「銅(Cu)」や銅合金は、人類が古くから用いています。
歴史で習った銅鏡や銅鐸は、鋳造しやすいように「合金」にして、それで融点を下げて鋳造する技術が使われていました。
銀についで電気抵抗が低い金属で、電線などの電気・電子機器には欠かせないものです。
また、高温超伝導体なども、銅の酸化物から出来ています。
人体にとっても、有害ではありません。 鉄や亜鉛などの次に多く体内に取り込まれていて、人間の臓器には無くてはならないものです。
ここでは話の種になりそうな雑学を紹介します。
【日本での銅の採掘】
銅が採掘される「足尾(栃木県日光市)」「別子(愛媛県新居浜市)」などの名前をご存知と思います。
銅鉱山には公害・鉱毒の問題もたくさんありました。
銅(Cu)自体は、人間への害はありません。
しかし、産出する鉱石の中の有害物質や有毒ガスによって、いろいろな公害が起こってきました。
サビの「緑青」は、過去には有毒とされましたが、現在では無毒とされています。
採掘では「自然銅」として産出されます。
日本の鉱山は、海外のように露天掘りではなく、坑道奥深くから採掘するために採算性が悪く、採掘としての操業は行われていません。

【世界の採掘量】
銅鉱石採掘量の多い国は、チリ、ペルー、中国、米国と続きます。
年に約2千万トン(2017年)が採掘され、年々増加傾向です。 チリは27%、ペルーは12%の採掘量です。
古代から「自然銅」などの銅色をした金属状態で採れるものを溶融して銅塊をつくっていました。現在は、銅を含む鉱石から精錬して作ります。
鉱石に含まれる銅は1%以下程度です。 それを選鉱、分離、溶解抽出、溶融、還元などの方法で純度を高めた「粗銅」を作り、さらに電解精錬によって「電気銅」が精錬されます。
【電気銅・タフピッチ銅・リン脱酸銅・無酸素銅】
電解精錬してできた電気銅には電解液などが残留するので、さらに、その電気銅を溶解して、銅塊にしたものが「電気銅」です。
電気銅もそのままでは若干の不純物(0.05%以下)を含むので、酸化雰囲気で加熱して、不純物を除去します。
その時に酸素や水素を取り込んでしまうので、還元剤を用いて脱酸します。
銅鋳型に鋳造する用途などに使う、完全に脱酸しない銅を「タフピッチ銅」といいます。
電線などの高級品以外の展伸材として、装飾品や普通の銅製品の用途で使用されます。
さらに脱酸して、99.9%以上の純度の量を「純銅」と言います。
銅製品としては、電気銅や脱酸した「無酸素銅」でつくられたもののほか、リン脱酸銅 も使われます。
これは、りん(P)が含まれ、酸素量を低減して曲げ性、溶接性などに優れたものです。
電線には「無酸素銅(OFC)」が使用されます
無酸素銅は、高真空中で加熱して酸素を除去します。
JISでは2種類が規定されており、99.96%以上の純度の C1020(1種)と99.99%以上の純度の C1011(2種)があります。
1種のうちのクラス1と呼ばれるものは高級品です。
高純度のほうが水素脆性(水素の影響で脆くなること)が起きにくく、深絞り性に優れています。
銅は高価なイメージ
電気銅の価格は1178円/kg程度(2023年1月平均値)で、鉄鋼の熱延鋼板が123円/kg程度ですので、「銅は鋼の約10倍程度の価格」というイメージになります。
これらの価格は相場なので変動し、購入の方法によっても変わります。
2020年1月と2023年1月の例をピックアップすると、鉄鋼厚板 88円→146円 銅706円→1229円 アルミニウム 420円→390円 ・・・と、アルミニウム以外は、多くのものが急騰して値上がりしています。
これまでは、電気の電導性の高さから「電線は銅でつくられる」と言うイメージでした。
しかし、現在では、高圧電線などで太径のものは、強くて軽い「鋼心アルミ撚り線」という鋼とアルミの複合電線に変わってきています。
オーディオ用や低圧用などでは伝導度の高い高品質な銅線は重宝されています。
貴金属と銅
電気銅を作る際に、電解精錬すると、陰極に純度の高い電気銅が析出します。
陽極の粗銅の下部に「陽極泥(ようきょくでい)」としてイオン化傾向の低い金属が沈殿し、その陽極泥から金、銀などの貴金属が回収されています。
銅塊1トンから金が30g、銀が1kg程度回収できるといいます。
近年は金の価格高騰によって、価格換算するとすごい価値の貴金属が回収されています。
すごいことをイメージするために適当な金額ですが当てはめてみましょう。
1gあたり銅1.5円、金10000円、銀150円と仮定すると、電気銅1トン(1.5円x1000000g=150万円)を作るときに、30万円の金(10000円x30g)と15万円の銀(150円x1000g=15万円)が回収できるというのです。
【銅合金】
銅は非常に古くから使われている金属です。
北イラクで紀元前8800年ごろの自然銅で作られたとみられる「小さな玉」が発見されていますし、紀元前より青銅や真鍮などの合金が用いられていることがわかっています。
日本でも奈良時代以前にも青銅器が用いられていたようで、奈良の大仏の母体も、銅500トンと錫(すず)8トンの合金を使って作られています。
この奈良の大仏(752年開眼)は、分割して鋳造したために、成分は各部で違っているのですが、約90%が銅で残りが錫と鉛の合金のようです。
そして、写真の鎌倉の大仏(1260年ごろ?)は、約70%の銅と約10%の錫、20%の鉛で鋳造されています。
時代の違いで精銅の技術差が出ているということでしょうか。

周期表の原子番号29の銅の周りをみると、よく知られた金属類があります。
ニッケル(Ni)や亜鉛(Zn)などの、銅(Cu)の周りの金属はよく似た性格があります。
そこでこれらの金属の合金にすれば、何か違った性質(加工性、強さ、色の違いなど)が出るということで古くから銅合金にすることに気づいていたようですね。
鋳造のための合金化
鋳造するためには、できるだけ、融点が低いほうが有利です。
それもあって、合金にすれば融点が下がることは昔から知られていたのでしょう。
銅の融点は約1085℃です。
ニッケル(Ni)の融点が1455℃程度で、ニッケルとの合金の白銅などにすると、融点は1220℃程度となります。
真鍮(黄銅)は亜鉛(Zn:融点420℃程度)と銅の合金です。融点は800℃程度になります。
また、古くから使われていた青銅はスズ(Sn:融点は約232℃)などと銅の合金です。その融点は900℃以下です。
つまり、「合金にすることでCu単体よりも融点が下がります」
青銅では、炭などに空気を送ると溶融できるので、大きな大仏が鋳造できたということですね。


青銅(せいどう)
銅(Cu)+スズ(Sn)の合金で、ブロンズ像など彫刻の材料に使われます。
錆びると、上の大仏や鐘のような緑色が出ます。
しかし、もとは黄色い感じで、「砲金」に近い色です。
このさびは「緑青(ろくしょう)」といいます。
かつては教科書にも、緑青は「毒」だと書かれていましたが、現在では厚労省も「緑青は無害」としています。
むしろこの緑青は、不働態のように働き、腐食の進行を防いだり、殺菌性があるとされています。
砲金(ほうきん)
銅(Cu 90%程度)+スズ(Sn10%程度)の合金で、英語名は「ガンメタル」です。
古くは砲身の材料などに使われていました。
耐食性や耐摩耗性に優れるので、メタル軸受けなどの、摩擦に耐える部品として使われています。
リン青銅
銅に錫が3~9%、リン(P)が0.3%程度を加えることで「ばね性」がでます。
そのため、りん青銅は、伝導性の接点(リレーの接点)などの電気機器材料に使われます。
アルミニウム青銅
銅にアルミニウム、鉄、ニッケル、マンガンなどを入れた合金です。
耐食、耐摩耗に優れるうえに、強度があるので、車両や船舶の部品に使われます。
黄金色で延性があるので、金箔の代わりに使われるという用途もあります。
真鍮(しんちゅう)
黄銅(おうどう)・Brass(ブラス)とも呼ばれる、銅と亜鉛(Zn)の合金です。
一般的にはZn35%程度のものが多く、6・4黄銅(ろくよんおうどう:Zn40%)や7・3黄銅(しちさんおうどう:Zn30%)などと呼ばれるものが多く使用されています。
真鍮製品は伸銅品と鋳物でつくられます。
亜鉛の割合が増えると赤みが消えていきます。 また、亜鉛量を多くしていくと、融点が下がり、硬さが上昇するという性質があります。
真鍮は、金管楽器や仏具などでおなじみの合金ですね。
白銅
キュプロニッケルやニッケル白銅とも呼ばれます。
銅、ニッケル、鉄、マンガン、亜鉛などの合金で、銅75%+ニッケル(Ni)25%程度のものは、100円・50円硬貨に使われています。
耐海水性や高温強度があるので、熱交換機用のパイプなどに加工されて使われます。
洋白(ようはく)
銅、ニッケル、亜鉛の合金で、白銅に比べて柔らかく、白っぽい色をしています。
楽器のフルートの多くはこの材料で作られます。
ばね性があるので、導電性の板バネやリレーなどにも多くが使用されます。
赤銅(しゃくどう)
銅に3-5%の金(Au)を加えた合金で、象嵌細工(ぞうがんざいく)などに使われます。
象嵌は木や陶器、その他の金属にはめ込む工芸技法で、飛鳥時代に日本に伝わったようです。
銅の特筆点は電気と熱の通しやすさ
純銅の融点は約1085℃、比重は約9です。 持った感じでは、鉄(鉄鋼)約7.8より、少し重く感じます。
銅製のビヤカップは、手や口元に触れた冷たさが心地よいのは、銅は銀(Ag)に次ぐ「熱と電気の良導体」によります。
また、電気抵抗率が低いので電気をよく通します。

銀、アルミニウム、銅は、熱や電気を通しやすい金属です。銀は貴金属であることから、価格的には、銅の優位さが際立っています。 しかし …
現在では、太い電線はアルミニウムに・・・
古くから、電気導線(電線)は「銅線」でした。
しかし、最近の高圧電線のほとんどが、中心に引張強さの高い鋼にして、その周りがアルミニウム製の編み線で作った、鋼芯アルミ線に変わっています。
アルミ線の導電性は銅の6割程度で、強さは2倍、価格が1/3、1/3の軽さ …
だから、電線が銅からアルミ製に代わっていたのにはうなづけます。
ただ、この比較は純金属のもので、実際には合金化するなどでは、いろいろな特徴が加わります。だから、この数字はイメージ数字と考えてください。
超電導においても研究が進んでいます
物質としての銅の話題として、高温超電導体があります。
超電導は、低温の環境で電気抵抗がなくなる現象です。
その材料系では、銅の酸化物を基本として研究されていて、それを「銅酸化物高温超電導体の研究」と呼ばれます。
超電導の開発目標は、比較的安価な「液体窒素」温度(-196℃:77K)で超電導現象(電気抵抗がなくなる現象)を起こす物質を見つけることです。
超電導現象が1986年に発見されて以来、合金開発が進み、2005年に166Kの物質が発見されています。
しかし、銅合金の高温超電導体の中には、電気抵抗が0にならないことや不確実な物質ができるなどもあって、現状では90K~133Kを超えたあたりでストップしているようです。
人間と銅のかかわり
人間には銅イオンは必須元素です。
体重70kgの人では 80mgの銅 が脳、腎臓、肝臓、血液、胆汁に多く含まれています。
このために、1日1mg程度の銅を摂取する必要があるようです。
銅は、干しエビ、ココア、レバー、カシューナッツ、ホタルイカなどに多く含まれ、動脈硬化や心筋梗塞の予防に効果があるとされます。
体内の銅が欠乏すると、貧血、血管や骨の異常、脳障害を起こします。
逆に過剰になれば、肝硬変や運動障害、知覚神経障害を引き起こすことがあるとされています。
タンパク質の構成元素なので、魚介類を多くとるようにすればよいようです。
銅の殺菌性や消臭効果が確認されています
生体に対する安全性が高いことで、銅や銀(Ag)が制汗剤などに使われています。
制汗剤は、体温近くの効果が大きい銅のほうが適していると言われています。
また、常温付近では銀よりも銅のほうが殺菌性がいいということがわかってきました。
銅には、O-157やウイルスなどや菌などを不活性化したり殺菌する効果もあるようです。
この働きは、「接触面」で殺菌(制菌)効果によるものとされています。
銅による殺菌効果は「イオン化」が関係しているとされます。
体の表面が乾いていても、微量の汗で銅の一部がイオン化して殺菌効果が生まれます。
切花の長持ちには銅はほとんど効果なし
生け花の花瓶に10円玉を入れると花が長持ちするといいます。
これはつくられた伝説です。
大量の10円玉を入れるといいかもしれませんが、それほどの殺菌性はありません。
生花店を営んでいた私は、いろいろと実験で花の延命を試しました。
銅の「長持ち効果」は微々たるもので、毎日水道水の水を変えるほうが効果的でした。
花瓶の雑菌は多すぎて、銅の殺菌効果が追いつきませんでした。
花屋さんで、高価な「銅の花桶」を使っているところがあります。
これはむしろ、銅の持つ除菌効果のイメージで新鮮さや清潔さの効果をアピールしているもので、花屋さんは毎日のように水を交換していますから新鮮さを保持しているのです。
この、10円玉をたくさん入れるよりも、殺菌性のある「花持ち剤」を用いて毎日水を変えるのが効果的だということを覚えておいてください。
(来歴)R5.2月に誤字脱字を含めて見直し。 R5年9月に見直し R8.1月確認。

