまく見つかりません。そのために、単体ではなく、張り合わせて嵩上げしたり、きれいな色になるようにしたり、それらを「良いとこ取り」して張り合わせ用とするのは当然かも知れません。

ダイヤモンド底部に合成したホワイトスピネルを張り合わせたり、天然サファイヤと合成サファイアを張り合わせたり、水晶の間に着色ガラスを挟んだり、何層にもあり合わせて色を調節する・・・など、現実にすごいことが行われているようです。

その継ぎ目は、ルーペなどでは判別できない精巧なレベルにあるようです。

ダイヤモンド、ルビー、サファイヤなどは単結晶なので、切子面で囲むファセットカットによって色の美しさや透明感を出しますが、結晶質でない琥珀やオパール、(結晶質であるが)キャッツアイなどは、色や模様を目立出せる球面のカボッションカットが一般的です。

それらに合わせて貼り合わせ技術ができているということになります。

宝石の加工技術(一例)

熱処理についてはこちらにまとめて紹介しますが、その他の加工技術の一例を紹介します。

染色・着色、充填・油脂処理、放射線、コーティングなど、加工法には様々な方法があり、もちろん、ノウハウがお金に直結しますので詳しくは公開されることはほとんどありません

単結晶の原石(ダイヤモンド、ルビー、エメラルドなど)は結晶間の隙間が少ないので、着色剤が染み込みにくいことでラジウム、コバルト60,加速器などを用いた様々な発生源で放射線処理をしたり、気相成長ダイヤモンド技術やPVDなどの真空蒸着技術を用いて着色や無色化が行われます。

メノウやヒスイなどの多結晶体は自然にいろいろなものが染み込んで、良くも悪くも変化していますので、人工的に色や物質を染み込ませることで選択吸収などの技法を用いて色を変化させたり無色化することが行われます。

エメラルドは「キズのないものはない」と言われますが、油脂中に着色剤を入れて見栄えを良くする処理が行われます。

もちろんこれらの処理の多くは顕微鏡を用いて判定できる場合も多いのですが、鑑定士が見逃してしまえば、加工する側は儲けものということになるでしょう。

これらの実態がどうなっているのかはわかりません。たまにテレビなどで見る原石取引の実態ルポなどを見ていて、何か怪しげなものですし、宝石の加工に対しても、どこで誰がやっているのかはわかりません。

かなりの設備費が必要なものもあるので、そこそこの研究機関や企業もやっていると思われますが、ほとんどは表に出てきません。

宝石加工で透明になる

天然宝石以外の加工宝石の呼びかたについて

正式な呼び方ではないかもしれませんが、次のような加工宝石があります。

人工宝石

酸化チタン、チタン酸マグネシウム、キュービックジルコンなど、天然にはほとんど単体で存在しない材料を使って人工合成したもので、多くは装飾用に用いられるもの。

模造宝石

合成石を天然宝石に似たようにガラス、プラスチック、フリントなどを加工したもの。

合成宝石

天然宝石と同じ成分のものを人工合成したもの。現在、ルビー、サファイア、アメシスト、アレキサンドライトなど、主要な宝石のほとんどが合成できるといいます。

処理宝石

熱、着色、コーティング、放射線処理などで見かけの良さを向上させたもので、程度の差はあっても、品位が向上し、見栄えが良くなるのですから、何らかの処理が行われているのは当然でしょう。ただし、加工されたものが適正価格で販売されているかどうかが問題で、そこには騙し合いの世界が見え隠れするのは当然でしょう。

次ページは、宝石の熱処理について紹介します。


(来歴)R1.7 文章見直し

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