私は普段、河内弁混じりの大阪弁を話していて、55年以上を中河内(なかがわち)の現在の東大阪市内に住み、その間ずっと河内弁(かわちべん)に接してきました。

大阪市内で生まれ、昭和30年代に大阪市内から東大阪市の前身の河内(かわち)市の学校に転入したのですが、地域閉鎖性も強くて、大阪市内から直線距離で10km離れただけで、異次元の言葉に驚いたのですが、地域に溶け込むために、私の大阪弁も、ゆっくりと河内弁の混ざったものになっていったのでしょう。
河内弁は「きつい」とか、女の子が話すとゲンメツする … などと言われるのを聞きますが、それは、他の地域の人が言うもので、大阪弁でも、北摂弁でも、「住めば都」で、「河内」が暮らしやすかったのか、50年以上もとどまっていました。
ただ、私は旧の河内市と旧の枚岡市の「中河内」で暮らしたのですが、同じ中河内の「八尾市」の言葉は、かなり違った感じがしますし、極端に言えば、昔の「村単位」でも違っている感じです。
結局、東大阪市内で4回転居しましたが、いずれの地域でも、近所付き合いに違和感がなかったのですが、息子の仕事の都合で北摂の豊中市北部に転居したところ、この地域の言葉は標準語化が急速に進んでいて、大阪弁でも北摂弁でもない、聞き慣れない言葉に戸惑っています。
古くからの北摂に住む友達との会話は、今でも違和感がありませんが、現在地域の人との会話は、カルチャーショックを受けるほど標準語化されています。
豊中市は大阪空港や新幹線の新大阪駅に近いので、外部からの転入者が多く、多くの住人は「標準語のような言葉」を話す人が多い地域で、逆に、私の話す大阪弁が奇異に感じられているくらい、私の周りから大阪弁が消えていっています。
大阪弁、河内弁といっても、標準的なものは決めにくいのですが、大阪弁と河内弁混じりの「私の話し言葉」を音声記録しておいて、10数年たってからの変化をみようと、録音を含む記事を書いてみました。
私の言葉が「標準の大阪弁」ではないにしろ、長年にわたって染み付いた、一人の「純大阪人の言葉」であることだけは確かですから。(録音:2019年1月、mp3形式です。10数年後が楽しみです)
最初は、普段の会話を感じていただくために、友達同士の会話をシミュレートしました。何を言っているのかわかりますか?
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久しぶりの同窓会で友達と会った時の会話(1例です)
最初に、十分に音量を下げてください。 ▷を押すと再生します。
【A・Bの友人同士の会話】
A:ひっさしぶり。遅かったやん、何しとったん? お前、どべやで。
B:すまんすまん。おいどにごっついデンボが出来てて、はよ歩かれへんかってん。
A:ほんま? 車でけえへんかったんかいな。 隣、モータープールあんのに。
B:そーかいな。飲まんならんし・・・。おかんは、やめとけ言うたんやけど、きてもた。
A:なんか、しんどいんか? えらい顔して・・・。
B:そやなぁ、しんどないけど、むっちゃ痛い。何や知らんけど。 さぶいぼが出てる。
A:前おうた時も、めばちこできた言うてたんと違うかぁ? しゃーないやつやなぁ。
B:ボロかすに言いないや。えげつないなぁ。
【標準語的な意訳】
A:久し振りですね。遅かったようですが、どうかしたのですか? あなたが最後(の到着)ですよ。
B:大変すみません。お尻に大きな「できもの」ができたので、早く歩くことが出来なかったのですよ … 。
(注)疑問形で「~たん?」と言う会話は多いです。 「~ですか?」という感じの言葉です。
「どべ[または「べべ」](最後・最下位)」という言葉も、聞く機会が少なくなりました。おいどは女性が使う言葉で、男性は「けつ(おしり)」という言い方になったのですが、これもすでに聞かれなくなってきています。
「でんぼ」も独特の単語で、おでき、ものもらいのことで、これも、聞かれなくなっています。
「歩かれへん」は「歩くことが出来ない」ということですが、「~かってん(だったのです)」は過去のことを言っている表現です。
A:本当ですか?(大変でしたね) 車で来なかったのですか。(車のほうが良かったのに・・・) 隣に駐車場がありますし・・・。
B:そうでしたか。 (今日は同窓会ですので)飲酒もしますし、・・・。 私の母も(無理をして)行かないほうがいいと言っていたのですが、(無理して)来てしまいました。
(注)モータープールは標準語だと思っていましたが、そうでもないようですね。私営の駐車場で、店員さんにキーを渡すと、適当なところに移動して保管してもらえる業態でしたが、大阪特有のようで、この形態の駐車場も少なくなりました。
「おかん(母親)」「おとん(父親)」という人も少なくなりました。中高生の男子生徒がよく使います。
A:どこか(体の具合でも悪くて)、疲れているのですか? すごい(疲れた)顔に見えるのですが・・・。
B:そうですねぇ? 疲れてはいませんが大変痛いのです。なぜかわかりませんが・・・。 鳥肌が立ってきました。
(注)「しんどい(疲れた)」「えらい(たいへん)」は、現在でも現役の単語で、「えらい」というのは、優秀だ、賢いということでも使われます。
何かを断言してすぐ後に「何や知らんけど」というのはよく聞きます。知らない人が聞くと「無責任」で、違和感があるようですが、私はこの言い方がたいへん好きです。
「そやなぁ」は意味のない「口癖」で「え-っと」や相づちのような感じの言葉です。
A:以前に会ったときも、眼に「ものもらい」が出来たと言っていたようですが・・・。 (いつもなにか問題がある)どうしようもない人ですね。
B:(そんなに)無茶苦茶に言わないでください。ひどいですよ。
(注)大阪でしか聞かないような独特な単語はいくつかあります。
かしわ(鶏肉) ごんぼ(ごぼう) ぼっかぶり(ゴキブリ) やいと(お灸) ややこ(赤ちゃん) れーこー(アイスコーヒー) つれ(友達) ばば(うんこ・うんち) べべ(着物)など、たくさんあります。
おおきに(ありがとう)などの、商売人が話す言葉も多く残っています。 TVでも話されていますので、ややポピュラーですが、商売ことばには、「勉強してや・まけといて(安くする)」「しまつせんと(節約しないと)」「なおしといて(しまっておいて)」などとたくさんあったようですが、多くのこのような独特の単語は、外部から来た人は、意味を取り違えるなどもあって、急激に話されなくなってきたようです。
ボロかすは「ぼろくそ」ということもあり、「無茶苦茶に」という感じです。
「えげつなぁ」という言い方は、話の流れによって、ひどい、やばい、すごい、きつい・・・など、いろいろな意味を持ちます。
濁音が入ると、汚い言葉に聞こえてしまうのですが、それが好まれるところもあります。よく、「河内弁は、きつく言う感じが強い言葉が多い」と言われますが、話す本人は、怒っているのではなく、ごく普通の状態ですし、女性が話すと下品な感じを持つ人もいますが、当事者間では、それなりに受け答えしています。これが方言の良さといってもいいでしょう。
引き続いて、大阪弁の独特の言葉をピックアップして、音声を録音しています。右側は標準語的な意味です。
大阪弁の「あ」のつく言葉
| あかん そんなんあかん | だめ それは(やっては)いけません |
| あほ あほんだら あいつあほちゃうか | バカ あの人はバカです |
| あんた あんたなぁ | あなた あなた・・・ねぇ |
| あんなぁ | あのねぇ |
| あれへん お金あれへん | ありません お金を持っていません |
| あえへん | (合計・意見などが)合わない |
再生時は、最初に、充分ボリュームを絞ってください。
大阪弁の「い」のつく言葉
| いてるでぇ いてへんでぇ | 居ますよ いませんよ |
| いらち(やなぁ) | 落ち着きのない、せっかちな人ですね |
| いけへん 行けへんか? 行かへんか? | 行きませんか? 行けませんか? |
| いちびり いちびるな ちょける | 調子に乗りやすい人 落ち着きのない動作 |
| いっこもない | 1個もない=全くありません |
| いけず(せんといて) | 意地悪をしないで頂戴 |
大阪弁の「う・え・お」のつく言葉
| (女子が)うちのこと うちのこと | 私のこと 家のこと |
| ええでぇ | 良いですよ・結構ですよ・よろしいよ |
| えげつない(なぁ) えげつなぁ | ひどい、やばい、ものすごい |
| おもろい おもろいかぁ? | 面白いね 面白いですか (=面白くないよ) |
| おおきに | ありがとうございます |
大阪弁の「か・き・く」のつく言葉
| かめへん かまへん | 構いません |
| かんにん | すみません 許してください |
| 帰りしなに いにしなに | 帰る途中に 帰るときに |
| (この服)きっしゅくや(なぁ) | (この服は)窮屈(ですね) |
| (それ)くれ | それ(私に)頂戴 |
大阪弁の「け・こ」のつく言葉
| けったいやなぁ | 変わっていますねぇ 変ですねぇ |
| けーへんか? | 来ませんか? |
| こーたった こーたったんやがな | 買ってあげた 買ってあげたのですよ |
| こちょばい こそばい | くすぐったい |
| ごっつ(うまい!)ごっつい(大きい) | すごく(おいしい) すごく(おおきい) |
大阪弁の「さ・し」のつく言葉
| (これ)さらや (えらい)ふるや | (これは)新品です (大変)古い品物です |
| しゃーない(なぁ) しょーない(し) | 仕方がないなぁ しょうがないし・・・ |
| しょうもない・しょうむない | くだらない・面白くない |
| しんどい しんど | 疲れた |
| しまう しもといて なおしとって | 片付けてどこかに入れる |
| (それ)したる | (それを)してあげる・やってあげる |
| さぶいぼ(が出た)・さむいぼ | 鳥肌が立った |
大阪弁の「す・せ・そ」のつく言葉
| すまんなぁ | すみませんねぇ |
| すっきゃねん | 好きなのです |
| せーへん せんといて | しない しないで! |
| せや そや | そうだ |
| それくれ! | それをちょうだい |
大阪弁の「ち・つ・て・と」のつく言葉
| ちゃう | 違う |
| つこた | 使った |
| でけへん | 出来ない |
| どないやねん | どちらですか・どうですか |
大阪弁の「な・は・ふ・へ」のつく言葉
| なんでやねん | なぜなのですか・どうしてですか |
| なんぼや これなんぼ | いくらですか これはいくらですか? |
| はよせい | 早くしなさい |
| ぶた | 太っている(こと・人) |
| べべ どべ どんべぇ | 最下位 |
大阪弁の「ほ」のつく言葉
| ほんまに ほんま ほんまぁ? | 本当に 絶対本当です 本当ですか? |
| ほる ほかす (それ)ほって! | 捨てる (それを)捨ててください |
| ほな ほんなら | それでは |
| ぼちぼち | そろそろ ゆっくりと もうひとつ (=よくない状態のこと) |
| ぼろかす(に言う) | むちゃくちゃに言い放つ |
大阪弁の「ま・み・む・め・も・わ」のつく言葉
| まけて | もう少し安くしてください |
| みーひん めーへん | 見ない・見ません |
| むっちゃ | 無茶苦茶・たいへん |
| めっちゃ めっちゃブス | たいへん、とても ものすごい不美人 |
| もらう やる | 頂く あげる |
| わかれへん | 分からない |
言葉には苦労しまんなぁ(=言葉には苦労しますねぇ)
近年は大阪弁も、吉本興業の芸人さんたちの東京進出などもあって、かなり認知されるようになってきていますが、TVで話される大阪弁は、アレンジされていて、違和感もあります。
→楽天の大阪弁の関係グッズで驚いたのですが、これが「大阪」と思われると…
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TVが大阪弁の変化を加速させている流れは避けられません。 時代劇の言葉を聞いても、当時のものでない、アレンジされたものですから、大阪弁も次第に「特殊な大阪弁」になっていくのは仕方がないのかもしれません。
大阪で生まれ育った人が標準語を話すことは結構難しく、その反対に、標準語圏の人が大阪弁を話しても違和感が残ります。それはしかたのないことです。
近年は、方言を残そうという機運もでてきていますが、大阪弁もそうですが、「これが大阪弁だ!」というように、「方言」を安易に標準化することも考えものでしょう。
「方言」は一種の文化ですが、大切に存続できるものでもないので、ともかく、2030年頃に、同様の上の内容を再録音して、私自身の言葉の変化も比較してみようと計画しています。
私自身の言葉の変化も楽しみです。
私自身の話していることばは、私の息子からも「それ何」と聞き返されるものもでてきています。だから、ここに録音した言葉も、2030年頃には、きっと、変化していたり、死語になっているかもしれません。
お読みいただき、ありがとうございました。
(来歴)2019.1月記事作成 2022.4月HP移転 R8.9月確認

