初めての電子工作で自己保持回路を組んでみよう 4/4

会社の若い人たちに電子工作に興味を持ってほしいと始めた実習の話で、これが4ページ目(最後)です。(→最初から読む

電子工作実習の最終段階で「ユニバーサル基盤上に自己保持回路を組む」という内容です。

機械に組み込まれる基本的な回路の仕組みについて興味を持ってもらうために、スイッチとリレーを使って簡単で役に立ちそうな身近な内容として「自己保持回路」を取り上げました。

自己保持回路とは

機械などを起動するとき、「入」スイッチを押すと機械が動き、スイッチをはなしてもその「入」の状態が維持され、そして、「切」スイッチを押すと、機械が停止するという動作をさせる回路が「自己保持回路」です。

何気ないことですが、言い換えれば、「入」スイッチを離しても、機械が動いたままで、「切」スイッチを押さないと機械が止まらないということを「自己保持」と言い、スイッチから手を離すと切れてしまったりするのは困りものですし、さらに、ワンタッチで機械を止めることができなければ、危険な時には困ります。

この動作を機械に組み込むことは、設計上で大切なものの一つです。電子工作というよりも、この仕組みは、安全のためには大事なことです。

つまり、この一連の動作を組み込むと、誤動作を防ぎ、緊急停止操作が簡単にできるので、この「自己保持回路」は安全に機械運転をするための基本となります。

この回路は「スイッチ」と「電磁リレー(有接点)」を使いますが、回路図をみてどういう動作なのかを理解することや、回路図に沿ってはんだ付けして組み付けていくことは、初めて経験した人には少し難しかったようなので、手書きの実体図なども用意して仕上げていってもらいました。

一般的にはラダー図(シーケンス図)で書かれている回路図が多いのですが、実体図を書くと、そんなに難しいものではありませんから、実習では、実体図を使って、スイッチやリレーの結線もあわせて知ってもらえるようにしました。

使っている部品類は一定していなかったので、やりにくいところもあったようで、例えば、下の写真では、LED用に抵抗器と定電流ダイオードを使っていますし、スイッチなども、これはリミットスイッチですが、いろいろなものをスイッチを自分で選んで使ってもらいました。

ここではまず、スイッチとその動作、リレーの動作などの説明をします。

最終目的の工作イメージ

スイッチについて

スイッチには、「極と投=回路数と接点数」「接点の接触形式=A・B・C接点」「動作による分類=モーメンタリー・オルタネートなど)」があります。

スイッチ動作

それをすべて理解してもらうのは難しいので、ここでは、A接点、B接点、C接点についての説明にとどめました。

OMRONさんのHPの画像を使わせてもらって、簡単に説明したことを紹介します。

1. A接点の押しボタンスイッチ

メーク接点 NO接点などともいわれます。

 押すとONになるスイッチ

A接点スイッチの動作  A接点スイッチの例

一般的なスイッチで、押すと接点が閉じて回路に電気が流れるなどで用います。

 

2. B接点の押しボタンスイッチ

ブレーク接点 NC接点ともいわれます。

 押すとOFFになるスイッチ 非常停止ボタンなど

B接点スイッチ回路の例 B接点スイッチの例

これはA接点スイッチの逆で、通常の状態では接点が閉じて電気が流れる状態になっていて、スイッチを押すと、接点が離れて電気を遮断します。

色々なタイプがあり、押すのをやめると自然に復帰するものや、押し込んだものを引き出さないと元の状態にならないものなどがあります。

 

3. C接点の押しボタンスイッチ

切り替え接点ともよばれて、どちらかがON、どちらかがOFFになるようになっており、A接点とB接点が両方あると言ってもよいスイッチです。

 これは、A接点とB接点を併せ持ったスイッチです。

C接点スイッチの動作

押したときにはA接点側がONになると同時にB接点側はOFFになるようになっています。

端子が3つありますので、単独のA接点・B接点のスイッチとして使うことも、回路の切り替えなどに使うことも出来ます。

以上は単回路(1回路)のものですが、2回路用や多回路用もあります。スイッチだけでも、非常に興味深いものです。

次にリレーです。

リレー(電磁継電器)について

リレーの電源OFF時 リレーの電源ON時

電磁リレーは、電磁石を利用して、スイッチをオン・オフさせるものです。

先に説明したスイッチと同じように、A接点としてスイッチが入るとつながるものや、B・C接点の他、独立した他回路に利用できる接点を持ったもの(2回路用・多回路用)など、いろいろなタイプがあります。

上図は機械式のA接点のリレーの説明図です。このように、リレー接点を動かす回路(鉄心に電気を流して接手をつなぐ回路:これは直流であること)と、制御したい通電回路(図のピンクの矢印のように電流を流す回路)は通常は独立した別回路になっています。(この点が重要です)

 

リレーを動かすために直流電源が図示されていますが、もしもこれが交流であれば、スイッチの接点が振動(細かくON-OFF)して具合が悪いことになるので、電磁石を作動させる電源は、直流でないといけません

リレー回路と負荷回路は別になっており、それを共用することも出来ますが、リレー用と回路用で電圧差があったり、大電力回路であったり、負荷が交流の回路などにも使えるようになっています。

リレー回路は、小さな電流でスイッチを操作する回路で、負荷回路は、(通常は、大きな電流などで)モーターなどを動かすなどと、全く独立している場合が多いです。

図の右のように、A接点になっておれば、リレーのコイルに通電させると、電磁石に力で接点が引き寄せられて、回路が閉じて電気が流れる状態(機械が動く状態)になります。

リレーのコイルの通電を止めると、ばねの力で接点が離れて回路が開かれて電気の流れが止まる・・・そうすると、左の図のような状態で、回路の電源が遮断されます。

 

自己保持回路でのスイッチとリレーの様子

ここでリレーとスイッチをつかって『自己保持回路』の動作を見ますが、ここでは、電源スイッチを押すとLEDが点灯し、スイッチを押すのをやめても点灯したままで、LEDを消灯させたいときは停止スイッチを押す・・・という回路を考えてみます。

つまり、下図のように、一度リレーのスイッチが入ると、停止スイッチを押して回路全体の通電を遮断するまで、つないだ状態を保持する回路が「自己保持回路」です。

 

自己保持回路の説明

これを作るには、いろいろの方法がありますが、わかりやすい形では以下のような回路を考えるといいでしょう。

自己保持回路例

リレーは12V用の2回路2接点リレーを使いました。この図は、

1)作動用の電源スイッチ(A接点)をONにすると回路に電気が流れると同時に、リレーに電気が流れることでコイルに通電して、リレーの接点が閉じます

この場合は、負荷回路がLEDを点灯する回路ですので、LEDが点灯します。

2)電源スイッチ(A接点)を押すのをやめても、リレーのコイルには電気が流れているので、リレーの接点は引かれていて閉じたままなので、回路への電気は流れ続ける状態が保持されます。→LEDはついたままです。(機械であれば動いたままになっています)

リレーがあることで、スイッチを入れたままの状態に保持されています。

3)LEDを消す場合は、停止スイッチ(B接点)を押すと、スイッチが解放されて、回路は遮断されてリレーへの給電も止まるので、リレーの接点が離れて、元の状態に復帰します。

これでLEDは消えます(機械であれば止まります)

イメージできましたか? (これは「自己保持回路」の一つの回路の例です)

 

ここでは、LEDを「負荷」としましたが、当然、それをON-OFFするためのものであるのは言うまでもありません。(負荷の電源とリレーの電源が別にできることも便利な点であることも確認しておいてください)

実際に回路を組んでみると・・・

まず、ブレッドボードに組んでみて、うまく行けばユニバーサル基板を使って、はんだ付けしていきます。

うまく組み上がれば、

①電源スイッチ(A接点)を押すとリレーが「カチッ」と入る音がして、赤いLED(これを回路としました)が光ります。

②その後に電源スイッチから手を放しても赤いLEDは消えません動き続ける状態が維持します。

③そして、停止スイッチ(OFF用:C接点の片側をB接点として使いました)を押すと、赤いLEDは消えます。

これで簡単な自己保持回路ができたことになります。

ブレッドボードで自己保持回路 ユニバーサル基板に組んだ自己保持回路

右の写真のように、パイロットランプをつけてみました。電圧がかかると、緑色のLEDが光るように追加しました。回路図ではどのようになるでしょうか? 自分で考えてください。

さらにここでは、固定抵抗を定電流ダイオードに変えて使うなどもやってみました。抵抗器に比べるとダイオードは割高です。

さて、時間も限られていたので、実習者は上の写真の両方を組み付けるのにかなり苦戦しており、動作の仕組みも分からない感じでしたが、それは仕方がないでしょう。

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以上が会社の若い人に電子工作というものに興味を持ってもらいたいと考えて①ホームセンターで工具類の購入経験 ②日本橋のパーツ屋さんでの購入体験 ③はんだ付けの実習経験 ④キットを利用してのテスターを利用しての測定実習 ⑤LEDの回路を作っての点灯実習 ⑥自己保持回路の組付け実習 と、各1時間で計6時間で実習などをやってきた内容ですが、ほとんどの人は、意外ですが、学校で習ってきたことを忘れていて、オームの法則を用いて抵抗値を算出することや定電流化などの、基本的に知っておくとためになることもたくさん含まれていますが、この6時間程度の時間ではすべての説明の理解は難しかったようですが、何よりも、楽しんでやってもらえたので結果オーライでした。

 

最後に

今回、電子工作などを初めて経験する若い人たちに、はんだ付け、テスターを用いた電流電圧測定、LEDを点灯させるためのオームの法則を利用した計算、リレー回路などの一部を知ってもらうことで、仕事に深みをつけてもらおうというものでした。

中学高校時代に電気電子を学んでいるのですが、時間が立つと忘れてしまうので、これだけの内容でも、全体的には少し難しかったようです。

最終の自己保持回路実習では、回路図だけで組み付けられる人はいなくて、ほとんどの人は配線が交錯して混乱していましたが、結構楽しんでいるようでした。

これが「電子工作」とは言えませんが、この程度の内容でも、はじめての方にはハードルが高かったので、企業研修で若い方などに指導したり、個人の方で電子工作を始めてみようと考えておられる方は、結構時間をかけて取り組む必要があると言えます。

「電子工作の基礎」の書籍を読めばいい・・・と言えないほど、電子工作は奥が深くて簡単なものではありませんし、私の経験では、わかりにくいところをうまく書いてくれている書籍が意外と見つけられません。

実践面でも、キットを購入してはんだ付けするだけでは何の応用も出来ませんから、今回使用した(一部の使用のみですが)市販の「キットで遊ぼう電子回路」などは、テキスト内容も大変うまく書かれているので、是非、利用していただくといいと思います。

下にAmazonや楽天のリンクを張っていますが、私自身、いくつかのキットを購入して制作したのですが、応用力をつけたり、自分から何かをするには適していない感じがするものの、安価ですので、いくつかを組んでみるのも面白いでしょう。

興味が出てくれば、WEBの秋月電子さんなどを利用して、自分で部品を購入できるようになってきます。そうすればきっと、電子工作は安くて楽しめる趣味になると思うのですが、こればかりは、個人のことですのでなんとも言えません。

以上、会社の中でも、若くて頭の柔らかい人がこの実習に参加してくれたのですが、それでも、かなり難しかったのですから、素人の従業員が機械の内部の配線を探ったり、修理したり改造するようになることは難しいのですが、でも、日本全体はすでに「ものづくり」から後退をし始めていますし、私がこの企画を考えたのも、「自分の会社だけでもどうにかしないと・・・」という今後の懸念があったからですが、「任天堂スイッチ」の裏にはMade in Japan ではなくて、Made in Chinaと書いてあります。・・・。これからはさらに難しい時代になります。

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長文をお読みいただき、ありがとうございました。(→はじめから読んでみる