高齢者とシニアとシルバーと老人ではどの呼び方がいいですか

若い方から初めて席を譲ってもらって「私も高齢者に見られるようになったのだなぁ・・・」と、少し微妙な気持ちになりましたが、皆さんもそんな経験はありませんか。

統計などから、70歳以上は確実に「高齢者」と思われて見られているようですが、この「高齢者」について、みていきましょう。

何歳から「高齢者」と呼ぶのが適当なのでしょうか?

H25年の内閣府の調査によれば、70歳になると「高齢者」と認識されています。

そして、下のグラフでは、近年は75歳側に寄ってきている、「高齢化傾向」がみられますが、ともかく、70歳では「高齢者」に分類される・・・と考えていいでしょう。

何歳以上を高齢者と思うか

H25年の内閣府の高齢者意識調査結果

高齢者に対する呼び方には、老人、年寄り、シルバー、シニア、ジジィ・ババァ、おじいさん・おばあさん・・・などがあリます。もちろん、どれもがいい感じがしないという人も多いでしょう。

この中の「シニア」という言い方に、少しかっこ良さがある感じもしますが、この「シニア」の言葉が持つ対象年齢なども、定義もないので、よくわかりません。

「老いの工学研究所」の2014年のデータをみると、下の表のように、高齢者についての呼び方を、おおむね、「シニアと呼ぶ」のがいい・・・という数字がでています。

そして、一方では、70代以上になるとシニアと呼ばれることに抵抗がでてくる・・・という傾向もあるようで、70代の3人に1人、80代の2人に1人が「シニア」に違和感があるような調査結果が見られます。

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老人・年寄りに慣れるけれど、じいさんばあさんは・・・いや

老いの工学研究所の調査では、年齢が高くなるにつれて「老人・年寄り」などの、それまで嫌だった言葉になれてくるようですし、しかし、「じいさん・ばあさんと呼ばれるのはイヤ」・・・というのが数字に現れています。

高齢者の呼び方と感じ方

この表は、HPに掲載されている内容を、見やすくするために書き直していますが、合計が100%でないのは、その他の回答があるためです。

数字のない部分に注目すると、面白いことがわかります。

左表では、数字に現れていない全体の1/4の人は、「特にポシティブな良い呼び方はなく、どれも変わらないと思っている」ようです。

また、右表の「ネガティブと感じる言葉」についても同様で、全体で6割の人は、「これらすべての言い方が、特にネガティブと思っていないし、これらはすべて普通の言い方だ・・・」と考えているように読み取れます。

つまり、この左表の数字からは、「適当な言い方がないので、呼ぶとすれば、シニアと呼んでおけばいいのでは?」という感じがうかがえますし、もう一方の右表では、「高齢者」に変わる適当な呼び方はないので、特に他の呼び方にする必要もなく、何も考えずに「高齢者」としておけばいいのではないか・・・というように読むことができます。

(まったくの私感ですが・・・)私はこの数字から、「シニア」は60歳代までを言い、70歳以上では、シニアではなくて、シルバーとか老人と呼んでもらってもいいと思っている人が多い・・・というようにこれらの数字を読みとったのですが、皆さんはどうでしょうか?

外国ではシニアか高齢者 後期高齢者はWHOの呼びかた

国連では60歳以上を「シニア」としています。WHOでは、65歳以上を高齢者として、75歳で前期高齢者と後期高齢者に分けています。

日本では、このWHO分類に沿っている「後期高齢者」という呼び方が、「不評だ」というニュースがありましたね。WHOが言ったということも、これでわかりますね。

そのこともあって、日本老年医学会などでは、これを改める提言をしていて、「65歳以上が高齢者」とする・・・というのは変わりませんが、65~75歳までを「准高齢者」、そして、75歳以上が「高齢者」としており、さらに、90歳以上を「超高齢者」とする・・・というのがその提言です。

つまり、准高齢者(~75歳)→高齢者(~89歳)→超高齢者(90歳以上) がいいのでは・・・としています。

欧米人はストレート表現に慣れているので、「後期高齢者」と言っても抵抗がないのでしょうが、それをそのまま日本に持ってくると、「後期」にマイナーな感じが加わってしまうので、それを、日本老年医学会が言う「超高齢者」とすれば、「超」という言葉に、ちょっと尊敬感があって、そして、かっこよくていい響きの「いい言葉」のように感じませんか?

 

「シニア」という言葉に関して

外国人のニュアンスをみるために、ジーニアス英和・和英辞典で「老人」と調べてみると、old man     old woman     old(er) peaple     senior citizens      the elderly ・・・などがでてきます。

senior(シニア)を和訳したものから意味を抜粋すると、 ①役職などが上位の  ②年長者・年上の人  ③(定年退職した)年配者、高齢者・・・などがあります。

やはりいずれの和訳もストレートすぎて、イメージがついてこない感じです。

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さらに、「シニア」について、WEBで調べてみたのですが、詰まるところは、定義や対象が曖昧のようです。いくつか紹介します。

「シニア」は「ジュニア」に相対する言い方・・・というのがありました。

「ジュニアリーグ ⇔ シニアリーグ」などがそれですが、これはよく聞くものですが、「そうしたらシニアは何歳から?」と問われると、それもまたよくわかりません。

フィギュアスケートでは、シニアは15歳以上で、ジュニアは18歳までとなっています。ここでは、15-18歳で重複していますから、厳密な表現ではないようです。

小学生の対象イベントでは、ジュニアは小学校3年まで、シニアはそれ以上、中学生以上は「アダルト」になる・・・とあります。

野球リーグでは、リトルリーグは13歳までで、それ以上はジュニアリーグになる・・・などがあります。

つまりこれらから言えば、リトル → ジュニア → シニア の年齢順ですが、「高年齢者を分類しようというもの」とは違う感じですから、こうなると、「シニア」という言い方も、簡単には受け入れにくい感じがします。

高齢者は「高齢者」と呼べばいい?

「そこのシニアさん・・・」というのも馴染みません。 また、「そこの高齢者の人」も、少し失礼な感じがします。

結局は、普通に相手の人を呼ぶ場合は、「**さん」と名前で呼ぶか、「そちらのお父さん」「そこのご主人」「奥様」などになってしまうのですが、それを、一般的な高齢者に対する呼びかけにしようとすると、それもまた、やはりスッキリしませんね。

結局、言葉を変えずに、「高齢者」としておけばいい・・・ということで、あえて別の呼び方をしないほうが良さそうだ・・・ということで良いのかもしれません。

シニアのイメージ1 シニアのイメージ2

WEBに見る、年齢判断の数字

もう一度、まとめて「高齢者や年齢判断を示すWEBにあった表現」を拾ってみました。

1)健康意識が高くなる年齢境界は60歳
2)40歳をすぎると、流行に対する感度が低くなる
3)厚生労働省・WHO では65歳以上を高齢者
4)日本老年学会では、65歳から准高齢者、75歳から高齢者、90歳から超高齢者
5)老人クラブの入会可能年齢は60歳から
6)映画館などの入場料50歳以上で割引対象
7)シニアは卒寿(90歳)までが適当

・・・などがありました。40歳が若者との決別のターニングポイントになるという数字でしょうか。

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人は見た目で判断する・・・

また、人を「若いか若くないか」を判断する基準(要素)は・・・

  1. 見た目で、
  2. 入場料や利用料などの割引対象になっている年齢で、
  3. その他 定義や規定で、

・・・のようです。これらから、

40歳を超えると、それ以下の若者と区別され始める(上の2、5,6などから)

法律など社会的には、確実に、65歳から高齢者とされる

・・・ということになります。

シニアのイメージ3 シニアのイメージ4

 

呼び方と年齢について、さらに調べてみました

「シルバー」「高齢者」「老人」などは、単なる分類のための言葉ですから、個々の人に向けて発せられることはないのですが、2013年のビデオリサーチ、1986年、2016年の博報堂のシルバー意識調査で、「シニア・シルバー・高齢者・老人などの言葉から感じられる年齢」をみてみました。

年寄りの呼び方と年齢の関係(単位:歳)

これらを「若い」年齢順で並べると、 シニア → シルバー → 高齢者 → 老人 になります。

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この表では、「お年寄り」という表現が、高齢者と老人との間で揺れ動いている感じがするものの、概ねこの順番です。

そしてここでは、高齢者、年寄り、老人は順位の逆転も見られますから、つまり、この「高齢者、年寄り、老人」の3つは同じ年齢レベルと言ってもよく、 若者 → シニア・シルバー → 高齢者全般 という順とみていいでしょう。

これらの中ではやはり、「シニア」はもっとも若くみられている表現 のようですね。

シニアのイメージ6

「見える年令」にも高齢側にシフト

R&Dの調査で、「シニアと思う年齢は何歳からですか?」という問いに対して、2012年は62.4歳だったのが、2017年では64.2歳になっています。

つまりこの調査でも、(上のH25年の内閣府調査と同様に) 5年間に2歳も「高年齢方向側」に移行しています。

次に、同じ調査では、10から20代の若い年齢層と60歳以上の年齢層に、シニア、シルバーなどから受ける、その対象年齢を聞いているのですが、「シニア」が、この中では「若い感じ」と受け取られているようです。

年齢層別の高齢者に対する感じ方の違い

この表の見方は、20代の人は、平均的なシニアの年齢を60.6歳と見ており、シルバーの対象になるのは68.2歳ということです。

若い人では、シルバーと高齢者の年齢が逆転していますし、60歳以上の人は、高齢者と老人は同じ年齢に見ているのですが、これらの呼び方では、シニアを若く、それ以外は同じように見ている・・・という数字です。

つまり、シルバーも、高齢者・老人も、高年齢者と考えているようです。

 

シニア = 「自分より年寄で、若い感じに見える人」?

そこで、「シニアとは何歳をいうのですか?」という質問を60歳以上の高齢者自身にした場合は、下の表のように、若い層の60-64歳は、「自分以上の年齢をシニア」と考えており(つまり、自分は高齢者と思っていないようで)、年齢層が上がるにつれて「シニアは自分より若い人」という認識に変わっていっていることがわかります。

シニアとは何歳をいいますか

これらの結果を総合すると、若年層(例えば40歳以下)の人は、シルバーも高齢者も老人も、すべてを『自分とは違う年齢世代に分類している』ということのようです。

そして、60歳以上の人でも、最初は、「自分はシニアではなくて、もっと若い」と考えている数字になっていますが、年をとるとともに「自分はシニアだ・・・」と考えるようになり、75歳以上の年令になれば、完全に、「シニアは自分より若い人のことで、自分はシニア年代を超えた・・・」と考えている・・・という調査結果です。

そうういう見方をすると、「後期高齢者」といっても、言い方にケチを付けることもない感じもしますね。

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年齢と死 どんなときに死を感じるか

「若く見られたい」「自分は若いと思う」という人も、歳を重ねると、何かの拍子に「死」という言葉が出て来るようです。

前出の「老いの工学研究所」の調査で、どんな時に死を感じるか・・・という調査があります。

死を感じるきっかけ

このように、年齢に関わらず、人は「自分が今までの自分でなくなったとき」に死を意識するようです。

高齢者といえども、この表の項目に当てはまるものがなければ、普段は死ぬことを意識していないのですから、「普通に生きていて元気であれば、高齢になることで不都合がでてくるものは特にない・・・」ということです。

また、同研究所の別の調査で、(ここには示しませんが)「あなたの自分の親・配偶者の親は、他の高齢者に比べて幸福ですか・幸福でしたか」(30~76歳の男女22名の2016年の調査)という質問では、ほとんどの人が自分の親の幸福度は平均以上に「幸福だ」と見ているのですが、その反面で、親が年々高齢になっていくことを、息子娘たちは「ほとんど気にしていない」と思っている・・・ということが調査によって示されていました。

親は、いつまでも幸せでいる・・・と考えているというのです。

そしてさらに、「自分の父母に、何歳まで生きてほしいか」との調査では、親たちの自分の父母に対する回答は平均72.9歳だったのに対して、息子娘たちが自分の親に生きてほしい平均は 89.4歳 でした。

この結果の受け取り方は難しいのですが、息子娘たちの若い世代は、その親自身が生きるだろうと考えている年齢よりも、15年以上も、親に長生きしてほしいと思っている・・・という結果ですが、この数字は「親はいつまでも元気でいてくれれば、放っておいてもどうにでもなる」という感じにも受け取れます。(全くの私感ですが・・・)

シニアのイメージ5 

以上は、私の読み方で数字を見ていますので、偏った見方になっている場合があるかもしれません。「老いの工学研究所」のHP(https://www.oikohken.or.jp/pages/4655961/menu)には、高齢者に関する興味深い調査がたくさん紹介されていて、数字の見方も解説されていますので、それらを自分なりの捉え方でみていただくと面白いので、ぜひチェックしてみてください。

結局のところは・・・

ここまで、高齢者に対する適当な呼び方など、高齢者について見てきましたが、「公的には65歳以上が高齢者」という以外はすっきりしない状況のようです。

シニア、シルバー、お年寄り、老人・・・などの別の言い方も、適切なものがないようですので、あえて別の言葉を定義づけないで、『高齢者としておくことでいい』と言うことかもしれません。

スナックやクラブのママさんが、「やあ社長さん」「ご主人、久しぶり」「お兄さん元気?」と、呼んでも嫌味でないのは、言い方だけではなく、態度や表情で不快感を与えていないから・・・なのですが、このような職業的な能力は、かなり特殊で、一般人が、高齢者に対して、不快にならない呼びかけをするのは、結構たいへんなことだと言えます。

高齢者に限らず、人はだれでも、極端に若く見られたり、高齢に見られるのは好みません。

だから、それを見極めて呼びかけるのも、たいへん難しいことなので、高齢者に対する呼び方を特定して決めるのはケースバイケースになることも多そうなので、どうも、呼び方を決めてしまうのは、適当でない感じもします。

現時点で高齢者を意識しない若い人でも、状況によっては、すぐに「高齢者」の仲間入りをしますし、その後の長い年月を「年寄り・オジン・・・」などと呼ばれながら生きていくことになるのですから、それまでに「相手に不快感を与えない呼び方」を常に意識して身につけることも処世訓かもしれません。


(来歴)H29年9月記事作成  R3.12月全面見直し R4.2見直し R5.9月に誤字脱字を含めて見直し。最終、R6.1月に確認