ここでは、会社の若い人に初めて電子工作をやってもらった様子や内容を例に、電子工作のアプローチを紹介しています。これは3ページ目です。(→はじめから読んでみる)
このページでは、LEDを点灯させる過程で、初めて電子工作をする場合に必要な知識などを実習していった内容です。これから電子工作を始めようとする方も、「こんなかんたんなこと・・・」と思わないで、できれば実際に回路を組んでみて、ここにある内容を確認いただくといいでしょう。
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LEDを点灯させてみましょう
LEDという言葉と、それが何なのかは、ほとんどの人が知っているのですが、点灯のさせ方は、その知識を学習しないとわからないでしょう。
ここでは、実習時に説明した内容を書いていますが、実際に回路を組んで、確認しながら進んで頂くといいでしょう。まだやったことのない方は、これらをやっていただくと、LEDも意外と奥が深いことに驚かれると思います。
これは「砲弾型」とよばれるLEDです。今では、高輝度のLEDが広くでまわっているので、少し古い感じですが、基本のLEDは今でもこのタイプがよく使われて言うますし、そんなに明るくなくてもいい用途も多いので、ここではこれを用います。
足の長さが長いほう(+ アノード)から短い方(- カソード)に電気が流れて発光します。上右が基本の回路ですネ。
長い方の足に電池のプラス側をつなぎます。実習では単3電池4本を直列にして、キットでは付属の220Ωの抵抗を使うようになっています。(キットでは、ブレッドボードを使いますので、はんだ付けなどはしません)
キットには砲弾型のものが10個付属しています。これを使って回路を作って、点灯してみましょう。
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[ここで質問]下図のように、このLEDの一つに1.5Vの乾電池を直接つなぐとどうなるのでしょう?
単3電池1本または2本を直列につなぐと・・・
この図は、正しい接続の仕方ではありません。 これは危険だ・・・という人もいますが、この実験は一度やってみてください。
結果は ・・・・ 単3乾電池1本をつなぐだけでは、何も起こらないはずです。
しかし、新品の乾電池は1.65V程度の電圧があるので、よく見ると、LEDの一部色のものは、光っています。 これは、乾電池1個(1.5V)では、発光させるための電圧が低すぎるために点灯しない。・・・というのが答えです。(正解しましたか?)
そして、単3電池2つを直列にした状態(3V)でLEDをつなぐと、どうなるのでしょう?(これは実験しないほうが無難です。なぜならLEDがオシャカになります)
普通のLEDは2V用なので、直接に3V以上を加えると、ぴかっと光って一瞬でLEDがOUTになります。
この実験は、普通はやってはいけないのですが、私の生徒さんのほとんどは、取説(テキスト)を読まないで、このような「乾電池の直結」をして、そして、LEDを壊しています。
しかし、そんなに危険ではありませんので、最初にこの強い光を発してLEDが一瞬で使えなくなることを体験しておくのはムダではないと思うので、LEDはもったいないのですが、その光り方とLEDが焼き切れるところを経験してみるのも悪くないでしょう。
そうすれば、(後で説明しますが)LEDには定電流化が必要なことや、オームの法則を使って計算できることなどを理解しやすくなります。
電池2個では、電圧が高いためではなく、LEDに流れる電流が大きすぎるので、LEDが内部の発熱で瞬時にきれてしまったのですが、そのためには、LEDの規格値以下に電流値を下げることが必要です。
そうなると、上図の電流制限抵抗や直列の場合の抵抗とLEDに流れる電圧をテスターで確かめる・・・ということへの理解が進むでしょう。
砲弾型LEDに限らず、3Vで点灯させる高輝度LEDを100個ぐらいをまとめて購入すると、単価は10円程度以下と安価ですので、まとめ買いしておくのもいいでしょう。LEDで色々遊んでみたい方は、結構使いみちがあリます。Amazonのリンクを張っておきます。
→Amazonの安価なLEDセットを購入しておくと、いろいろなことで遊べます。
「キットで遊ぼう電子回路」キットでは、乾電池4本で6Vの電源を使いますが、「LEDを点灯させる」というと、すぐに6VをLEDに直結してLEDを焼き切る行動には驚きましたが、これはなぜいけないのか…ということを、上手く順序を追って教えていくということのほうが非常に難しいので、大きな費用や大した危険がないなら、「一瞬でLEDが破損する状態」を体験してもらってから理屈を説明するほうが覚えてもらいやすいでしょう。
LEDはダイオードの一種
LED一つをとっても、最低限知っておかないといけないことがいろいろあります。手を動かしてもらいながら、実習では、一通りの説明をしたのですが、以下を、おさらいのつもりで確認してください。
①LEDは「発光ダイオードLight Emitting Diode」のことで、半導体の素子で、いろいろな形状や仕様のものがあリます。
②諸元については個々に違いますが、使用する写真のLEDは、Basic 5mm(基本的な5mm砲弾型)と呼ばれるもので、ここでは一般的な「2V 10mA」という数字が基本になっています。(2V15mAも同じLEDの種類ですが、3V15mAは別の種類のLEDです)
普通のLEDは、2Vの電圧で10mAの電流を流して使うのが標準的な使い方のLEDです。(特殊なものは、ともかく仕様や諸元を確認して、それに合わせた電圧や電流を加えます)
今回のように、6Vの乾電池の電圧で使用する場合は、抵抗(抵抗器)で4V分の電圧を下げて、LEDに2Vが加わるようにして使います。
この抵抗値の計算は簡単ですので、後で説明します。
③白色(青色)LEDは標準型とは少し違います
白色LEDなどは高輝度LEDとも呼ばれ、多くは3V(あるいは3V 以上)のものが多いのですが、回路設計する場合は、LEDの仕様(電圧と電流値)を確認しておく必要があります。
④足が2本出ていて、アノード(+:長いほう)→ カソード(-:短いほう)に電気が流れます。逆の電圧をかけても光りません。テスターの抵抗値では値が表示しない場合が多いのですが、最も低抵抗レンジ(例えばMax200Ωレンジ)を使うと、極性が合うと、薄っすらと点灯するのが見えます。一度試してみてください。
⑤LEDは熱に弱い・・・ということを意識しておきましょう。 2V10mAのLEDでは、電圧を高くするとたくさんの電流が流れて、発熱して切れてしまいます。電流の制限をしないで2.5V程度の電圧をかけると、一瞬で焼け切れます。
2Vを加えても、そしてプラスマイナスを入れ替えても、うまく光らない場合は3V仕様のLEDという見方もできますが、それは簡易的な方法で、基本的には、LEDの仕様・諸元を確認します。
また、やってみるといいのですが、10mA用に2倍の20mAの電流を流してもそんなに明るく光りません。明るくしたい場合は、高輝度LEDを使用します。
また、周囲温度が50℃以上になってくると切れやすくなります。LEDは周囲温度に敏感ですし、一度切れてしまうと、もとには戻りません。廃棄するしかありません。
このために、電流を制限する「抵抗器」を回路中に入れてやる必要だ・・・という話につながります。
明るくしたい場合には、少しだけ電圧を上げるか、抵抗値を下げて電流を増やす・・・などの方法があるのですが、購入したキットには適当な抵抗器が無かったので、別に購入した10mAと15mAの「定電流ダイオード」でその明るさの違いを体験してもらいました。(結果はもちろん、極端な明るさの差はありません)
さらに、「LEDは熱に弱い」ことを気にしないといけないことや、家庭用のLED照明なども熱がこもらないようにしないと寿命が極端に短くなってしまうことなども知っておくといいでしょう。
もちろん、熱に弱いので、基板などに直接はんだ付けをする場合にも充分に注意が必要です。
⑥使用する電源は基本的には直流を使用しますが、LEDは「ダイオード」ですので、交流であっても、LED1個であれば半波整流するのと同様ですから、交流でも、電圧と電流値が適当であれば、問題なく点灯します。(しかし、実習時には変圧器や部品がなかったので、実験しませんでした)
購入した12VのDCアダプター(16V近くの出力電圧です)
回路を考えるときのポイントとしては、①乾電池1つ(1.5V)では光らない ②電流を制限しないといけない ③点灯させるには、正しい方向につなぐ・・・などに気をつけます。
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話はそれますが、乾電池1本だけで点灯するLED電灯があります。これは、内部で乾電池1本で3Vを作っているのですが、どのようにしているのか知りたくないですか? また、痴漢撃退用のスタンガンは、乾電池から超高圧を作り出していますが、これはどうして作られているのでしょう?
ここでは答えは示しませんが、いくつかの方法が思い浮かびますか? 例えば、インバータ回路を使う、コイルを使う、三端子レギュレータのブースト回路を使う・・・など、正解でなかっても、ふと思いついたことをやってみたり考えてみることも大切です。
これらの答えが気になる方は、「直流 昇圧」などでググってみると、いろいろな方法が紹介されています。ここでは、高圧は危険なので深入りしません。
2V・10mAの砲弾型LED
LEDについては、結構、奥が深いので、いろいろな楽しみ方があります。実習では十分できませんでしたが、以下を読んで、興味があれば、やっていただくと面白いでしょう。
この2Vは「順方向降下電圧forward drop」のことで、「LEDを1つ使うと2Vの電圧降下をします・・・」という仕様ですから、LED5個を直列につなぐと2x5=10V以上の電圧をかけないと光らないということになります。(実際にやってみると、LEDの特性のばらつきで均等に光らない場合もありますが・・・)
12VのACアダプターを使用すると、12÷2=6 なので、6つぐらいまでであれば、直列にして全部を同時に光らせることができますね。(さらに電流値に注意が必要だということも頭に入れておいてください)
そして10mAについてですが、5~15mA程度の電流が流れると光ります・・・きっちりでなくてもいいということで、仕様書には推奨電流(Suggested using current):15-18mA や、許容電流(Max current):20mA などが表示されています。その電流が流れるように電圧や電流を調整してLEDを光らせます。
充分な発光には推奨電流の15mA程度を流せば充分で、20mA以上は流してはいけないということですが、明るくしたいと大きな電流を流すと、寿命を縮めるだけです。
推奨電流を超えても、実際には、非常に明るくはなりませんので、もしも、もっと明るくしたい場合は、このLEDでは無理で、高輝度タイプなどの別の種類のLEDをさがす必要があります。
LEDへの電流を制限するには抵抗旗を使うのが便利
LEDを点灯させるには、10mA(20mA以下)の電流が流れるように、電流を制限するために「抵抗」を直列に入れたり、電流制限用のダイオードを直列に入れます。
LEDと抵抗器を直列にすることで、LEDと抵抗器に同じ電流が流れて、それぞれで電圧が低下します。LEDの電圧低下は(仕様から)2Vで、6Vの電源であれば、4Vを下げるように抵抗値を計算して決めます。(以下に説明しています)
この「直列」に入れて電流を制限するというのは大事なことなので、理解してもらえるように、じっくり説明したかったのですが、やはり少しでも計算が入ると、みんな敬遠します。
さらに、オームの法則とキルヒホッフの法則などは中学・高校でならったはずですが、みんな忘れていますし、ともかく、計算するのはみんなが嫌いなようなので、ここでは、抵抗を直列にすると電流が制限されてLEDが破損しない・・・ということだけでもおぼえてもらうことだけにしました。
電流制限抵抗値の計算
実習ではやらずに、説明だけはしたのですが、みんなは上の空でした。 しかし、この計算や考え方は、LEDの電子工作をするには必要なものです。
抵抗器もLEDも、回路の中では電圧降下がおきます。
LED、抵抗器を電池に直列にすると、両方に同じ電流が回路に流れるので、LED1個を点灯させる場合の推奨電流(ここでは15mA=0.015A)を流そうとすると、抵抗値でオームの法則を使って計算することが出来ます。
オームの法則は、電圧(E)=電流(I)x抵抗(R) でしたから
LED1個を点灯させる場合を考えて1.5Vx4=6Vの直流電源につなぐとすると、抵抗によって6-2=4V を低下させてやればいいので、
R=E/I=4/0.015≒267Ω の抵抗器を使えばいいのですが、抵抗器は決まった数字しか販売されていないので、このキットに付属のテキストや付いている部品から、220Ωを使うようになっています。
キットにはいろんな抵抗器は入っていませんし、限られた抵抗値で、各部の電流や電圧を実際に測定するのが課題になっているのですが、ちょっと寄り道をして、オームの法則で計算をしてみます。
乾電池は1.5V以上の電圧があるのが普通なので、仮にすべてが1.6Vとすると、1.6Vx4=6.4V、また、220Ωの抵抗値に流れる電流は、LEDの電圧降下を2.0Vとすると、 I=E/R から I=(6.4-2.0)/220≒0.020 で、20mAの電流が抵抗器とLEDに流れることになることになります。
このような計算は、面倒臭がらずにやると、いろいろな状態のLEDの点灯が計算できます。
例えば、LEDを3個直列に点灯する場合は、LED1つで2Vの電圧降下があるので、6V以上の電圧が必要だとわかりますから、6.4Vで15mA流したい場合は、 R=E/I=(6.4-6)/0.015=40Ωを使えばいいですし、6.4VでLED3つを並列にする場合は3つのLEDにそれぞれ15mAの電流が流れると、3つで45mAなので、R=E/I=6.4/0.045≒142Ω と計算できるので、その抵抗器に近いものをつければいいことになります。
このように、テキストとは違ったことをすると時間がかかりますが、応用力はつきます。
とりあえず、みんなに実習してもらった時には、このような話をして、回路は「計算で求める」ということをイメージしてもらう程度で時間切れになりました。
オームの法則を1から説明して理解してもらうようになるには、1時間程度では無理のようです。
販売されている抵抗の値はとびとび
実際に販売されている固定抵抗器の値は数学的な数列を用いることに決められていて、実際に使う場合は、そのうちで近い値のものを用います。
計算した抵抗値の上を取るか下を取るかですが、近いものがなければ、電流が流れすぎないように大きめのものを採用すればよく、気になるようであれば、その値で計算すれば確認できるのですが、LEDの場合では、ある程度いい加減な抵抗値であっても、そんなに気にすることはありません。
LEDをたくさん点灯させる
実習では時間が取れないので、これについても実習しなかったのですが、LEDの電子工作では、LEDをたくさんつなげて点灯させることも楽しいことです。
LEDのつなぎ方は、直列にするか並列にするかですが、下の図はWEBにあったものを借りていますが、左は直並列、右はLED1つずつに電流制限抵抗をつけている図です。 これらについて考えてみます。
左図では、このスイッチを入れると、全部(10こ)のLEDが点灯しますし、右は並列で4つのLEDをそれぞれの抵抗を介して光らせています。
LEDを数個を直列にすると、その1組に対して抵抗は1つでいいのは長所ですが、直列にしたLEDの1つでも破損すると、全部が点灯しなくなります。また、少しの特性の差があると、直列の場合は均一な明るさにならないこともでてきます。
そして、これらに合う電圧の電源が必要になります。
例えば、(少し恐怖ですが)交流100V(最大電圧は約144V)で電圧降下が2VのLEDであれば、72個直列にすれば、LEDで整流してくれて点灯するはずです。もしも異常が生じても、1つのLEDが切れれば回路に電気が流れませんので危険ではありませんが、やはり、100Vを扱うのは危険なので、普通には、このような方法は取らないで、電圧をそんなにあげないで、直並列を適当に使って回路を考えればいいでしょう。
直列の場合の明るさについては、LED1つ一つが同じ仕様のものであれば、同じ明るさになりますが、順方向降下電圧が異なったメーカーや種類の違ったLEDを直列に使うと、明るさにむらがでます。
これらの様子は、やってみないとなんとも言えませんので、是非自分で一度試してみてください。
LEDはいろいろな種類があるし、いろいろな場面で使用できます。それもあって、LEDを使う面白いキットがたくさんあります。 楽天のページなどを見ているだけで、面白いのですが、キットではなくて、少しの部品を購入するだけで、結構遊べる「LED」です。 たとえば、200球で1000円程度の何色かのLEDセットが販売されていますので、LEDの電子工作を楽しんでみてください。
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次のページで最終です。 基本の自己保持回路を考えながら作って見ることに挑戦してもらいました。実習では、部品を小さなユニバーサル基盤にはんだ付けして取り付けて動作をさせてみることを最終目的としました。
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(来歴)R5.2月に誤字脱字を含めて見直し。 最終R6年6月に確認