「マンガン」と聞くと、マンガン電池、マンガン団塊 という言葉が頭に浮かぶ人が多いと思いますし、「二酸化マンガン」という言葉をなんとなく覚えている方も多いでしょう。
このマンガンはアルミニウム(約8%)、鉄(約6%)などとともに広く分布する金属元素(約3%)で、生物には重要な必須元素です。 製品としては脱酸素剤や肥料の原料にもなっています。
人間は必要な意識しなくても通常の食べ物から必要量を摂取しています。
何よりも、工業には重要で、特に鉄鋼製造に欠かせないものです。
マンガンは Mn と表記される、原子番号25の元素で、単体では比重7.2程度(鉄鋼は約7.8)の金属元素で、単体では産出せずマンガン鋼などの鉱石などから採取され、南アフリカ共和国、オーストラリア、中国などでの産出量が多く、近年では、マンガン団塊がニュースになることもある有用な金属の一つです。
鉄鋼の強度を高めるマンガン
鉄と炭素の合金を「鋼(はがね)・鉄鋼」と言いますが、鋼は熱処理によって硬さ(強さ)を変化させることができます。
鋼(はがね)を高温に加熱して急冷する操作を「焼入れ」といいますが、これによって硬くて強い鋼に変化し、さらに、焼入れ後の「焼戻し」して鋼の強度を調節することができるのですが、地球上で最も有用な鉄鋼に寄与する元素の一つがマンガンです。
焼入れでは、品物が大きくなってくると、焼入れ時の冷却速度が遅くなってしまって充分に硬化しなくなるのですが、これには「焼入れ性を高める元素」を適量加えて対応できます。
その元素の筆頭が、安価で性能が高い マンガン で、その他には、クロム、モリブデン、ニッケルなどがあります。
「適量」がポイントで、鋼製品では、マンガンの含有量は0.5~1%程度までのものが多く、多すぎると、もろくなったり硬さが出にくくなる欠点があるので、モリブデン、クロム、シリコン、ニッケルなどの元素をくわえて成分を調整することで、様々な特徴を持った高品質の鋼がたくさん製造されています。
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特殊な合金に「ハイマンガン鋳鋼」があります
鋼は炭素と鉄の合金ですが、もっと炭素量を高めると、鋼の性質が失われて、鋳鉄・鋳鋼に分類される合金になります。
これらは、鋼のように熱処理による機械的な性質のコントロールはできませんが、鋳造(高温で溶融して鋳型に流し込んで成形する加工法)によって複雑な形状のものを作ることができます。
含まれる炭素や合金元素の量で「鋳鉄・鋳鋼」という性質の違うものになるのですが、この鋳鋼は鋳鉄よりも強靭で、特定の熱処理をすることで特殊な性質を活かすことができます。
高炭素の鋳鋼に10数%のマンガンを含有する「ハイマンガン鋳鋼」は、適当な熱処理(溶体化処理)をすると、比較的強靭で割れにくく、変形を加えると非常に硬くなるという特殊な性質を持つようになります。
その性質を活かして、ハイマンガン鋳鋼を土木機械など(例えばパワーショベルの先端など)に使うことで、全体的には強靭で、掘削時の土砂との摩擦させると、表層が硬化して非常に硬くなって高い耐摩耗性をもった状態になって長時間使用に耐えることができるようになります。
内部はそのまま強靭な状態なので、掘削時の大きな力が加わっても、欠けたり破壊してしまうことがないという、土木機械には都合の良い製品を作ることができます。
また、ハイマンガン鋼の成分の溶接棒を使って摩耗した先端部を補修することで、その性能を保つこともできます。
もちろん、マンガン以外の合金でもそのような性質が付加できますが、地球上に鉄元素の次いで分布する安価なマンガンの利点を活かした使い方がされています。
乾電池に欠かせないマンガン
小中学校時代に、二酸化マンガンの黒い粉を触媒として、過酸化水素水をかけると酸素ガスを発生させる実験をしたり、理科の時間に乾電池を作った経験がある方も多いと思います。これらはマンガンの化合しやすい特徴を活かしています。
乾電池は「マンガン乾電池」「アルカリ乾電池」が一般的で、このアルカリ電池の正式名称の「アルカリマンガン乾電池」を「アルカリ電池」呼んでいるだけで、どちらにもマンガンが使われています。
左がアルカリ乾電池、右がマンガン乾電池
両方とも外観形状はよく似ており、プラス極に二酸化マンガン、マイナス極が亜鉛が使われていて、起電力は約1.6V程度と同じようですが、電気容量や構造や電解液は全く違うものですから、区別して使う必要があります。
だから、混ぜて使ったり、起電力の違ったものを同時に使うと、発熱して液が漏れるなどで事故の原因になりますから注意しましょう。
ここでは詳しい紹介はしませんが、乾電池は一次電池で使い捨てが基本です。 最近の機器は1.3V程度で使えなくなるものが多くなっています。 もったいないと思って、使い古しを転用したり、(充電器が販売されていますが)充電して使うことはもってのほかで、電子機器を壊すこともあるので、正しい使い方を心がけましょう。
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食物とマンガン
Mnは、地殻中に含まれる量も多いために、卵やナッツ類に多く含まれていて、食物連鎖を介して、人体にも取り込まれており、成人では10-20mg程度が体内に含まれていて、骨や代謝、消化などを助ける働きや、活性酸素対策などにも関係あるとされるものですが、摂取量が多くても少なくても体の機能に影響します。
ただ、通常の食生活をしておれば自然に適量が摂取されているので、サプリメントなどで摂取する必要はないとされています。
もちろん、職業上などで過剰摂取すると中毒を起こします。
マンガン団塊
1980年にイギリスの調査船が海底でマンガン、鉄、クロムなどを多量に含む球体を発見したものに名付けられた名前です。
(海洋開発機構のHPより引用:丸いのがマンガン団塊)
日本のニュースでは、平成22年に南鳥島沖(ハワイ沖の公海)で、潜水船「しんかい」がマンガン団塊(マンガンノジュールという)を発見した … というニュースが飛び込みました。 マンガン以外の元素を含んでいるとされるために、資源の少ない日本にとっての朗報です。
これについては、現在もJOGMEC(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)などで調査がすすめられていますが、2024年12月に中国が南中国海や南鳥島沖でマンガン団塊の開発を進めようとしているニュースも伝わっています。
このニュースのマンガン団塊とは、上の写真のような、直径が10cm程度以下の球形の堆積物で、これは、鉄やマンガンが凝縮されて徐々に成長したもののようで、これからの調査や採掘の期待がされています。
ハワイ沖にかけての深海に分布しているようで、マンガンだけでなく、ニッケル、コバルト、銅などが含まれていることから、今後の開発が待たれていますが、発見場所は公海上ですので、日本以外に多くの国が鉱区取得に動いており、これからの動向も気になるところです。
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(来歴)R5.2月に誤字脱字を含めて見直し。 R6年12月に見直し