私は河内育ちの大阪弁を話しますが、聞いて分かりますか

私は普段、河内弁混じりの大阪弁を話していて、55年以上を中河内(なかがわち)の東大阪市内に住み、その間ずっと、河内弁(かわちべん)に接してきました。

飯盛山から見る北河内地区

大阪市内で生まれ、小学3年で大阪市内から東大阪市の前身の河内(かわち)市の学校に転入したのですが、この写真(2013年撮影)と違って田畑しかない田舎風景で、大阪市内から、直線距離で10km離れるだけでかなり違う言葉になるのに驚きました。

河内弁は「きつい」とか、女の子が話すとゲンメツするなどと言われるのを聞きますが、それは、他の地域の人が言うものであって、昭和30年代当時は地域閉鎖性も強く、地元の言葉でないと生活できない時代でしたから、私の大阪弁も、ゆっくりと河内弁に変わることで土地に馴染めたのでしょう。

ただ、私は旧河内市と枚岡市で暮らしたのですが、少し住む場所が変わると、微妙に語彙やアクセントが違います。

もちろん、近所付き合いでは違和感がなかったので、私の言葉は、その各地域の共通語だったのですが、私が会社を退職後、息子の仕事の都合で北摂の豊中市北部に転居したところが、ここは転入する人が多いためか、全く言葉が違います。

高齢の方は、大阪弁基調で特に違和感がないのですが、半分以上の住人は「標準語のような独特な言葉」を話すことにカルチャーショックを受けました。

幼稚園の保母さんや小学校の先生は、当然のように標準語的な会話をされていますので、このスピードでいくと、10年もすると大阪弁が消えてしまうような勢いです。

このように、大阪弁、河内弁といっても、少し場所が違えば言葉が違うことを経験していますし、何よりも、言葉は時間とともに移ろいます。

このために、今の大阪弁と河内弁混じりの「はなし言葉」を音声記録しておいて、10年ほどたってから聞き直すのも面白いのではないかと考えて、すこしはずかしいとおもいながらも、録音を含む記事を書きました。

私の言葉が「標準大阪弁」ではないにしろ、長年にわたって染み付いた、一人の「純大阪人の言葉」であることだけは確かです。10年後がどうなっているのかをみるのも、密かな楽しみです。(録音:2019年1月、mp3形式です。数年後が楽しみです)

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最初は、普段の会話を感じていただくために、友達同士の会話をシミュレートしました。何を言っているのかわかりますか?

久しぶりの同窓会で友達と会った時の会話(1例です)

最初に、十分に音量を下げてくださいね。 ▷を押すとスタートします。

【A・Bの友人同士の会話】

A:ひっさしぶり。遅かったやん、何しとったん? お前、どべやで。
B:すまんすまん。おいどにごっついデンボが出来てて、はよ歩かれへんかってん。

A:ほんま? 車でけえへんかったんかいな。 隣、モータープールあんのに。【補足3】
B:そーかいな。飲まんならんし・・・。おかんは、やめとけ言うたんやけど、きてもた。【補足4】

A:なんか、しんどいんか? えらい顔して・・・。【補足5】
B:そやなぁ、しんどないけど、むっちゃ痛い。何や知らんけど。 さぶいぼが出てる。【補足6】

A:前おうた時も、めばちこできた言うてたんと違うかぁ? しゃーないやつやなぁ。【補足7】
B:ボロかすに言いないや。えげつないなぁ。【補足8】

【標準語的な訳】

A:久し振りですね。遅かったようですが、どうかしたのですか? あなたが最後(の到着)ですよ。【補足1】
B:大変すみません。お尻に大きな「できもの」ができたので、早く歩くことが出来なかったのですよ・・・。【補足2】

A:本当ですか?(大変でしたね) 車で来なかったのですか。(車のほうが良かったのに・・・) 隣に駐車場がありますし・・・。【補足3】
B:そうでしたか。 (今日は同窓会ですので)飲酒もしますし、・・・。 私の母も(無理をして)行かないほうがいいと言っていたのですが、(無理して)来てしまいました。【補足4】

A:どこか(体の具合でも悪くて)、疲れているのですか? すごい(疲れた)顔に見えるのですが・・・。【補足5】
B:そうですねぇ? 疲れてはいませんが大変痛いのです。なぜかわかりませんが・・・。(注:これは意味のない「口癖」で「え-っと」というようなもの)  鳥肌が立ってきました。【補足6】

A:以前に会ったときも、眼に「ものもらい」が出来たと言っていたようですが・・・。 (いつもなにか問題がある)どうしようもない人ですね。【補足7】
B:(そんなに)無茶苦茶に言わないでください。ひどいですよ。【補足8】

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【補足1】疑問形で「~たん?」と言う会話は多いです。 「~ですか?」という感じの言葉です。

「どべ[または「べべ」](最後・最下位)」という言葉は、聞くのが少なくなりました。「けつ(おしり)」という言い方になってきたようですが、これも聞かれなくなってきています。

【補足2】「でんぼ」も独特の単語で、おでき、ものもらいです。 「おいど」は「お尻」の女性語で、男性は「ケツ」と言います。

「歩かれへん」は「歩くことが出来ない」ということですが、「~かってん(だったのです)」は過去のことを言っている表現です。

【補足3】モータープールは標準語だと思っていましたが、そうでもないようですね。私営の駐車場で、店員さんにキーを渡すと、適当なところに保管する業態でしたが、大阪特有のようですし、この形態の駐車場も少なくなりました。

【補足4】「おかん(母親)」「おとん(父親)」という人も少なくなりました。中高生の男子生徒がよく使います。

【補足5】「しんどい(疲れた)」「えらい(たいへん)」は、現在でも現役の単語で、「えらい」というのは、優秀だ、賢いということでも使われます。

【補足6】何かを断言してすぐ後に「何や知らんけど」というのはよく聞きます。知らない人が聞くと「無責任」で、違和感があるようですが、私はこの言い方はたいへん好きです。

【補足7】大阪でしか聞かないような独特な単語はいくつかあります。
かしわ(鶏肉) ごんぼ(ごぼう) ぼっかぶり(ゴキブリ) やいと(お灸) ややこ(赤ちゃん) れーこー(アイスコーヒー) つれ(友達)  ばば(うんこ・うんち)  べべ(着物)

おおきに(ありがとう)などの商売人が話す言葉も多く残っていますし、TVでも話されていますので、ややポピュラーですが、商売ことばには、「勉強してや・まけといて(安くする)」「しまつせんと(節約しないと)」「なおしといて(しまっておいて)」などとたくさんあったようですが、多くのこのような独特の単語は、外部から来た人は、意味を取り違えるなどもあって、急激に話されなくなってきたようです。

【補足8】 「ぼろくそ(無茶苦茶)」ということもあります。

「えげつなぁ」という言い方は、話の流れによって、ひどい、やばい、すごい、きつい・・・など、いろいろな意味を持ちます。

濁音が入ると、汚い言葉に聞こえてしまうのですが、それが好まれるところもあり、特に、河内弁では、きつく言う感じが強い言葉が多いようですが、話す本人は、怒っているのではなく、ごく普通の状態です。

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引き続いて、大阪弁の独特の言葉をピックアップして、音声を録音しています。右側は標準語的な意味です。

大阪弁の「あ」のつく言葉

 あかん そんなんあかん だめ
それは(やっては)いけません
 あほ  あほんだら  あいつあほちゃうか バカ    あの人はバカです
 あんた  あんたなぁ あなた  あなた・・・ねぇ
 あんなぁ あのねぇ
 あれへん   お金あれへん ありません
お金を持っていません
 あえへん (合計・意見などが)合わない

再生時は、最初に、充分ボリュームを絞ってください。

大阪弁の「い」のつく言葉

 いてるでぇ  いてへんでぇ  居ますよ   いませんよ
 いらち(やなぁ)  落ち着きのない、せっかちな人ですね
 いけへん 行けへんか? 行かへんか?  行きませんか? 行けませんか?
 いちびり いちびるな ちょける  調子に乗りやすい人 落ち着きのない動作
 いっこもない  1個もない=全くありません
 いけず(せんといて)  意地悪をしないで頂戴

大阪弁の「う・え・お」のつく言葉

(女子が)うちのこと  うちのこと  私のこと  家のこと
 ええでぇ  良いですよ・結構ですよ・よろしいよ
 えげつない(なぁ) えげつなぁ  ひどい、やばい、ものすごい
 おもろい  おもろいかぁ?  面白いね 面白いですか
(=面白くないよ)
 おおきに  ありがとうございます

大阪弁の「か・き・く」のつく言葉

 かめへん  かまへん  構いません
 かんにん  すみません 許してください
 帰りしなに いにしなに  帰る途中に 帰るときに
 (この服)きっしゅくや(なぁ)  (この服は)窮屈(ですね)
 (それ)くれ  それ(私に)頂戴

大阪弁の「け・こ」のつく言葉

 けったいやなぁ  変わっていますねぇ 変ですねぇ
 けーへんか?  来ませんか?
 こーたった こーたったんやがな  買ってあげた  買ってあげたのですよ
 こちょばい こそばい  くすぐったい
 ごっつ(うまい!)ごっつい(大きい)  すごく(おいしい) すごく(おおきい)

大阪弁の「さ・し」のつく言葉

 (これ)さらや  (えらい)ふるや  (これは)新品です
(大変)古い品物です
 しゃーない(なぁ) しょーない(し)  仕方がないなぁ しょうがないし・・・
 しょうもない・しょうむない  くだらない・面白くない
 しんどい しんど  疲れた
 しまう しもといて なおしとって  片付けてどこかに入れる
 (それ)したる  (それを)してあげる・やってあげる
 さぶいぼ(が出た)・さむいぼ  鳥肌が立った

大阪弁の「す・せ・そ」のつく言葉

 すまんなぁ  すみませんねぇ
 すっきゃねん  好きなのです
 せーへん せんといて  しない しないで!
 せや そや  そうだ
 それくれ!  それをちょうだい

大阪弁の「ち・つ・て・と」のつく言葉

 ちゃう  違う
 つこた  使った
 でけへん  出来ない
 どないやねん  どちらですか・どうですか

大阪弁の「な・は・ふ・へ」のつく言葉

 なんでやねん  なぜなのですか・どうしてですか
 なんぼや  これなんぼ  いくらですか  これはいくらですか?
 はよせい  早くしなさい
 ぶた  太っている(こと・人)
 べべ  どべ  どんべぇ  最下位

大阪弁の「ほ」のつく言葉

 ほんまに  ほんま  ほんまぁ?  本当に  絶対本当です  本当ですか?
 ほる  ほかす  (それ)ほって!  捨てる  (それを)捨ててください
 ほな ほんなら  それでは
 ぼちぼち  そろそろ ゆっくりと もうひとつ
(=よくない状態のこと)
 ぼろかす(に言う)  むちゃくちゃに言い放つ

大阪弁の「ま・み・む・め・も・わ」のつく言葉

 まけて  もう少し安くしてください
 みーひん めーへん  見ない・見ません
 むっちゃ  無茶苦茶・たいへん
 めっちゃ  めっちゃブス  たいへん、とても  ものすごい不美人
 もらう   やる  頂く  あげる
 わかれへん  分からない

 

言葉には苦労しまんなぁ(=言葉には苦労しますねぇ)

近年は大阪弁も、吉本興業の芸能さんの東京進出などもあって、かなり認知されるようになってきていますが、TVで話される大阪弁は、アレンジされているもので、やはり違和感は残ります。

 →楽天に大阪弁に関係あるこんなグッズがありますが、これが「大阪」と思われると…

TVが大阪弁の変化を加速させている流れは避けられません。 時代劇の言葉もアレンジされたものですから、大阪弁も特殊な大阪弁になっていくのは仕方がないのかもしれません。

大阪で生まれ育った人が標準語を話すことは結構難しく、その反対に、標準語圏の人が大阪弁を話しても違和感は消えませんから、変な言葉をTVで発出しないで、字幕をつけるほうがマシと思っていたりもします。

地方の方言を話す人も、標準的な言葉は覚えても、徹底して矯正しない限りは、簡単に違和感は消えないのですから、大阪弁を含めて、「方言」を安易に標準語化することは、文化的にはどうなのでしょうか。

地方の言葉も同じで、時とともに変わるのは仕方がないとしても、「方言」は文化ですから、大切に存続しなければいけないと思うのですが、そうは言っても、時代の流れを変えることは難しいので、2030年頃に、同様の上の内容を再録音して、私自身の言葉の変化も比較してみようと計画しています。 私自身の言葉の変化も楽しみです。

私自身の話していることばも、私の息子からも「それ何」と聞き返されるものもでてきているのですから、ここに録音した言葉も、2030年頃には、きっと、変化していたり、死語になっているかもしれません。

お読みいただき、ありがとうございました。


(来歴)2019.1月記事作成 2022.4月HP移転 最終R6.2月誤字脱字等見直し