私は普段、河内弁混じりの大阪弁を話していて、55年以上を中河内(なかがわち)の東大阪市内に住み、ほとんど、河内弁(かわちべん)に接してきました。
大阪市内では3回転居し、小学3年で大阪市内から東大阪市の前身の河内(かわち)市の学校に転入したのですが、そのときの河内市(かわちし)は、この写真(2013年撮影)と違って、田畑が広がる田舎風景で、何よりも、家の周りの人の会話が、大阪市内と違いすぎて、さっぱり話す内容がわからなかったことを覚えています。
50年以上、大阪弁と河内弁に囲まれて生活をしていると、やはり、河内弁まじりの大阪弁になりましたが、近所付き合いで違和感がなかったので、地域の共通語だったのでしょう。
その後、息子の都合で北摂の豊中市北部に転居したところ、言葉が違います。半分以上の住人は「大阪弁と標準語が混ざった独特な言葉」を話すことにカルチャーショックを受けました。
さて、WEBには文章で書いた大阪弁の記事は多くあります。しかし、文字だけでは、ニュアンスがうまく伝わりませんし、言葉は、時間とともに移ろいます。
だから、今の私の知る範囲の大阪弁と河内弁混じりの「はなし言葉」を音声記録しておいて、10年ほどたってから聞き直すのも面白いのではないかと考えて、すこしはずかしいとおもいながらも、録音を含む記事を書きました。
私の言葉が「標準大阪弁」ではないにしろ、長年にわたって染み付いた、一人の「純大阪人の言葉」であることだけは確かです。10年後がどうなっているのかをみるのも、密かな楽しみです。(録音:2019年1月、mp3形式です。数年後が楽しみです)
PR
最初は、普段の会話を感じていただくために、友達同士の会話をシミュレートしました。何を言っているのかわかりますか?
久しぶりの同窓会で友達と会った時の会話(1例です)
最初に、十分に音量を下げてくださいね。 ▷を押すとスタートします。
【A・Bの友人同士の会話】
A:ひっさしぶり。遅かったやん、何しとったん? お前、どべやで。
B:すまんすまん。おいどにごっついデンボが出来てて、はよ歩かれへんかってん。
A:ほんま? 車でけえへんかったんかいな。 隣、モータープールあんのに。【補足3】
B:そーかいな。飲まんならんし・・・。おかんは、やめとけ言うたんやけど、きてもた。【補足4】
A:なんか、しんどいんか? えらい顔して・・・。【補足5】
B:そやなぁ、しんどないけど、むっちゃ痛い。何や知らんけど。 さぶいぼが出てる。【補足6】
A:前おうた時も、めばちこできた言うてたんと違うかぁ? しゃーないやつやなぁ。【補足7】
B:ボロかすに言いないや。えげつないなぁ。【補足8】
【標準語的な訳】
A:久し振りですね。遅かったようですが、どうかしたのですか? あなたが最後(の到着)ですよ。【補足1】
B:大変すみません。お尻に大きなできものができたので、早く歩くことが出来なかったのですよ・・・。【補足2】
A:本当ですか?(大変でしたね) 車で来なかったのですか。(車のほうが良かったのに・・・) 隣に駐車場がありますし・・・。【補足3】
B:そうでしたか。 (同窓会ですので)飲酒もしますし、・・・。 私の母も(無理をして)行かないほうがいいと言っていたのですが、(無理して)来てしまいました。【補足4】
A:どこか(体の具合でも悪くて)、疲れているのですか? すごい(疲れた)顔に見えるのですが・・・。【補足5】
B:そうですねぇ? 疲れてはいませんが大変痛いのです。なぜかわかりませんが・・・。(注:これは意味のない「口癖」で「え-っと」というようなもの) 鳥肌が立ってきました。【補足6】
A:以前に会ったときも、眼に「ものもらい」が出来たと言っていたようですが・・・。 (いつもなにか問題がある)どうしようもない人ですね。【補足7】
B:(そんなに)無茶苦茶に言わないでください。ひどいですよ。【補足8】
PR
*****
【補足1】疑問形で「~たん?」と言う会話は多いです。 「~ですか?」という感じの言葉です。
「どべ[または「べべ」](最後・最下位)」という言葉は、聞くのが少なくなりました。「けつ(おしり)」という言い方になってきたようですが、これも聞かれなくなってきています。
【補足2】「でんぼ」も独特の単語で、おでき、ものもらいです。 「おいど」は「お尻」の女性語で、男性は「ケツ」です。
「歩かれへん」は「歩くことが出来ない」ということですが、「~かってん(だったのです)」は過去のことを言っている表現です。
【補足3】モータープールは標準語だと思っていましたが、そうでもないようですね。駐車場のことですね。大阪特有のようです。
【補足4】「おかん(母親)」「おとん(父親)」という人も少なくなりました。中高生の男子生徒がよく使います。
【補足5】「しんどい(疲れた)」「えらい(たいへん)」は、現在でも現役の単語です。「えらい」というのは、優秀だ、賢いということでも使われます。
【補足6】何かを断言してすぐ後に「何や知らんけど」というのはよく聞きます。知らない人が聞くと「無責任」で、違和感があるようですが、私はこの言い方はたいへん好きです。
【補足7】大阪でしか聞かないような独特な単語はいくつかあります。
かしわ(鶏肉) ごんぼ(ごぼう) ぼっかぶり(ゴキブリ) やいと(お灸) ややこ(赤ちゃん) れーこー(アイスコーヒー) つれ(友達) ばば(うんこ・うんち) べべ(着物)
おおきに(ありがとう)などの商売人が話す言葉も多く残っていますし、TVでも話されていますので、ややポピュラーですが、商売ことばには、「勉強してや・まけといて(安くする)」「しまつせんと(節約しないと)」「なおしといて(しまっておいて)」などがたくさんあったようですが、多くのこのような独特の単語は、外部から来た人は、意味を取り違えるなどもあって、急激に話されなくなってきたようです。
【補足8】 「ぼろくそ(無茶苦茶)」ということもあります。
「えげつなぁ」という言い方は、話の流れによって、ひどい、やばい、すごい、きつい・・・など、いろいろな意味を持ちます。
濁音が入ると、汚い言葉に聞こえてしまうのですが、それが好まれるところもあり、特に、河内弁では、きつく言う感じが強い言葉が多いようです。
PR
引き続いて、大阪弁の独特の言葉をピックアップして、音声を録音しています。右側は標準語的な意味です。
大阪弁の「あ」のつく言葉
あかん そんなんあかん | だめ それは(やっては)いけません |
あほ あほんだら あいつあほちゃうか | バカ あの人はバカです |
あんた あんたなぁ | あなた あなた・・・ねぇ |
あんなぁ | あのねぇ |
あれへん お金あれへん | ありません お金を持っていません |
あえへん | (合計・意見などが)合わない |
再生時は、最初に、充分ボリュームを絞ってください。
大阪弁の「い」のつく言葉
いてるでぇ いてへんでぇ | 居ますよ いませんよ |
いらち(やなぁ) | 落ち着きのない、せっかちな人ですね |
いけへん 行けへんか? 行かへんか? | 行きませんか? 行けませんか? |
いちびり いちびるな ちょける | 調子に乗りやすい人 落ち着きのない動作 |
いっこもない | 1個もない=全くありません |
いけず(せんといて) | 意地悪をしないで頂戴 |
大阪弁の「う・え・お」のつく言葉
(女子が)うちのこと うちのこと | 私のこと 家のこと |
ええでぇ | 良いですよ・結構ですよ・よろしいよ |
えげつない(なぁ) えげつなぁ | ひどい、やばい、ものすごい |
おもろい おもろいかぁ? | 面白いね 面白いですか (=面白くないよ) |
おおきに | ありがとうございます |
大阪弁の「か・き・く」のつく言葉
かめへん かまへん | 構いません |
かんにん | すみません 許してください |
帰りしなに いにしなに | 帰る途中に 帰るときに |
(この服)きっしゅくや(なぁ) | (この服は)窮屈(ですね) |
(それ)くれ | それ(私に)頂戴 |
大阪弁の「け・こ」のつく言葉
けったいやなぁ | 変わっていますねぇ 変ですねぇ |
けーへんか? | 来ませんか? |
こーたった こーたったんやがな | 買ってあげた 買ってあげたのですよ |
こちょばい こそばい | くすぐったい |
ごっつ(うまい!)ごっつい(大きい) | すごく(おいしい) すごく(おおきい) |
大阪弁の「さ・し」のつく言葉
(これ)さらや (えらい)ふるや | (これは)新品です (大変)古い品物です |
しゃーない(なぁ) しょーない(し) | 仕方がないなぁ しょうがないし・・・ |
しょうもない・しょうむない | くだらない・面白くない |
しんどい しんど | 疲れた |
しまう しもといて なおしとって | 片付けてどこかに入れる |
(それ)したる | (それを)してあげる・やってあげる |
さぶいぼ(が出た)・さむいぼ | 鳥肌が立った |
大阪弁の「す・せ・そ」のつく言葉
すまんなぁ | すみませんねぇ |
すっきゃねん | 好きなのです |
せーへん せんといて | しない しないで! |
せや そや | そうだ |
それくれ! | それをちょうだい |
大阪弁の「ち・つ・て・と」のつく言葉
ちゃう | 違う |
つこた | 使った |
でけへん | 出来ない |
どないやねん | どちらですか・どうですか |
大阪弁の「な・は・ふ・へ」のつく言葉
なんでやねん | なぜなのですか・どうしてですか |
なんぼや これなんぼ | いくらですか これはいくらですか? |
はよせい | 早くしなさい |
ぶた | 太っている(こと・人) |
べべ どべ どんべぇ | 最下位 |
大阪弁の「ほ」のつく言葉
ほんまに ほんま ほんまぁ? | 本当に 絶対本当です 本当ですか? |
ほる ほかす (それ)ほって! | 捨てる (それを)捨ててください |
ほな ほんなら | それでは |
ぼちぼち | そろそろ ゆっくりと もうひとつ (=よくない状態のこと) |
ぼろかす(に言う) | むちゃくちゃに言い放つ |
大阪弁の「ま・み・む・め・も・わ」のつく言葉
まけて | もう少し安くしてください |
みーひん めーへん | 見ない・見ません |
むっちゃ | 無茶苦茶・たいへん |
めっちゃ めっちゃブス | たいへん、とても ものすごい不美人 |
もらう やる | 頂く あげる |
わかれへん | 分からない |
言葉には苦労しまんなぁ(=言葉には苦労しますねぇ)
近年は大阪弁も、褒められているのかケナされているのかわからないようで、特に、吉本興業などの芸能人の東京進出もあって、最近はかなり認知されるようになってきていますが、TVで話される大阪弁は、アレンジされていますので、標準語化された言葉です。
この流れは避けられませんし、時代劇の言葉と同じように、それも大阪弁なのでしょう。
フィリピンに英語の短期留学をしたのですが、フィリピンでは、島々の言葉の統一が大変なので、米語が公用語になっているのですが、これもありだと思いました。
日本人は、英語をカタカナ語にして、それを標準語に組み込むという、馬鹿な文化を作り出していますが、大阪で生まれ育った者が、標準語を話すことは結構難しいようですから、地方の方言を話す人も、標準的な言葉は覚えても、違和感が消えないと思います。
それもあって、私は、大阪弁を含めて、方言を無理に標準語化することは賛成できません。
時代劇も同じですが、地方の言葉は、ときとともに変わるのは仕方がないとしても、大切にしなければいけないと思っています。
変な言葉をTVで発出しないで、字幕をつけるほうがマシと思っています。
そうは言っても、時代の流れを変えることは難しいので、2030年頃に、同様の上の内容を再録音して、私自身の言葉の変化も比較する予定で、その変化も楽しみにしています。
私自身の話していることばも、子供に「それ何」と聞き返されることもでてきているのですから、ここに録音した言葉も、2030年頃には、変化していたり、死語になっているかもしれません。
お読みいただき、ありがとうございました。
(来歴)2019.1月記事作成 2022.4月HP移転 最終R5.2月誤字脱字見直し