チタンでは、日本の2社がスポンジチタン製造で世界的に有名
チタンは、ドイツ語でTitan(チターン)、英語でtitanium(タイタニウム)です。
地球の地殻中に存在する金属は 多い順から、アルミニウム、鉄、マグネシウム、チタン・・・となっています。
現在、日本国内では大阪チタニウムテクノロジーズと東邦チタニウムの2社が、チタン鉱石を輸入してインゴットまでを造る精錬工程を行っています。
そして、日本製鐵や大同特殊鋼、神戸製鋼所などの大手鉄鋼メーカーが、圧延工程を担当しており、チタン製の板、棒、パイプなどを製造していて、それがさらにその他の工場で2次3次の加工されて様々な製品に仕上げられています。
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精錬工程では「スポンジチタン」という、「チタンの柔らかい塊」を作り、それを電気で再溶解してチタンのインゴットが作られます。
驚くことに、このスポンジチタンの生産量では、日本(の2社の生産量)は世界第1位のロシアと並んでおり、主要なスポンジチタンの生産国となっています。
世界のチタン使用量の1/2が航空機関連の産業向けです。
数年前の話題ですが、日本のスポンジチタン生産量は、国内2社で世界のトップですが、ボーイング787の製造出荷が遅れたことで、東邦チタニウムや大阪チタニウムの業績が大きく変動したといわれるニュースがあったくらいに、チタンの航空機需要は飛び抜けて大きいのですが、チタン製品としての輸出割合を見ると、日本はかんばしくありません。
これは、アメリカやEUの関税率が高いことや、日本のメーカーの航空機関連の製造認定の取得があまり進んでいないことが大きな理由で、輸出額に関しては、日本は不利な状況となっています。
圧延などのチタン製品製造工程をみると、日本の大手製鉄所が多くの割合を生産しているのですが、これは、鉄鋼の生産技術や設備を転用して、純チタン製品の生産を行っているためで、それでも、チタンを大量に使用する航空機需要については、日本の総需要の10%程度にとどまっていますので、航空機関連のチタン製品の製造量は、まだまだ少ないと言えます。
このために、日本のチタン関連業界は、海外の影響を受けやすく、大口需要に対して販売力が弱いので、製造、販売量の進展は今後の課題といえる状況です。
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チタンの伸展材の製造では、米国、ロシア、日本などが主要国ですが、近年、中国の伸びが注目されています。この4カ国で世界の全量の8割以上を生産しています。
日本の伸展材の約1/2が輸出されていて、さらにその輸出量の1/2が欧州向け(以上、日本チタン協会2005年統計)です。
これもやはり、航空機産業とチタンは大きく関係しています。
チタン製品といえば・・・時計・めがね?
チタン製品では、時計や眼鏡 をイメージする人が多いと思います。
チタンは腐食しにくく、軽くて強く、いろいろな色に着色できることから、装飾品にはもってこいの材料で、カラフルな色や、純金と見間違えるほどの金色も、表面処理をすることで作り出すことが出来ます。
その他では、美白化粧品や光触媒などで「酸化チタン」という呼び名が聞かれるのですが、この酸化チタンも、化学的にも安定で、人体に対する安全性も高いので、いろいろな用途に使われています。
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最も多い製造品は純チタンです
チタンにおける最多の用途は「純チタン」で、この「純チタン」は、チタンの純度によって1~4種に分類されています。
高純度の1種(Ti99.8%)はチタンの最高級材で、航空機用途の使用が多く、これは、軽量で膨張率がカーボンに近いことなどの特性から、航空機と相性が良いことから、高純度の純チタンが多くが使用されています。
最高級品1種は航空機需要ということですが、成分的な理由よりも、機械的性質の理由で不純物の少ない純チタンが使われていると考えたほうがいいかもしれません。
「チタンは硬い」という言い方をされることが多いのですが、1種は軟鋼と同等か柔らかいのですが、しかし、4種になると、高張力鋼に匹敵するくらいの強度があるものもあります。
(参考)間違って覚えている人も多いのですが、焼入れする鋼の引張強さは1500Mpa以上もあるので、いくらチタンが強度があると言っても、軟鋼に比べた値ですので、覚えておくといいでしょう。
この表で見ると、(比較表ですので、正確な数字ではありませんが)鉄鋼と同等の強度があり、比重が小さく、ジュラルミンよりもじん性が高くて融点も高い・・・という、航空機にとっては、夢のような材料と言えるのかもしれません。
形状記憶合金「ニチノール」
チタン化合物としての、TiAl(アルミナイド系耐熱材)は、ジェットエンジンやターボチャージャーにはなくてはならないものですし、Ni-Ti系の形状記憶合金 (ニチノールという製品名が有名)は、変形を加えたあとで加熱すると、元の形状に復帰するという、異色の特徴がある金属です。
(→こちらの Niの記事を合わせてごらんください)
形状記憶合金は、使用量の割合としては少ないですが、発展性が期待される金属と言えるでしょう。
チタン合金
チタン合金としては、低温強度に優れている「α 型合金」、高い硬さが出る「β 型合金」、熱処理によって強度を変えることができる「α+β 型合金」などの様々な特徴を持つ合金があり、その他、パラジウム、ルテニウム、白金、モリブデン、ニッケルといった元素を添加することで、耐食性を高めた合金も製造されて利用されています。
チタンの毒性など
チタンは人間に対して、金属アレルギーになりにくく、毒性も低いとされています。
生体とも拒絶反応が少ないので、人工関節や人工骨(Ti-6Al-4V 合金)、歯科用インプラントや心臓ペースメーカーの部品(純チタン)などに使われています。
近年、「光触媒」という呼び方で、二酸化チタンの抗菌性や防カビ性の記事を見ることがあります。二酸化チタンは、これからも様々な用途に使用が広がっていくでしょう。
普段、検索知ることも少ない光触媒に関係する商品をWEB見てみると・・・いろいろあって面白いです。イメージが変わると思います。参考に。
光触媒に関係する商品を見てみましょう:楽天
チタンと鉄の特性を比較する
もう一度ここで、主に鉄と比較した性質をまとめますと、
1)軽い 比重4.5 で鉄(7.8)の約6割(ただしアルミの1.7倍)
2)融点が高く高耐食性(=耐熱、耐食性) 融点は1668℃で、鉄は1530℃程度。
3)線膨張率が 鉄の70%程度と低い。
4)冷間加工ができて強い 純チタンは鉄(SS400)と同等ですが合金になると強い
5)金属間化合物で変わった性質に 耐熱材や形状記憶合金
などが知られています。
この他に、鉄鋼と違って非磁性であるのも大きな特徴としてあげられます。
軽くて強くて加工ができ耐食性に優れることで、メガネのフレームや高級食器などに向いていますし、線膨張率が航空機の炭素強化複合材(CFRP)と同程度なので、それと相性が良いことで複合化した加工を行っても温度差による応力が少ないために破壊に対して非常に有利な材料だと言えますね。
様々な着色で様々な用途に・・・
toyokagaku.com から引用
チタンにいろいろな色を付けることができるのも優れた点です。
チタンの板を酸性溶液中で電圧を加えて酸化被膜を表面につけて、その表面の皮膜を成長させると、様々な色に発色します。
全く「黄金」と同じような色を出すことも可能です。
これらの「色」は、外から入った光が、チタンの母材から反射する光と、酸化被膜層から反射する光が干渉して、あたかも発色したように見える色・・・と説明されていますが、真空中で金属にチタン加工物(例えば窒化チタンなど)を蒸着させろことによっても、様々な色に着色することができます。
さらに、これらに印刷や化学処理によって、その一部を変化させるなどで、芸術的な作品(製品)なども作られています。
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(来歴)最終R5年9月に見直し