乾電池の材料として知られるマンガン 

「マンガン」と聞くと、マンガン電池マンガン団塊 という言葉が頭に浮かぶ人が多いと思います。

また、「二酸化マンガン」という、小学校でならった言葉を覚えている方も多いでしょう。

マンガンはMnと表記される、原子番号25の元素で、単体では比重7.2程度(鉄鋼は約7.8)ですが、単体では産出せず、鉄鉱石などから採取されます。

「マンガン団塊」という言葉を聞かれると思いますが、これは、1980年にイギリスの調査船が海底でマンガン、鉄、クロムなどを多量に含む球体を発見したものに名付けられたものですが、記事の最後にも簡単に紹介しています。

乾電池の材料や鉄鋼に欠かせないマンガン

小中学校で、二酸化マンガンの黒い粉を触媒として、過酸化水素水をかけると酸素ガスを発生させる実験や、理科の時間に乾電池を作った経験がある方も多いと思いますので、Mnの元素単体ではなくて、それらによって、比較的馴染みのある元素かもしれません。

このマンガンの用途として、鉄鋼の焼入れ性を高める合金元素として、非常に重要です。

多くの鉄鋼には、マンガンが0.3~0.5(重量%)程度をふくむ鋼種が多く、ほとんどの、焼入れして硬化する鋼種には、1%程度以下のマンガンを含有するのですが、それによって、「焼入れによって硬化しやすくなる」ために、鋼の製造には、なくてはならない元素です。

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ハイマンガン鋳鋼」というものがあります

通常の鋳物と違って、炭素の含有量が少ない「鋳鋼」なので、比較的柔らかいのですが、機械加工ができないという「変わり者」です。

バイトなどの工具で削ろうとしても、刃物が食い込んだ途端に、表面が非常に硬くなって、「刃がたたなくなる」ので、柔らかいのに機械加工ができない・・・という材料です。

このために、溶接棒などでパワーショベルの先端などに肉盛溶接をして用いるのですが、これが、掘削時に岩石などと摩擦すると、表面が変形することで非常に硬くなって、耐摩耗性を発揮します。

全体的には柔らかいのに、全く、切削加工ができないし、さらに、掘削などによって、表面が塑性変形すると、非常に硬くなるのですが、内部は柔らかいので、使用中の折損などは起きない・・・という、特殊な性質を持つ鋳鋼で、これも、Mnのおかげです。

食物とマンガン

Mnは、地殻中に含まれる量も多く、そのために、卵やナッツ類に多く含まれていて、食物連鎖を介して、人体にも取り込まれています。

成人では、10-20mg程度含まれていて、酵素を活性化する機能があるとされています。

もちろん、多くても少なくても体の機能に影響しますが、通常の食生活をしておれば、摂取の多少は問題はない・・・と考えていてもいいでしょう。

 

マンガン電池とアルカリ電池

電池では、この2種類がよく使われます。

マンガン電池 左がアルカリ乾電池、右がマンガン乾電池

これらの電池には、どちらも、プラス極に「二酸化マンガン」マイナス極に「亜鉛」を使っている、非常にポピュラーな電池で、電解液が異なるので、このように呼び方が異なっています

マンガン電池の電解液は、塩化亜鉛や塩化アンモニウムですが、アルカリ電池は、強アルカリの水酸化カリウムが使われています。

そのために、乾電池の「液漏れ」に注意する必要があります。

液漏れは、電池内部で電気分解が起こる際に、ガスが生じて電解液が漏れ出すのですが、種類や電圧の違う乾電池を同時に使用すると起こりやすいほか、器具に取り付けたままの長期放置やショートに注意しましょう。

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マンガン電池の規格ランクについて

マンガン電池については、高性能の「黒マンガン電池」と、高出力の「赤マンガン電池」があるのをご存知だと思うのですが、規格では、その他に「緑」や「青」があります。(緑・青は、近年は、見ることはなくなっています)

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マンガン電池は、性能の良い「アルカリ電池」に移行しており、さらに、平成20年以降は、マンガン電池の国内生産品はなくなってしまっており、表示は国内メーカーのものであっても、すべて輸入品で安価になっているので、低品質ランクの「緑マンガンや青マンガン電池」はほとんど見ることがないのでしょう。

赤に比べて黒のほうが高寿命品・・・というランク分類ですが、これも、気にするほどのこともない・・・と考えていいようで、つまり、「赤」は欧米での最高ランク品ですが、「黒」は日本のJISだけに規定されている「赤以上の品質」のものというものです。

そうは言うものの、もしも大電力がほしければ、アルカリ電池を使ったほうがコスパは高いので、「赤・黒」にこだわらないで、安いものをうまく使うようにするといいと思います。

 

乾電池は充電して使わないように

「乾電池」は1次電池に分類されるもので、酸化銀電池、水銀電池、リチウム電池などの種類があります。

基本的には、1次電池とは使い切りのもので、充電して使用するものではありません

「乾電池の専用充電器」と銘打った充電器具が販売されていますが、100%回復するものでもないので、この際、「乾電池の充電はしてはいけない」ということで考えておくのが無難です。

過去には、1V程度まで電圧が低下するまで使用することもありましたが、近年の機器は、非常に電圧に対して厳しくなっており、1.3V程度で、機器が『使用不可』になるなどのものが多くなっています。

そしてまた、電池を直並列にする場合は、内部抵抗の違いや電圧の違いがあると、発電能力の低い電池の内部で発熱して、液漏れなどの事故を起こす可能性が高いので、乾電池を取り替えは、全部を新品に取り替える・・・ということを徹底するのが無難です。

余談ですが・・・充電して使用できる電池は「2次電池」に分類

例えば、エネループなどの商品名のニッケル水素電池や、大電力で高性能なリチウムイオン電池、鉛電池などがあります。

これらの二次電池は、マンガン乾電池など比較すると、出力電圧(起電力)が違うので注意が必要です。

さらに、それらの2次電池の充電は、それぞれの専用器具を使うことなどの制約や使用上の注意があります。

特に、乾電池と形が似ているニッケル水素乾電池は、電圧が1.2Vですので、ここで説明しているマンガン・アルカリ乾電池とは別物として考えないといけません。

同じ用途には使えませんし異種類を混ぜて使うことも出来ません。

乾電池用の充電器として販売されている充電器は「使用注意」

これは、パルス式充電という方法によって、充電時の液漏れの危険性を低減していますが、使った経験がある方もおられると思いますが、やはり充電中にかなり発熱していますので、液漏れの危険がありますし、電圧も気休め程度しか回復せず、思ったほど充電ができていなかったり、まったく充電できていないものもあったと思います。

この専用充電器があっても、1次電池(乾電池などの使い捨てのもの)は充電をしてはいけないと考えておいてください。

日本では普及していない、異色の「充電式アルカリ電池

現在は一般にはほとんど見ることが無いのですが、これは1.5Vで自己放電が少ないエコ製品なのですが、安価なリチウムイオンやニッケル水素電池の普及もあって、日本ではあまり普及していませんが、充電できるアルカリ電池があります。

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電池については最後になりますが、何回も書いているように、非常に電池の種類が多くなっていますし、大容量になっています。 電池は化学反応によって電気を取り出す、とても便利なものですが、どのような電池でも、それぞれに合った使用法を知って、安全に使用しなければいけないことを記憶ください。

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マンガン団塊

マンガン団塊(海洋開発機構のHPより引用:丸いのがマンガン団塊)

平成22年に南鳥島沖で、潜水船「しんかい」がマンガン団塊(マンガンノジュールという)を発見した・・・というニュースが飛び込んだ時には、資源の少ない日本にとっての朗報だったという記憶があります。

これについては、現在もJOGMEC(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)などで調査がすすめられています。

このニュースのマンガン団塊とは、上の写真のような、直径が10cm程度以下の球形の堆積物がハワイ沖の公海の海底で発見されて、その調査がされているのですが、これは、鉄やマンガンが凝縮されて徐々に成長したもののようで、この中には、その他の金属やレアアースなども含まれている・・・ということもあって、これからの調査や採掘の期待がされています。

ハワイ沖にかけての深海に分布しているようで、マンガンだけでなく、ニッケル、コバルト、銅などが含まれており、この事も含めて、今後の開発が待たれていますが、発見場所は公海上ですので、日本以外に多くの国が鉱区取得に動いており、これからの動向も気になるところです。

 

鉄鋼における焼入れ性を高めるマンガンの重要性

鉄と炭素の合金を「鋼(はがね)・鉄鋼」と言いますが、鋼は熱処理によって硬さを変化させることができることから、幅広い用途に使用されています。

鉄に炭素が溶け込んだものを鋼(はがね)と言い、この炭素量が増えると、熱処理によって硬さが高くなる(これを「焼入れ」といい、焼入れした硬くなりやすいことを「焼入れ性がいい」といいます)ことを利用して鋼(はがね)がつくられています。

ただ、品物が大きくなってくると、焼入れ時の冷却速度が遅くなって、大きな品物になるほど、内部の硬さが出にくくなるので、それには、「焼入れ性を向上させる合金元素」を加えることで改善されます。

その元素の筆頭が、安価で性能特性が高い マンガン です。(その他には、焼入れ性を向上させる元素には、クロム、モリブデン、ニッケルなどがあります)

 

鋼製品では、マンガンの含有量を多くしすぎると、もろくなったり硬さが出なくなるという欠点が出てくるので、通常の鋼では0.5~1%程度までのものが多く、モリブデン、クロム、シリコン、ニッケルなどの元素を調整しながら、様々な特徴を持った高品質の鋼がたくさん製造されています。

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その他の記事

 夢の素材チタン     鉄鋼で重要な合金元素 クロム

 


(来歴)R5.2月に誤字脱字を含めて見直し。  最終R5年9月に見直し